ヤマネコ目線

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インボイス反対派

 愚痴+α。X(旧Twitter)で「インボイス反対派がどうの」と騒いでいる連中を見てうんざり。本当、原発問題でもなんでも賛成と反対に分かれて叩き合って自滅するの好き過ぎないか?特に政府の言うことなら何でも賛成に回る連中、問題に対する思考を放棄し、覆りづらい政府の決定・主張に乗っかることで勝ち馬に乗った感覚になって、反対するものを嘲って気持ちよくなっている。それで良いのか。勝者のつもりか何なのか知らないが、インボイス制度で得をするのは国民ではない。税金を取りっぱぐれない政府だけが勝者である。

 いわゆるサヨクと呼ばれる過激な主張をする連中のせいで、「彼らが反対しているならその真逆を行くのが正解」と安易に考えてしまうのは分かる。私だってそういう所はある。一方でそうした思考は正常な議論の妨げとなる。偏見に囚われず、まず本当は何が問題なのかを見極めなければならない。

 インボイス制度においてはいわゆるサヨクだけでなく、様々な業界から反対の声が上がって来た。何よりアベノミクスによる円安誘導でスタグフレーションに陥っている今、上がらない手取りと物価高で国民が苦しんでいる状況下で、実質的な消費増税を行うことが悪手で無くて何なのか。反対派も何も、反対すべき要素しか無いではないか。

 政府は何かにつけてやれ消費減退が起きるだの買い控えが起きるだのと言うが、一方で逆進課税である消費税を上げ続け、免税事業者といういわば弱い者いじめの極致のような制度を導入しようとするのは矛盾でしかない。消費を促進させようという意図が感じられない。余計なことを心配しているならまともな政治をしろ。

益税批判は愚か

 未だにインボイス制度や免税事業者の在り方について正しく理解せず、「収めるべき消費税を収めて来なかった。益税をむさぼって来た不埒者が排除される」、と正義面して述べている者が多いが、その批判は愚かしい。

 まず免税事業者となれるのは年間の課税売上高が1,000万以下の事業者である。消費税10%のみと仮定してそこで消費税分は最大でもたかだか100万円。100万円は労働者、一般の消費者からすれば大きな金額だが、企業・事業者としてはそこまで大きな金額でも無い。何か機械でも買えばすぐに飛んでいく。クルマだって維持費も込みで考えれば100万円では厳しい。町中でよく見かける商用車で言えば、スズキのEveryは約99万円。維持費も考えると収まらない。

 そもそもなぜ、今まで免税事業者という存在が許されて来たのかを考えなければならない。年間の課税売上高1,000万円は企業、事業者として見れば決して大きくは無い。人間でいえば子供と言える。そうした企業・事業者にとっては消費税の算定を含め、様々な事務作業が負担となる。

 その負担を軽減し、収益の面でも少し手心を加えてやろうというのが免税事業者という枠組みの趣旨であった筈だ。それを排除する方向で動くということは、人間でいえば子供から所得税・住民税を取るようなもの。それで良いのか。その方が厳密かつ平等で良いと本気で思うのか。私は思わない。はっきり言って残酷である。

 「今まで不当に消費税分を請求して来た」などという批判も的外れ。小さい企業や個人事業主はこれまでも厳しいコストカットを迫られて来た。その中では消費税分の利益込みでのコスト計算をすでに行っている。「不当に請求して来た分、これからお前らちゃんと負担しろ」とは言えるものでも無い。実質的に消費税が上がるのであれば、その分をこれまでのコストに上乗せするしかない。となれば?物価高はさらに加速する。

 失われた30年の中で今さら余計なコストを吸収する余裕など、小さい企業や個人事業主に残っていると思うのか。思っているのならある意味本物だ。物を知らん。物事の理非を知らん。愚者の極み。

制度設計がいやらしい

 「課税事業者になるのは別に義務ではない」というロジックも、未だに擁護肯定する者がいる。が、制度を正しく理解していればそれはただ単なる建前であると理解できる。

 免税事業者が取り得る道は2つに1つ。

  • 課税事業者となって消費税を収める
  • 免税事業者のままで取引先に消費税を代わりにおさめてもらう

 2つ目の「免税事業者のままでいる」選択肢は、たしかに残されてはいる。が、免税事業者からの仕入れでは仕入れ税額控除が出来ないという点でまず取引先から外される可能性が高くなる。免税事業者の代わりに消費税を支払っても良いという余裕ある企業は少ない。

 取引を続ける場合でも、これまで消費税分の利益込みでコスト計算をして来たにも関わらず、消費税10%を支払わないのだからと免税事業者は10%分の値引きを迫られる可能性が高い。この辺は交渉次第だがパワーバランス的に収益構造が圧迫されて事務負担も増え、事業として立ち行かなくなる(見込み)が出れば当然、廃業も視野に入る。

 ある種、ゲーム理論的というか、建前上は「免税事業者のままでいる」という選択肢を残しながらも、制度的にはそうした選択肢が排除されるように作られている。なので「選択肢は残されてるから良いじゃん」という擁護は不可能。

 「インボイス制度」という制度名もつくづくいやらしいネーミングである。バカな国民は訳の分からない横文字を使われると思考停止してその是非を考えられなくなる。だからあえて分かりづらい名前でごまかす。官僚の考えそうなことだ。それでまんまと無関心でいる国民も国民。今の今まで無関心だった癖に、反対の声が聴こえてくると「今さら騒いでも遅くない?」などと抜かす。ある意味で無敵だな。

消費税は逆進課税

 もう要らんと言われるほど何度も書いているが、消費税は逆進課税である。富める者ほど負担は小さく、貧しい者ほど負担は大きい。累進課税の逆。”平等”ではあるが決して”公平”では無い。

 億万長者が1万円のモノを買って支払う1,000円と、貧しいものが1万円のモノを買って支払う1,000円、金額は同じだが負担の大きさはまるで違う。相対的に見て貧しい者ほど消費税による負担は大きい。

 この性質を正しく理解し、なおかつインボイス制度が実質的な消費増税であると理解した上で賛成している人間は一体どれだけいるのか。

manuller416.hatenablog.com

 こうした「貧しい者ほど負担の大きい税」を、よりによってこのタイミングで、円安による物価高・光熱費高騰、スタグフレーションのタイミングで実質的に引き上げるとどうなるか。さらなる物価高騰・光熱費高騰が予想される。弱い者いじめにも限度がある。

余談:ハンコ特需

 インボイス制度に関連して適格請求書というものがある。要は「ちゃんと条件を満たした請求書でないとインボイスとして認められません」ということ。その要件の中に「適格請求書発行事業者番号の記載」がある。これが思わぬハンコ特需をもたらしている。

 大きい企業などはいざ知らず、小さい企業や事業主は請求書発行が効率化されていない場合がある。何なら私が処理するものの中には手書きのものだってある。印刷すれば良いのにと思うのだが、印刷するためのコピー機、インク代、紙代、パソコン、事務要員などの都合だろうか。そこで手書きの請求書に、適格請求書発行事業者番号の記載をしようとすればどうなるか。彼らはハンコを押すのである。それでハンコ屋が儲かっている。

 何というか、印鑑廃止の流れは少し評価していたのだがまた余計な手間を増やしてくれたなと思う。一部の事業者だけなのでプラスマイナスゼロやマイナスにはならないが。インボイス制度導入に伴う事務負担はその辺の人が思っている以上に重い。