ヤマネコ目線

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DXと中小企業

 書き散らし。私は中小企業で総務と経理をしているが最近、DX関係で営業電話がかかって来る事が多くなった。おそらくインボイス制度関連のものがほとんどだが、正直その他の面でもふくめてデジタル化には限界を感じている。

コスト面での限界

 余裕があって仕方ない大企業や儲かって仕方ない業界ならまだしも、それ以外の中小企業、特に大企業の製造下請けは今現在、高騰する原料価格と小売価格を上げたくない大企業の板挟みになっている。そうでなくとも、もともと厳しいコストカット競争の中で中小企業は耐えて来た。

 当然そこには余裕がなく、技能実習生制度に関しても「ビジネスモデルが間違っている」と言われようと、その企業単体でビジネスモデルを改善することはなかなか出来ないレベルで本当に余裕がない。今はネット通販が気軽に開設できるのでその方面へと足掻く企業も多いが、それだけで事業継続が安泰になるレベルの成功はあまり無い。

 となれば、製品の提供に直接的に関わる部分以外でコストをかけられる限界は低くなる。私が自社の体制で感じている限界がまさにそれで、デジタル化、DXと言ってもそこにこれまで以上のコストがかかる限り、そこまで踏み込むのが難しい。もちろん、人を使って何かをする方がコストも時間もかかるのは明らかだろうが、そこに関わって来るのが自社だけでは完結しない要素であったり、あるいは途中でどうしてもアナログな手続きが必要になったり、単純に便利さを金で買うような内容であればアナログな方法の方がまだマシに感じる事がある。

 なので私は私の出来る範囲でExcelでマクロを組んでどうこうする程度しか出来ていない。何でも内製化でやるくらいしかコストを抑えつつデジタル化を進める方法がない。振込処理もネットから出来るようにしたのでかなり楽になったが、以前はかからなかった全銀ネット利用料を銀行から毎月徴収されている。最近はどこも従量料金制だのサブスクだので、地味に固定費が増えやすい。まだ企業体力のある方な会社なのである程度はついて行けているが、そうではない企業は悲惨だろう。会計士の先生と話をしていても、DXに本気で取り組んでいる企業は体感的に全体の1割程度と言われていた。

使用者側の限界

 ぶっちゃけ、私の会社の社長はまだデジタル化に理解がある方と言えばある方なのでそれで助かっている面もあるのだが、これが理解がない人であればそこがもう、デジタル化の限界になる。社長でなくとも上司であったり、その場で決定権を握る人間がデジタル化について行けない、ついて行こうとしない人間であれば、何がどうあれそこで問題はストップしてしまう。

 そういった人々はそもそも既存のやり方の中で何が問題なのか、何が非効率かが理解できず、問題解決どころか何が問題なのかを理解出来ていない事が多い。前例主義的というべきか、「今までずっとこのやり方でやって来たし、それで不自由に感じないし問題も起きていない。なので今のやり方を変える必要はない」、そういった意識を上の人間が持っているのが一番邪魔なのだが、それを自覚している上の人間はどこまでいるか。そればっかりはプログラミングでどうにかする訳にもいかないし、前述したように新たにコストがかかるとなると、余計に仕事のやり方を変えることを渋られる可能性が高い。

 「今までずっとこのやり方でやって来た」、だからどうしたと言うのか。より効率的な方法があるのであれば、その方法に変える方が良いではないか。

 「今までのやり方で不自由には感じていない」、それは貴方の感想であって、下の世代はより効率の良い方法があるのにそれに切り替えない事にイライラしている。

 「問題も起きていないので今までのやり方を変える必要はない」、より効率的な方法に変えても問題が起きないのであれば、変えない理由もない。

 もっとも、日本企業について言えば非効率で時間のかかるやり方をあえて変えたがらない人間が多いのも理解できなくはない。効率化して仕事に余裕が出来れば、そこに出来た余裕以上の仕事を放り込まれて余計に仕事が苦しくなる、一方で給与は上がらないという面があるので、労働者にとって効率化を進めるメリットがそもそも無い。ダラダラ仕事をして残業している人間が評価されるのも効率化を遠ざける理由の1つ。どうせダラダラ仕事をしている方が評価されるならあえて仕事を効率化してスピードを上げる必要性もないし、その方がむしろ評価されるまであるなら、効率化はむしろ邪魔になる。

 そして経営者側がそういった意識であれば、いくら効率化しようと正しい評価さえなされない。DXに取り組める人材はそれに気づいてしまうので、そこで挫折して別の会社へ行くなり、その会社の中で効率化をやめてダラダラ仕事をする既存の人材と同化してしまう。