ヤマネコ目線

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防衛省がマッスルイージス艦を建造しようとしている件

 防衛省が全長200m以上、全幅40m以上、基準排水量2万トン以上のイージス艦を作ると発表し、私が知る限りTwitterで(悪い意味で)話題になっている。

 私はミリオタな面もあるがぶっちゃけ艦船に関しては全くなのでうっかり流しそうになったが、このサイズは確かにズムウォルト級よりもデカいし何なら第二次世界大戦日本海軍空母、赤城でも全幅は約31m程度である。さすがにアメリカの原子力空母よりは狭い幅だが・・・。なお、自衛隊最大のイージス艦あたご型で全長約165m、最大幅約21m。空母化が検討されている護衛艦いづも型でさえ全長248m、全幅約38m、基準排水量19,500t。小さい空母より太いイージス艦を作るという訳ですかい。戦艦大和でも全幅38.9mという事実が笑えてくる。いや笑えない。

また大艦巨砲主義の道を行くのか

 実際にどの程度”使える”イージス艦になるのか知らないが、実質的にやっている事は大艦巨砲主義と大差ない気がするのは私だけだろうか。イージス・アショアが用地などの問題で立ち消えになったのでそれをイージス艦に載せようと言うのはまだ分かる、しかしそれが現代版弩級戦艦のような形で出てくるなら話は別だ。

 これまでの戦争(第二次世界大戦以外でも)から学べるのは、いかに単一で優れた兵器を作ろうともそれが戦局を大きく左右するほどの力を持つ・発揮するのは極めて希だということ。今回の弩級イージスはその戦訓に反している。そうでなくとも自衛隊の運用する兵器はユニットコストが高く、思ったように数を配備できない場合が多い。兵器はいかに優れていようと消耗品であるのだが、防衛省はそれを意識できているのだろうか。いかに闘魂が宿ろうと神風が吹こうと数の暴力には勝てない。その点、防空の要を数がかなり限られるマッスルなイージス艦に託すというのは、私にはあまり良い考えとは思えない。2隻建造予定らしいがそれこそ実質的な戦艦大和戦艦武蔵の再来ではないか。

 イージス・アショアは弾道ミサイル迎撃のためのシステムだが、中国がもし戦争を始めるなら必ず弾道ミサイル発射の前にこちらの防衛システムを通常兵器で叩いてから、弾道ミサイルで飽和攻撃を仕掛けるだろう。そうなれば巨大なイージス艦は真っ先に的にされて沈み、沈むまでに迎撃ミサイルを発射出来ても全て迎撃し切れずに終わる。もちろん無いよりはマシなのかも知れないが、掛かるコストに対してどこまでその性能が実際の戦場で生きるのか危惧せざるを得ない。

 それに日本は少子化が止まらない。そんな中で現代技術で省人化が多少出来るとは言え、少空母並の巨大イージス艦を運用できるだけの人員をきちんと確保して行けるのか。それもパワハラで悪名高い海上自衛隊で。この点は巨大イージス艦のみならず問題であるのだが、単体で運用に多数の人員を要する兵器を積極的に建造するのはいささか現状に逆行してはいないか。

news.yahoo.co.jp  ほんの一例

ではどうするべきか

 能力向上が必要なのは理解するし、弾道ミサイル迎撃能力が必要なのは確かである。ただその手段が「迎撃ミサイル」に限られるかと言われればそうではない訳で、敵基地攻撃能力、相手の国土内であっても弾道ミサイル発射地点、弾道ミサイル発射直後を叩けるような兵器の開発・法整備を進めるべきだと私は考えている。それこそ超音速巡航ミサイルでも良し、空対地ミサイルを搭載可能なドローンでも良し。巨大な兵器を作る予算があれば、少しでも量産できて有効打になり得る兵器を作るべきである。数の暴力では勝てないのは明白ではあるが、少数精鋭で勝とうとするのはより無謀でもある。

 また、少子化の中で防衛力を維持・強化するには無人兵器の研究加速が必須だろう。日本はアカデミックな場において邪魔が多過ぎるが、いくら日本人が意固地にそういった研究を拒み続けても世界各国はどんどん無人兵器の研究を進めている。もはやその流れは止められない。むしろ無人兵器こそ、止まらない少子化の中で嫌でも省人化を求められている日本に必要なもの。その研究そっちのけでレールガンだ弩級イージスだと抜かす連中の気が知れない。

外交・安全保障の迷走

 安倍政権の頃はまだ外交・安全保障がしっかりしていたし、それで国民に支持されて来た面もあっただろう。逆に言えば外交、安全保障だけで保っていたようにも思うが、それはそれとして近年はそれすら迷走し始めているように思う。

 特に防衛面において、防衛省はあのアメリカすらまともに実用化出来ていないレールガン開発にも手を出している。日本の防衛戦略においてレールガンが役に立つのか非常に怪しいと思うのだが。

 レールガンだけに関して少し触れれば、確かに弾体を従来の火砲より高速で打ち出せるかも知れない。しかしあくまで無誘導の砲であり、誘導性能を持たせるとすれば結局は迎撃ミサイルで良いという話になる。いくら飛翔速度が速くとも大気の温度や風の影響を受けるのは確実で、弾道ミサイルに対してレーザーのように使用するのは不可能。それも充電が必要になるため、連射は出来ない。

 その他、EV化された装甲車を研究するも結局、次期装甲車は外国のパトリアAMV XPを買うような感じであるし、その一方でドローン開発は遅れに遅れている。未だに技術的優位で兵器を売ってくれるアメリカがバックにいるからやれレールガンだの極太イージス艦だのと遊んでいられるが、アメリカの軍事技術における優位性がいつまでも変わらないという前提に甘えていて良いのだろうか。

 そもそも貧しくなること著しいこの国が、同盟国とはいえいつまでアメリカに武器兵器を売ってもらえるのかという話もあるが。AAV7の時も時代遅れの水陸両用戦闘車両の割にかなり吹っかけられた値段だったし(生産ラインの再稼働の問題があったものの)、数を揃えられない事態はこれから増えるだろう。

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