ヤマネコ目線

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巡航ミサイル購入の是非

 政府はアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」の購入を検討し、既に交渉は最終段階にあるという。これに関して。

抑止力として有効なのか

 反撃能力、あるいは敵基地攻撃能力は確かに必要だと思うが、それに使用する兵器として巡航ミサイルを選択するのは正直、能力不足ではないかと思う。ただ12式地対艦誘導弾*1の能力向上型が間に合っておらず、新しい兵器を開発配備するにもかなりの時間と予算が必要になる訳で、一時しのぎとしてのトマホーク巡航ミサイル配備は「無いよりはマシ」なように思う。個人的な見方としては苦しいながらもアリっちゃアリ。

 一方で巡航ミサイルはその名の通り長距離を比較的低速、かつ低高度で巡航して標的に向かうミサイルである。極超音速ミサイルや高高度を飛翔するミサイルなどに比べれば撃墜されやすい。飛んで来そうな場所や方向に見当が付きそうな場所であればなおさら読まれやすく、対空機銃でも撃墜され得る。ウクライナ戦争においてはロシア軍の巡航ミサイルKh-22が2発撃墜されている。

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 この巡航ミサイル撃墜をMANPADS(個人携行の地対空ミサイル)によるものとの情報もあるが理論上、不可能ではないにせよ、射程などの関係でよほどタイミングや場所取りが良くなければ不可能と思われる。

 それはともかく問題は、実際に敵国の基地や弾道ミサイル発射地点へ向けて巡航ミサイルが使用されると仮定した場合、敵国がそうやすやすとミサイルを素通りさせてくれるかどうか。特に敵基地であればそうした攻撃が想定されていない訳がない。既にトマホーク購入の記事が出ている以上、よほどのバカでもない限り対空機銃1つ置かないなんて事は考えづらい。

 もちろん、そうした撃墜の可能性を考えた上で出来ることが無くはない。撃墜し切れないほどの巡航ミサイルを一度に叩き込めば良いのである。2018年4月、米英仏がシリアへ103発もの巡航ミサイルを撃ち込んだのはまだ記憶に新しい。化学兵器関連施設3箇所に対して103発であり、1つの施設につき約34発の巡航ミサイルが発射されている。それと同じような事が日本に、それも仮想敵国の複数目標に対して出来るかは疑問だが。

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 また、巡航ミサイルの射程の長さは確かに便利なのだが、標的へ向けて発射してから着弾までにそれなりの時間がかかる。建物などの固定目標に対してであればそれでも問題無いが、輸送起立機(TEL, 北朝鮮や中国の軍事パレードでよく走ってる弾道ミサイル搭載車両)のような移動する目標に対しては有効打になり得ないだろう。

 なので巡航ミサイルという選択肢、使えなくもないが苦しいところかな、と私は思う。そもそもアテにしている発展型12式地対艦誘導弾も、国産兵器はかなりお高いので満足いく数が配備できるかは非常に疑わしい。何にせよ大国に物量では敵わないので、その辺はアメリカ様に頼るしかない・・・。

その他

 改良が進められているらしい12式地対艦誘導弾だが、改良後の射程は1,000kmらしい。それも配備2026年~。最新型トマホークの射程が3,000kmなので「あら、お厳しい」というのが正直な感想。というか日本からだとどう足掻いても中国のほんの端っこくらいしか届かんのでは・・・一応1,500kmまで射程を伸ばすという話もあり、その場合は北京も射程に入る。とはいえ下手な性能と配備数ならむしろトマホークの方が良いかも知れん。

射程1,000kmレンジ

 価格面においてはどちらも何発導入するのか、1発あたりいくらになるのか、という問題はある。トマホークは1発1~2億円が相場と記事には記載されている。円安でどうなるか不安なところではあるが、国産兵器よりは1発あたりの価格は安いと思われる。

 発射プラットフォームはイージス艦を想定しているようだがイージス・システムとトマホークは無関係であり、イージス艦でなければトマホークを扱えないと言う訳ではない。むしろイージス艦の兵器搭載部をトマホークで埋めるのが良いのかどうか。代わりに搭載可能なものが無いなら仕方ないが。

 読売の記事では「GPSの位置情報などを使ってピンポイントで目標を破壊する」としているが、それが意味するところは建物のような固定目標に対して、かつ着弾誤差10m円内という話である。先に述べたように移動目標には使用しづらいし、ましてやトラックくらいの大きさに100発100中という訳でもない。

 「反撃能力の実効性は格段に向上する」とも書いてあるが、一般人がその言葉からどこまでの能力向上をイメージするのだろうか。

*1:要は地上発射型の対艦ミサイル