ヤマネコ目線

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ペットにすべきでない動物たち

 動物園にいるとたびたび展示されている動物を見ては「飼いたい」と口にする人間がいる。子供が安易に言う分には良いが、中には本気で飼おうとする人間もいるので困ったものである。

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野生動物であって家畜ではない

 野生動物の中にはとても可愛らしい種類もいるが、彼らはあくまで野生の厳しい世界を生きる者であって我々ニンゲンとは違う。イエネコや犬のように家畜化された種類ならまだしも、そうでない種については飼うべきではない。

 上の記事ではカワウソだが、他にもスナネコ、マヌルネコサーバルスローロリスフェネックなどといった比較的小型かつ家畜に似ている種類の動物は飼いたいと言うニンゲンが多い。

 しかし野生動物はどこまでいっても野生動物。大抵は気性が荒いしニンゲンとうまく共存して来た訳でもない。マヌルネコに至っては生息地が病原菌の少ない高地なので病気に弱く、雑菌だらけのニンゲンなど向こうからお断りなレベル。

エサが用意しづらい

 家畜以外をペットにすべきでない理由その1。一般的な犬・ネコ用のエサで代用できるならまだマシだが、野生動物のエサは大体が家庭では用意しづらい。野生のネコ科動物は生肉や冷凍ひよこなど、カワウソなら生魚などを食べる訳だがそれを家庭で用意するとなるとなかなか食費がかさむ。マヌルネコに関しては先ほども書いたが免疫力が弱いので、おそらく動物園でも相当に気をつかっている筈。

 私は小さい頃にわがままを言ってサソリを飼わせてもらったが、あれはあれで生きたエサしか食べない*1ので苦労した。食べるものに困らせてしまうという時点でそういう生き物は飼うべきではない。

 話は違うがうちの実家はド田舎で、ネコはほぼ放し飼い状態になっている。彼らは家畜ではあるがハンターとしての野生は残っており、十分なキャットフードがあるにも関わらず時に野鳩やネズミを獲っては一部を食べたりしている。一番身近な部類のイエネコでさえそういう所の感覚は我々とかけ離れている。

環境が用意しづらい

 上のカワウソの記事では「水道代が月10万」との話があるが、他の動物も種類によってはそれくらい覚悟すべきだろう。特に温暖な気候にいる動物が日本の厳しい冬に耐えることは当然難しい。暖房を24時間適温になるようにつけっぱなしにするだけの経済力はあるか。あるいはその逆で寒冷な地域に住む生き物の場合はどうか。

 動物の種類によっては特定動物として飼育環境に規制がある。そもそも特定動物の場合は愛玩目的での飼育は禁止されている訳だが、飼育環境(ケージや拘束の規定など)を鑑みても個人で飼育することは難しい。経済的あるいは物理的な側面から見て、野生動物を飼育して良いのは動物園くらいだろう。

最後まで面倒を見きれない

 熱帯魚なんかでもよくある話。思ったよりも大きくなってしまったといった程度の理由で、その辺の川に熱帯魚が放流された結果がどうなったかは鉄腕DASHを見ていればおわかりの通り。沖縄ではプレコストムス(いわゆるプレコ)が繁殖している。その他、問題になっている外来種は大体が最後まで面倒を見ないクソバカ人間のせいであり、環境保護の観点からして良くない。

 天才志村動物園のパンくん(チンパンジー)も、歳を重ねるにつれて凶暴になっていったためにテレビの出演が無くなったと言われている。最初は可愛くても最後まで面倒を見るとなると、野生動物は家畜よりも大変であることに間違いないだろう。種類によっては獣医でも専門外であろうし、その場合はより費用が嵩んだり治療自体が受けられない可能性もある。

動物に対する福祉

 ペットを飼うにおいて最も重要なのは、ペットも人間もお互いがWin-Winな関係を築くことだろう。そのためには強い立場にある人類が動物にとっての幸福や在り方を尊重する必要がある。命を預かる以上はその命を尊重し、尊び、慈しみ、最後まで付きそわなければならない。飽きたから、お金がないから、大きくなったから、その他の理由で一度預かった命をまるでその辺のおもちゃを投げ出すように捨てるのは人として最低である。種によっては人間を噛んだ場合に安全なようにと牙を折られたりする場合もあり、そういった点でも最悪。

 一部ではスナネコを猫カフェに入れようという不届きな金儲けしか考えていない輩がいるようだがとんでもない。本当に勘弁してあげて欲しい。野生動物は本来であれば野山を自由に駆け回っている存在であって、人間の金儲けの道具でも何でもない。猫カフェはイエネコだけで十分だろ。なぜそこで気性の荒いスナネコを見た目だけで飼おうとするのか。

 動物園などがまだ許されているのは、世界にいる生き物を実際に見られる”学習の場”としての意義があるため。また、動物園という特殊な環境で家庭よりは絶対的に適切な環境・食料・医療が提供される点も大きい。パンダは客寄せとして使われる場合もあるが集客による収益が動物側に還元される面も大きいので、先に述べた単なる利益至上主義の施設とは違う。

神戸市立王子動物園マヌルネコ、イーリス(♂)

 因みに私のuserアイコンはこの子。王子動物園マヌルネコ、イーリス君。彼を撮るためにフルサイズミラーレス一眼を買ってしまった。マヌルネコは比較的小さいヤマネコだが、先に述べた通り免疫が弱いので人間とは一緒に住めない。飼育員さんですら直接は触れないようにしている。当然、来園者が触れることも許されない。こんなにも可愛いモフモフなのに気性は荒いわ触らせてくれない生殺しだわ、でも見ているだけでもとても癒やされる生き物。

 野生動物は飼うのではなく動物園などに会いに行きましょう。

 フラッシュ撮影・AF補助光は厳禁

*1:視力が弱く、腹にある櫛状の器官で獲物が歩く振動を検知してそこへ向かって行って捕食するのが彼らのスタイル