ヤマネコ目線

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インボイス制度とは何か

 インボイス制度、最近ちょくちょく話題になりながらもあまり気にしていない人は多いのではないだろうか。今回はそのインボイス制度について簡単に書いてみたいと思う。

*後半に行くほど怒りのボルテージが上がっているのでご了承ください

実質的な消費増税

 極限まで簡単に書けば、「消費税の制度をより厳しくして消費税増税をしましょう」という話。消費税率を上げるとなると反発がかなり強くなるし、おそらく解散総選挙で国民に信を問わないといけない。それを避けて何とか消費税を上げようと官僚か誰かが厭らしい頭を捻った結果、出てきたのがインボイス制度だと言える。

 消費税率が変わる訳ではないので消費者としては特に影響がない。そう、消費者としては。しかし事業主あるいは個人事業主としてはかなり影響のある話であり、フリーランス潰しとも言われているのはこの点にある。働いている人の中で事務作業に関わっていない人には関係が薄いが、事務作業も後述するように確実に増える。税収見込みとしては財務省の試算では2,400億円程度とされている。財務省の試算をどこまで信用するかはともかく、何はどうあれ実質的な消費増税が進んでいるのが現実。消費税というのは逆進課税(貧乏ほど負担が大きく、富裕層ほど負担が軽い)なのだが、この世界情勢、この経済情勢においてそれをさらに強化する流れが出来ていること、もっと国民は危機感を持つべきだろう。

いやらしい制度設計

 「仕入税額控除」という用語がある。簡単に言えば消費税を払った分、預かった分で差し引きして納付してもいいよ、という仕組みのこと。これは別に良いのだがまず最初に解説しておく。下の模式図で考えてみると

 自分自身がB社の立場だったとしよう。メーカーAから商品を仕入れた時に支払った消費税が500円。その商品を売った時に受け取った消費税が1,000円だったとする。消費税はいくら払うべきですか?1,000円もらったけど先に500円払っているので残り500円を納付すれば良いですね。というのが「仕入税額控除」。すごく簡単に言えば。

 もしメーカーAが免税事業者だった場合もその点は同じ。小売業B社としてはメーカーAに消費税を払っているので、その分を差し引いた消費税500円しか納付する義務は無い。

 一方でメーカーAの立場からすれば、もし免税事業者であれば消費税納付の義務が無いのでB社から受け取った消費税500円は納付する義務がない。これが「消費税分ズルしてきた、得をしてきたんだろ」と言われる点。だが考えてみて欲しい。そもそも免税事業者は課税売上高が1,000万円に満たない事業者であり、そうした規模の事業者がそうした差額分で得をしたとしても単純計算で1,000万の10%として100万円が限度。そうした部分でこれまで増えたコストを吸収、小売価格を抑制して来た面があると考えるとむしろ少ない部類ではないか。商売人はそういう点も加味して単価交渉をするのでズルだの得してただのと抜かすのはお門違いである。

 これがインボイス制度が始まってから変わる。具体的に言えば免税事業者からの仕入れについては消費税の差し引きが出来なくなる。*1上の模式図の場合で言えばメーカーAが免税事業者だった場合、先に支払った500円の消費税は引けなくなる。B社にとっては納めるべき消費税が増える。となればB社にとっては負担が増える訳で、免税事業主とは取引しないのが得策になってくる。*2ここが非常にいやらしい。ゲーム理論的に免税事業者を減らそう、取引させないようにして潰してしまおう、そういう魂胆である。

 今の免税事業者が課税事業者になろうがなるまいが免税事業者の仕入税額控除を廃止し、とにかく課税事業者に消費税を収めさせる制度なのでどのみち政府は消費税を取りっぱぐれる事がない。

 立場の弱いフリーランスなどの場合、「免税事業主のまま取引を続けてやるから、仕入税額控除ができない分を値引きしろ」と言われかねないだろう。ただでさえコストカットのために割を食っている小さい下請けや個人事業主が結局は割を食う。消費者は値上げをすると如実に商品を買わなくなるので大手の小売店はこの状況下にあっても未だに値下げ合戦に躍起であるし、そうなれば増税分の負担はそういった弱い立場の事業者に行くことになる。となれば、そこでもう耐えきれなくなって廃業しますというのも増えて来るだろう。これまで縁の下も縁の下でコストを甘んじて受け入れ、社会を末端で支えていた部分が潰れていく。そうなるとどうなるか。これからが楽しみだなクソ自◯党。

