ヤマネコ目線

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子ども手当の拡充は少子化対策として有効か

 政府は少子化対策の一環として、所得制限の撤廃も含めた子ども手当の拡充を推し進めている。野党各党もこれには概ね賛同しており、一部では「それは私達が以前から提案してきた内容だ」との意見も出ている。しかし、子ども手当の拡充は少子化対策として有効なのか。私はそうは思いませんね(先走り)。あとぶっちゃけもう手遅れだと思うけど

子ども手当をもらえる家庭がどこまで子育てできるか

 まず世帯当たり何人の子どもを作っているかの割合を見れば、1人あるいは2人が圧倒的に上昇を続ける一方で、子どもを3人以上持つ世帯は減少傾向にある。3人世帯はかろうじて横ばいかと言う所でそれ以上は明らかな減少傾向にある。

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 婚姻率も全体として減少傾向にあり、子どもどころかそもそも結婚できる人間が減っている上に、結婚して子どもを作ることが出来る人々も人口増加には寄与していない言うまでもないが夫婦2人から1人の子どもが生まれれば人数比は0.5倍で数としては減る。2人でも理論的には等倍*1。3人以上でなければ人口が増えることは無い。

 結婚・子育てを前提とした支援を受ける人々が、結婚も子育てもしない層をカバーして余りあるほど子育てが出来るならば、10人も20人も子どもを作ると言うのならば、従来の少子化対策をさらに拡充する方向で問題は無いのだろう。、実際はそうでは無いことが既にデータに表れている。一部の人間を支援しても広範な成果など得られる訳がない。

 子ども手当に限らず、このまま結婚して子どもを作ることが前提での少子化対策を続けてもそれでは少子化を止めることは出来ない。そればかりか財源確保のために増税社会保険料の引き上げを繰り返せば、若い世代からますます経済的な余裕は失われて行き、結婚できる人間はますます少なく、出来たとしても作れる子どもが少なく、少子化傾向は加速を続けていく。

「手当を貰えるから子どもを作ろう」とはならない

 若年層はコストに対してかなり厳しい価値観を持っている。自分が支払うコストと、それで得られるものを過剰なまでに天秤にかけている。そうした世代に対して「子どもを作れば1人あたり月2, 3万円あげるよ」、などという子ども騙しのような政策を打ち出しても、全く響くものは無い。

 まず経済力が無いから結婚が出来ないので、結婚して子どもを作ることが前提の支援は魅力的かどうか以前に自分にとって関係が無い。むしろそういった支援をする財源確保のために増税社会保険料の引き上げが繰り返され、ただでさえ無い経済力がさらに低くなりゆく現状、結婚はますます遠のくばかり。その点で手当の拡充といったその場しのぎの政策は憎まれてすらいる。

 「昔はお金が無くても~」などと先カンブリア時代のような感覚でものを言う人がいるが、昔に比べて物価や控除される額が上がる中で給与は上がらず、物価ばかりが上がって実質賃金が下がり、それでも子育てに必要なモノが増える中では「若い世代にお金が無い」ことは少子化傾向において致命的である。

 子育てにかかる費用は確実に昔よりも増しており、焼け石に水程度の支援を打ち出されても、子どもを3人以上育てるために有効な支援とはなり得ない。どのみち若い世代の経済力低下を手当や給付金でカバーすることは不可能であり、そうした無意味な政策のために負担を大きくし続けるならば最初からそのような支援は無い方がマシ。

そもそも論として

 このご時世に当然のように結婚・子育てが出来るような恵まれた層を、さらに手厚く支援することは必要なのだろうか。与野党問わず子ども手当の所得制限撤廃や拡大を訴えているが、今の日本で平気で3人以上子どもを作ることが出来るような恵まれたご家庭にさらなる支援など必要無いのではないか。それは元から恵まれている人間にさらに恵みを与えているだけで、そのために増税社会保険料の引き上げを繰り返すことがより格差を拡大させていく。

 そういった支援は財政面でも負担が大きい上に非効率が過ぎる。日本政府はとにかく金遣いが荒いし、税や社会保険料として徴収されたお金が再分配されるまでに失われる割合が知れたものではない。感覚的には10,000円渡したら還元されるのは2,000円とかそういうレベル。そんなレベルであればそもそも徴収しない方がマシである。とにかく税・社会保険の負担を下げて、手取りが上がりやすいようにしなければ意味がない。額面が2万円上がっても手取りは8,000円上がるだけみたいなのマジでいい加減にしろやカス

本当に必要なもの

 以前から何度も書いているが、この国の少子化対策に必要なのは1にも2にも経済政策。すでに結婚が前提の少子化対策で対応できる状態では無い。アベノミクスの延長線を惰性で走っているだけでは、実質賃金の低下をカバーできない。積極的な経済政策が出来ないのであればせめてパッシブな経済政策、つまり減税、社会保険料の引き下げをするべき。現状はその真逆を行こうとしている。

 本当に必要なのは結婚して子どもを3人以上持つことが出来るような経済的余裕を若い世代に広く与えることであって、若い世代全体に負担を強いて一部の恵まれた人間をさらに優遇する事では無い。政府は企業に賃上げを要請する一方で増税社会保険料の引き上げを続け、民草には厳しくなる一方の社会で子育てを要求し、一番お気楽で一番仕事をしていない。

余談:無償化について

 一部では教育などの無償化を少子化対策としようという話もあるが、それも給付や手当のような政策と何ら変わりない。少子化問題の解決策とはなり得ない。一体、「無償化」の財源はどこから捻出すると言うのか。増税か?社会保険料の引き上げか?「無償化」と言えば聞こえは良いが、何もそれにかかるあらゆる費用がタダになる訳ではない。

 目先の手当、給付、無償化といった利益に囚われて、その財源捻出のために若い世代への負担がますます増えていくことにいい加減、上の世代は気づいて欲しい。結局その財源は税金や社会保険料などから支払われることになる訳で、「無償化」とは言い換えれば「税金化」、「社会保険化」である。

 

*1:不慮の事故などで減る可能性を考慮すれば厳密にはマイナス