ヤマネコ目線

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陸自ヘリの事故について

 陸上自衛隊のUH-60JAヘリコプターが沖縄県宮古島付近で消息不明となった事故に関して、様々な憶測が飛び交っている。

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陰謀論に関して

 天候が良かったのに連絡が取れないまま消息を絶った事に関して、事故当初からSNSで一部界隈が陰謀論を展開、拡散していった。特に「中国に撃墜されたのでは」といったような意見が散見された。

 が、発見されたヘリのドアと見られる残骸はひしゃげてはいるが焦げ1つ無く、ミサイルによって撃墜され炎上したならば説明がつかない。そも、ミサイルならロックオンされた時点で警告が鳴るであろうし、そこから攻撃に遭ったことを連絡する時間もある筈である。

 ミサイルが命中したなら機体は炎上し、漏れた燃料に引火して海上で炎が見られたりする筈だろう。が、今のところそうした情報もない。

 何よりヘリが消息を絶った地点は宮古島からそう離れてはいない。島のほぼ北の端付近である。航空自衛隊 宮古島分屯基地から距離にして約20km。領海どころか島の付近を出ない範囲において、下手をすれば島の住民や漁民にも目撃され得るような距離において陸自のヘリを、いくら中国でもミサイルによって撃墜するといった事は考えづらい。

 一部の陰謀論者は何かと中国との火種を作りたがるが、冷静に考えて可能性が低い。もし中国が攻撃を行うとしても、ヘリ1機をチクチク落とすような行動に利点は無い。

原因として何が考えられるか

 メディアとしては機体トラブルがあったと思われるという説が主流であるし、基本的にはその可能性が高い。3月の点検で異常が無かったとは言っても、その後で何があるかは分からない。UH-60は「ブラックホーク」の名でよく知られた汎用ヘリであり、陸上自衛隊仕様のUH-60JAは1999年から配備が始まっている。最新のものでも2013年度調達と確実に10年以上が経過しており、軍用機の耐用年数としては問題ないと思われるが飛行時間や整備状態によっては、機体トラブルによる墜落の可能性はありえる。配備箇所が宮古島なので当然、潮風による劣化の加速もある。

 事故当時の天候が良かったという点は、事故を不可解なものと印象づけ陰謀論者が出てくる要因となっている。が、天気が良くて視界が良好であっても「航空機にとって何の障害もない」という訳ではない。特に海では天気が良くても風はある。高度によっては大気の状態が安定せず、突風もある。目に見えて悪天候の時よりも油断を招きやすい。

 「故障なら故障で連絡があるはず」というのも陰謀論者のつけ入る箇所になっているが、連絡をする時間がないレベルで、あるいはパニックになって連絡が出来ないレベルで急激に事態が悪化するような事故もあり得る。過去の事故事例を調べると、エンジンパワーの管理がし切れずに制御を失って墜落した事例がある。事故はいつも「何か調子悪いわ~」というような呑気な感じで起きるとは限らない。自分が交通事故を起こす時、誰かに連絡する余裕があると自信をもって言える人間はどれだけ居るか。

 また、これはあまり考えたくない憶測になるがパイロットの精神的な要素も排除できない。過去には旅客機の副操縦手が精神不安から意図的に機体を墜落させた事例がある。

news.yahoo.co.jp

 特に自衛隊なんかはストレスの多い環境だろう。その中で精神を病む可能性は当然あるし、そうした人間にとっては自分が操縦する航空機に何人乗っているかなどは関係ない。

 以上のように、「中国による攻撃」といった今のところ非現実的な要素以外に考えられる要素は複数ある。にも関わらず、陰謀論者は何ごとに関してもそうした要素や可能性を無視し、想像力の欠如した頭で考えられる範囲の最悪なパターンを見出しては安易にSNSで拡散する。いい加減にして欲しい。

 ちなみに調べれば出て来るが、ヘリコプターであってもバードストライクはある。風防を砕かれたケースさえある。