ヤマネコ目線

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クラスター弾使用の是非ほか

 アメリカによるウクライナへのクラスター弾提供について、ロシアの反発はもちろん、G7内からも反対の声が上がっている。

とはいえ

 既にロシア、ウクライナとも自国で装備しているクラスター爆弾を使用しているようで、今さらアメリカが提供した所で特に気にすべきかは怪しい。特にロシアは開戦当初からクラスター弾を使用しているとされ、非難する声があった。

www.bbc.com

 私自身、報道番組でウクライナの農地に刺さったクラスター弾のキャニスターが映っていたのを記憶している。また、TwitterではJFS氏のまとめが詳しい。

min.togetter.com

 氏いわく、「ロシアのクラスター弾である」という事実を指摘してもすぐに「それはウクライナの兵器だ!」、と言ってのける工作アカウントが多数いるらしい。それも日本語で。まず上記の件から言えば、短距離弾道ミサイルイスカンデルを配備しているのはロシア軍のみでありそもそもウクライナは使いようが無い。なお、イスカンデルには複数の弾頭仕様があり、クラスター弾頭はその中の1つ。

 ロシアを擁護するのは陰謀論者なのか、はたまた本当に工作アカウントなのかは難しいところだが以前、勝手に人の顔写真を使ってロシア側の主張を垂れ流すアカウントが発見されており、工作アカウントはありえなくは無い。

 現在は捨て垢、アイコンも初期の卵アイコンのまま日本語で妙な絡み方をする連中が多いように思う。あるいは本当のイカれか、はたまた釣りか。いずれにせよ悪質。

 クラスター弾を「相手が使って来たからこちらも使って良いのか」どうかは少々幼稚な疑問な気もする。そんなことなりふり構っていられないのもまた戦争である。とにかく殺して殺して殺して殺した側が勝つ。クラスター弾は確かに問題も多いが使用する側としては広範囲を高密度で攻撃でき、かなり強力な兵器といえる。それを反転攻勢を仕掛けるウクライナが使用しない理由は無い。対歩兵用のクラスター弾には塹壕すら無意味とも言われる。

 クラスター弾が禁止される・非難される理由は不発弾の可能性ゆえだが、それが100%防ぐことが出来ないのは事実。特に中東で使用されたクラスター弾の子弾を何も知らない現地の子供が、という悲劇的なケースが引き合いに出されることが多い。逆に言えばそうした得体の知れないものに対し、きちんと警戒・対処できるレベルの国民がいるならばまだ対処はしやすいといえる。占領された地域にはロシア軍がしこたま民間人殺傷を目的にブービートラップを仕掛けており、クラスター弾の不発弾がどうこうとかもはやそういうレベルでも無い。

 ウクライナアメリカからクラスター弾を供与されるにあたっては戦後処理、どの辺りにクラスター弾を使用したかを記録し、不発弾がある場合に対処しやすいようにするとしている。一方でロシアは非戦闘員かどうかを問わず、民間人を平気でクラスター弾によって無差別に殺傷している。もともと自国の領土である地域にウクライナクラスター弾を使うのは苦肉の策であり、非戦闘員でも構わず攻撃しているロシアとは悪質性の面で異なる。

 開戦からはや500日が過ぎた今、反転攻勢では防御する側が圧倒的に有利な中でウクライナ軍はこれまで以上に激しい損耗を強いられるだろう。一般的に攻める側は守る側の3倍の兵力が必要になると言われる。防御する側が圧倒的に有利。開戦当初とは攻守が逆転しているがそれが一概に良い傾向とは言えない。期待されていた西側戦車の撃破も目立っている。兵力を温存することが出来る、すなわちより効率的にロシア軍を排除することが出来るのであれば、クラスター弾でも何でも使うべきだ。

G7は足並みが乱れたのか

 テレビのニュースではG7の中でクラスター弾提供に反対している国があることに触れ、それだけ見ていると「G7の足並みが揃っていない」という印象を受ける。が、クラスター弾を非人道的として禁止する条約に批准している国のトップが、ウクライナだからとクラスター弾の使用を是認するワケにもいくまい。結局、国としての姿勢に一貫性をもたせるために反対を表明しているに過ぎない。この辺りの政治的なロジックを見逃していると物事の本質を見誤る。