 話が逸れたが結局、免税事業者からすれば道は2つに1つ。課税事業者となってキッチリと消費税を納めるか、免税事業者のままゆるやかにタヒんでいくか。免税事業者のままでも数年は経過措置として仕入税額控除が認められるらしい。ただし80%。そこから段階的に50%、0%と控除できる割合が引き下げられて行く。当面は免税事業者で行くとしても、その間に腹をくくって廃業するのか課税事業者になるのかを決めなければいけない。

 こうした話は1消費者としての我々と決して無関係でもない。これまで甘んじて消費税で得する分、コスト増を受け入れていた免税事業者が軒並み課税事業者に変わり、その分が小売価格に反映されるようになれば結局は増税と変わりない。何なら小売価格が上がればそれだけ消費税も上がる訳で、世界情勢が不安定化してただでさえ物価が上がって来ている昨今、この制度を考えたヤツは悪魔としか思えない。

適格請求書などの事務処理が煩雑

 インボイス制度に伴って適格請求書発行事業者だの、電子帳簿保存法だのという面倒臭い制度が次々に出てきている。経理としては増税のためにさらに余計な事務処理まで増やしてくれた自民党には憎しみしか湧かない*3が、それはひとまず置いて何が面倒なのか説明して行こう。

 まずインボイス制度が本格的に始まれば、「適格請求書」という記載すべき内容を満たした請求書の発行が必要になる。多少の変更はあれど、内容的にはこれまでの請求書様式から変えるべき点が少ないので別に苦ではない。しかしここで相手が値引きや返品で請求金額と異なる金額を支払って来た場合、その内容を反映した修正版の請求書を再発行しなければならなくなる。バカかよ。どこまで手間かけさせる気だ。

 ちなみに銀行振込の場合、会社にもよるだろうが振込手数料は差し引いて支払うことが多い。その場合の取り扱いについてはまだ現時点でハッキリしていないらしい。バカかよ!

 また、適格請求書発行事業者として認められるためにはそのための申請が必要になる訳だが、そこで発行される「適格請求書発行事業者番号」という番号、なんと法人番号(法人のマイナンバー13桁)の頭にTを付けただけである。おそらく「適格」の「T」。アホくさ。逆に言えば申請せずともすでに交付されている法人番号の頭にTを付ければ適格請求書発行事業者でなくともそれっぽく偽装できてしまう。バカかよ!!

 なので経理本当に取引相手が課税事業者かつ適格請求書発行事業者番号を取得しているかを確認するために、国税庁の検索データベースサイトにアクセスして1件1件確認する必要がある。0からマイナンバー的な事業者番号を発行・交付するよりは手間と金がかからないのか知らないが、まあ余計な手間を増やしてくれるよね。

 それ以外にも取引先がまず免税事業者なのか、課税事業者なのかの確認がまず必要になる。私の会社はまだそこまで取引先が多くないのでマシではあるが、これが多い企業だと事務負担はかなり増えるだろう。

 税金も事務負担も増やしてくれてありがとう自民党!これで日本の未来は明るいね!◯ね!「日本◯ね」じゃねえ、自民党◯ね!

余談:投票に行け

 我々が次の選挙でやるべきは1にも2にも投票に行くこと。「どうせ何も変わらない」、「世代別の人口でどうあがいても上の世代には勝てない」、そう言う人間もいるだろう。しかしそういった戦況はどうあれ、国民としてしっかりと意思表示をしていく必要がある。以前も試算したが、投票率が52%と80%とでは有権者をざっくり1億人と近似して約2,800万人の差が生まれる。「どうせ何も変わらない」、そう言って選挙に行かない人間が積み重なればそれだけの数字になって来る。

 何より投票率が低ければ組織票が有利になる。愚かな日本国民が「どうせ何も変わらない」と言って投票という最低限の義務すら放棄する一方、統一教会の信者たちは安倍元総理の意向のもとせっせと投票に足を運んでいた訳で、今後はそのような組織票(特に統一教会)が有利になる状況を許してはならない。

インボイス制度を考えたヤツは地獄に落ちろ。赤熱した貨幣で焼かれろ

*1:経過措置はあるが

*2:取引相手にもよるだろうが

*3:インボイス以外にも何かにつけて余計な手間ばっか増やしやがって。◯ねよマジで