ヤマネコ目線

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台湾有事について考える

 Twitterで一部界隈が「台湾有事」で盛り上がっており、何かと思えば台湾有事に備えて沖縄、嘉手納基地からアメリカ空軍が撤退する、という悪質なデマが火元だった。

 そういう話題でPVを稼ぐデマゴーグもクソだが、ホイホイ釣られて「やっぱり安全保障がしっかりしてる自民党しか政権を任せられない!」と言わんばかりに騒いでる連中を見ると、あまりにチョロ過ぎてそりゃあ、カルト団体にカモにされるわとも思う。もちろん、世の中そんなリテラシーがサル以下の人間ばかりでは無いのだが。

「台湾有事」に何が出来るのか

 デマはさておき、いざこういう言葉が出て来るとなかなかに厳しいものがあるよなあ・・・と昨日は改めて考えさせられた。予め断っておくが「現実的にいろいろ厳しいから見捨てるしかない」と言いたい訳ではないこれを書いておかないとすぐ揚げ足取りが湧く。

 が、実際問題として台湾有事が起これば本当に厳しい現実が待っていると思われる。勇ましいことを言うだけは簡単だが、たとえば自衛隊を派遣できるかと言われれば現段階では「NO」だろう。感情論だの精神論だのでは戦争は出来ないし勝てもしない。まずもってアメリカにどこまで台湾を救う気があるのか、というのも気にしなければならない。

 何よりも問題なのは台湾が島国であり、それも中国からして目と鼻の先であること。台湾との距離は地図を見れば一目瞭然で中国の方が圧倒的に近い。中国にここまで近くて未だに形だけでも独立を保っていられるのが不思議なレベルで近い。

 まず物理的な距離の差は、イコール何かあった時に駆けつけられる時間の面で不利でしかない。沖縄からしても台湾までは中国の方が圧倒的に近いし、そうなると中国が攻撃を仕掛けてから動いてどこまでの事が出来るのかは非常に厳しいものがある。

 また、味方と地続きであるウクライナに対して台湾は島国である。支援するにしても制空権だけでなく制権も取れなければなかなかに補給線が厳しい。一方でアメリカのシミュレーション結果はあまり芳しくない。

 希望を見出すならば、ウクライナと共通する「制空権が鍵を握る」という所。現代戦においては当然のことながら、ロシアが未だに制空権を握れずにここまで苦戦している現状は誰しも予想外だっただろう。中国空軍に制空権を握らせないだけの防空能力があればあるいは・・・。

toyokeizai.net

青:台湾  ピンク:ウクライナ

 そしてその大きさも問題ではある。上の図はメルカトル図法による誤差を修正して実際の大きさで国土を比較できる「The true size of」で、台湾とウクライナを比較してみた場合の図。ウクライナよりまあまあ小さく、地図で見れば分かるが大きな都市は中国側に集中している。

 広さ自体は九州とほぼ同じなので、「九州を1日や2日で占領できるか」と言われると怪しい分、まだ少し安心感はあるのだが。いかんせん、やはり近いのと都市部が中国側に集中しているため、多数の巡航ミサイルで飽和攻撃でもされれば日本やアメリカがどうこうする前に壊滅的な被害が出るのでは、と思われる。

尖閣有事」の可能性

 台湾有事がどうのと言うのと同時に、一部界隈は2016年に習近平氏が「尖閣諸島確保を」と発言したとされる記事に対しても、脊髄反射で「宣戦布告だ」だのと騒いでいた。それで宣戦布告と言い出すとなかなか様々な形の宣戦布告をわーくにはされ続けている訳で、舐められ過ぎな現状は確かに気に食わんが簡単に煽られ過ぎではないかとも思う。そこで「じゃあ戦争だ」と言うのが良いのか。真っ先に前線に行く訳でもない連中が無責任な。

 それはともかく台湾有事があり得るのであれば、中国は同時に尖閣諸島や沖縄へ侵攻する可能性があると考える。そうすれば日米ともに戦力をそちらへ分散させざるを得ない。台湾へ侵攻するからにはどのみち米軍との衝突は避けられない、となればいっそ同時に尖閣諸島確保も沖縄侵攻も敵戦力の分散がてらに試みる、というのは中国であれば可能だろう。

これからの安全保障

 煽られやすいのも大概ではあるが結局、台湾有事は決して他人事ではない。特に尖閣諸島はかなり小さい島しかないので、どさくさに紛れて上陸・基地建設なんてことも十分可能なはず。沖縄も米軍基地があり、中国がアメリカとの衝突を躊躇わないとなれば狙われない筈がない。石垣島などの基地がない島国となればなおさら。そうしたことを念頭にした安全保障、日頃の備えがこれからの日本には求められる。

 特に民兵化されている漁民まで差し向けられれば、それらをどう処理するかはかなり厄介な問題になる。正規軍でない以上は非戦闘員のくくりに入るので。彼らは漁民であり、ゲームのように明確に敵味方が分かる訳でもない。なので無闇やたらに攻撃することは出来ない。かつてサンゴを乱獲しようと大挙して押し寄せた中国漁船に日本側の対応は追いつかなかった。そうした漁船が台湾や尖閣諸島自衛隊・米軍の間に割って入るだけでもかなり面倒な足止めになるだろう。武装している者がいるかも知れない、あるいは人民解放軍の船が紛れている可能性が捨て切れないとなれば、なかなか見逃す訳にもいかなくなる。想定され得るあらゆる事態に事前に備えておくべきだろう。

 台湾支援を言うならば、それこそ事前の備えが重要になる。ウクライナがここまで持ちこたえられたのは事前にアメリカから供与されていたジャベリンの功績も大きい。開戦からの補給が厳しいのであれば、事前に増援到着まで持ちこたえられ得るだけの装備を供給しておくのが一番と言える。そこに日本がどれだけ携わることが出来るかが問題。

一方で

 旧統一教会の問題は話が別である。何かにつけて「いつまで統一教会とか言ってるんだ」などと抜かす輩がいるがそれはそれ、これはこれ。全くの別問題を引き合いに出して問題を誤魔化す、そうやって自分まで騙して見せるのはいい加減に止めるべき。安全保障を重視する政党だから経済を軽んじて良いなんて事は断じて無い。このまま今の政治が続けば尖閣もへったくれもなく国が滅ぶ。