ウクライナの将来への懸念

news.yahoo.co.jp

 ゼレンスキー大統領はウクライナNATO加盟について噛み付いているが、彼はウクライナNATOに加盟することの意味をどこまで理解しているのだろうか。ロシアと戦争を継続したままNATOに加盟すれば、たちまち集団的自衛権の行使対象となって戦争は名実ともにNATO加盟国vsロシアとなる。すなわち第三次世界大戦に発展する可能性が高い。

 NATOウクライナに対し、「まずロシアとの戦争を終わらせること」を条件としたのは至極妥当である。一方でこうなって来るとさらなる懸念事項が出てくる。ウクライナ戦争は更に長期化するのではないか。

 「戦争が終わるとウクライナNATOに加盟する」となれば、ロシアにとっては可能な限り戦争を長引かせる、終わらせないことが得策となって来る。戦争の当初目標、ウクライナNATO加盟を阻止が思っていた形とは少々違うにせよ実現できる。プーチンはその選択肢も込みで今回の戦争を起こしたのかも知れない。この先10年でも20年でもずっと細切れに武力衝突さえ起こせば良い。そうなるとウクライナNATO加盟は有名無実化する。西側もいずれ支援に飽きるだろう。

 また兵力に限りがある以上、時間が掛かれば掛かるほどウクライナにとっては不利となる。いずれ目立った戦闘は止むかも知れないが、韓国と北朝鮮のように「停戦している(戦争してないとは言ってない)」、という状態に陥る可能性もある。この点、案外身近なところに悪い例が存在したなあ、という感じ。

日本はNATOに加盟すべきか

 中国、ロシアと国境を接する日本においても、NATOに加盟すべきかどうかはなかなか重要な議題と思われる。ただ、ウクライナは白人でキリスト教の国家かつ欧州の一部、世界有数の小麦の生産地であったから欧米から手厚い支援が受けられている、ということも忘れてはなるまい。極東アジアの滅びゆくモンゴロイド国家、日本がNATOに加盟あるいは事務局を設置することがどこまでの利益をもたらすのか、よくよく吟味する必要がある。アメリカとの同盟のみでも良いのではないか。第一に北大西洋関係無いし。

 それでも加盟や事務局設置を望むのは、中国への抑止力増大としての期待だろう。それは重々理解できるのだが、かといってどこまでの支援が期待できるのか怪しいとも思う。

 私個人の意見としては、抑止力だけの問題ならば国内の米軍基地にアメリカの核戦力を配備してもらうのが最善ではないかと考えている。F-35がどうの、防衛増税がどうのと言った所で人は減る一方、経済も低迷しっぱなしで金が無い日本が正面から、兵力および戦力で対抗・抑え込むのはどう考えても無理がある。それならばアメリカとの同盟を最大限利用し、国内の米軍基地は日本国内にあって日本にあらずという理屈で、核戦力を配備させた方が抑止力になる。まあ、中国からしてみれば第ニの「キューバ危機」になるワケだが、それは自身の時代錯誤な膨張・侵略的態度が招いたこと。

 それにしてもキナ臭い。世界がどんどん世界大戦へ向かっている気がする。残念ながら人間の本質は変わっていない。中国はNATOの声明を「冷戦思考だ」と非難しているが、世界は冷戦時代からどれだけ変わったと言うのか。

 クラスター弾といえば中国は非難する声明こそ出していたが、中国はロシアと並んで新型クラスター弾を研究・保有して来た国であり、紛争地域で中国製のクラスター弾が確認されている事例もある。

www.hrw.org

『3月1日にも、別の場所である南コルドファン州トロジ町で、あるジャーナリストが複数の子爆弾(explosive submunitions)を写真撮影している。ヒューマン・ライツ・ウォッチはその子爆弾を、中国製Type-81 DPICMあるいは通常弾を改造した両用タイプと判断。』

 軽く調べた限りでこれ。Type-81 DPICMは対車両・対人両用の子爆弾。野砲の砲弾で発射されるタイプのようだ。

 自国で研究・保有を続けるのみならず、在庫処分か何だか知らないが紛争地域に流通までさせておいて非難する声明とは、相変わらずツラの皮が厚い。中国で外交官になるためには、顔の皮膚が少なくとも300mmは必要だろう。