Xにおいて以下の画像が流れており、「通勤手当に課税するなんて許せない!」との声が散見された。しかし誤解を生む内容が含まれているのでここで解説しておく。
通勤手当への課税の範囲
この内容について「通勤手当に課税するなんて許せない」という意見が散見されたが、現在でも一定額以上の通勤手当は課税対象である。加えて「15万円まで非課税」と説明にあるが厳密には違う。詳細は以下の国税庁HPに譲るとして、基本を簡単に解説すれば
という感じ。マイカー下道で通勤距離が片道2km未満の場合は全額課税対象。ちなみに「自動車や自転車などの交通用具」と記載があるので、自転車通勤でもこの基準は適用される。
実現可能性
マイカー通勤の非課税限度額の上限は 31,600円、公共交通機関・有料道路を使う場合は 150,000円 とそこそこ大きな開きがある。この点について「公共交通機関を使っている人間だけズルい!」という論調を起こし、国民同士で足の引っ張り合いをさせてそのまま誰も幸せにならない増税をする魂胆だろう。
「考え過ぎ」と言われるかも知れないが、モロにこのような流れで賛成する人間も多かったのがインボイス制度である。益税批判をする者が多かった。結果として小さい事業者からはみっちり消費税が取られるようになり、課税売上高1,000万円超の多数の企業は無駄な手間を増やされただけ*1。「あいつらはズルい!」と足の引っ張り合いをしている間に見事に誰も得しない、政府だけが税収増で得をする世紀のクソ制度が導入されてしまった。インボイス制度は今すぐ廃止するべき。
脱線するのはそこそこにして、通勤手当課税については2023年7月にも記事を書いていたので前々から危惧されている話でもある。あり得るとすれば通勤手当の非課税限度額引き下げ、あるいは抜本的見直し、非課税限度額そのものの廃止。実質的な増税だが消費税率を変える訳でもないし、所得税率が変わる訳でもない。官僚的なロジックで言えば「増税ではない」。
「非課税限度額が15万円まではズルい」のか
額面だけ見てこういう事を言う人間が絶対に出てくると予想しているが、15万円まで非課税だからと言って月15万円の通勤手当がもらえる訳ではない。どこの会社が必要以上に通勤手当を出してくれるのか。普通に考えればあり得ない。
税制上でいくらまで非課税なのかと、会社としていくらまで通勤手当を出すのかは別の話。その辺の基準を合わせないといけないという法律は残念ながら無い。非課税限度額を使い切るほどの通勤距離はなかなか居ないし、公共交通機関や有料道路を使用する場合は実費支給になるだろう。たとえば通勤定期6ヶ月分で12万円かかりますという場合、半年に1回12万円が実費支給される。1ヶ月あたり2万円。これが非課税になって何がズルいのか。
それでも制度上の金額だけ見てズルいと言い出す畜生以下の人間っぽい何かが居るから困るのだが、たとえ必要以上の通勤手当を支給し、「15万円分まで非課税ですよね?」と言い張ってもそれは税務署が許さない。後からそれをやった人間が困るだけ。通勤手当の正当性は合理的な距離・経路・移動手段を使っているかが加味されるので誤魔化しようがなく、必要以上に支給するのは難しい。ズルさなどどこにも無い。
たとえば本来、基本給として支給するべきものを通勤手当として支給し、その分を非課税として処理していた場合は明確に脱税と言えるだろう。この国で脱税して許されるのは政治家だけなので税務監査で指摘される。会社ぐるみでやっている、悪質と判断されれば当然追徴を食らうのでは。
私は給与計算もしているので理解するがそんな危ない橋は渡りたくない。労使双方にメリットが無い。
その他
冒頭に貼った中で気になる増税(としてあり得る)の内容としては退職金課税が一番気に食わない。退職金は非課税になる枠が大きいのだが、その枠を狭めて退職金からも税金を取ろうという話。Xでもたびたび話題になっている。
退職金を非課税でたんまり満額もらった世代が将来にわたって現役世代に負担をかけ続けることにほかならず、許せない。後出しでiDeCo改悪などもあって実現する可能性も高く最悪。
余談:防災庁設置
防災庁設置に向けて有識者会議とやらが行われたらしい。キレそう。
(記事題:「防災庁」設置へ議論 有識者会議が初会合 政府)
何をやるにしても一々新しい組織を立ち上げないと何も出来ないのか。年収の壁議論では減税について「財源に裏付けを」などと言う一方で、防災庁はもう設置する方向で話が進められている。防災庁設置に財源の裏付けはあるのか?「足りなきゃ取れば良い」か。
ちょうど先日、埼玉県八潮市で道路陥没事故が発生し、この記事を書いている時点でも陥没に転落したトラックの運転手は救出されていない。余計な役所を新設するほど金に余裕があるなら老朽化するインフラの補修に直接的に費用を出したらどうなのか。それが防災庁でないと出来ないとは言わせない。道は県の管理だと言うなら県に対策費として金を回せ。
結局、自公政権が続く限り税金が無駄にされ、その穴埋めのために増税と社会保険料の引き上げが行われることが既定路線なのだ。官僚の出世のために国民は延々と搾取され、何一つ改善しないまま国が、民族が衰退していく。
百歩譲って防災庁設置しても良いから、先にこども家庭庁を廃止しろ