ヤマネコ目線

大体独り言、たまに写真その他、レビュー等

「閣議決定で何でも決めるな」は筋違い

 報道特集にて誤解を生みそうな内容があったようなので指摘しておく。間違いは間違い。

https://twitter.com/siroiwannko1/status/1789226799999922206/photo/1
閣議決定の意義

 閣議首相官邸で行われる総理大臣と閣僚による会議であり、そこで政府としてどういった方針で政策を進めていくのかを確認している。そこで行われる意思決定が「閣議決定」であり、その内容に応じた法案などが国会審議を経て実現されていく。

 閣議決定だけで法律が決まる訳では無いし、閣議決定を経なければ内閣全体での方向性が定まらないので無くせと言うのは無理がある。閣議決定された内容がほぼ実現されていくので「閣議決定=好き勝手にやりたい内容を決めている」、などと勘違いをする層がいるようだがそれは違う。

 「そんな奴いないだろ」と思う人もいるかも知れないが、冒頭で貼った画像の人は少なくともそれに当たる。X (Twitter)を見ても分かるが世の中にはそういう人間は思った以上にいる。知能が低いと言いたい訳では無く、用語の意味をきちんと調べず思い込みだけで批判する事は割とありがち。

 報道特集の一幕はそうした層に誤解を広める、誤解を補強するような内容であり、報道機関としてそのような内容を公共の電波で広めることは非難されるべきではないか。

 日本のマスコミ、メディアは先の大戦への反省として政府批判に対する意識が強い傾向にあるが、それにこだわるが故に本来あるべき姿、事実をありのまま事実として伝える姿勢に欠けている。製作する側が人間なので多少の主観が入ることは致し方無いにしても、一部のメディアはその限度を超えている。もちろん批判するべき点は批判するべきなのだが、閣議決定がどうのは明らかに筋違い。

本筋はどこにあるか

 自民党公明党が好き勝手し過ぎていることは問題だと思うが、それで言うならば批判するべきは国会の機能不全と与党そのものだろう。多数決であることを良いことに与党は数の力であらゆる法案を押し通している。答弁では官僚が用意したカンペを読むだけ。国会で本当の意味での審議など行われていない。あんなものはただの茶番劇だ。少なくとも居眠りしている老人が正常な審議を行えるとは思えない。国会議員の平均年齢は2021年の資料で男子で59.6歳、女子で55.4歳。もはや年齢によっては価値観からして現状にそぐわない。

https://new-kokumin.jp/wp-content/uploads/2021/08/b6035575fc034bb64c659a938ed8e7a7.pdf

 一時期、ねじれ国会などと言われて法案の議会通過の遅さ=政策実現までのスピードの遅さが問題視された時期があったが、本来あれくらいの、通りづらいくらいの方が良いのではないか。そうしなければ与党に野党からの意見を聴く、反映する気を起こさせることが出来ない。

 蛇足だが最近、選挙では国会における議席数割合も投票させて欲しいと思っている。与党勢力(自民+公明+維新)とそれ以外の野党勢力が 1 : 1 くらいでやって欲しい。維新は本質的に自民党太鼓持ちなので野党扱いはしない。

 現在の国会は形骸化している。数の力で押し切れば良いだけの準・一党独裁状態であり、これを何とかしなければ悪い流れは止まらない。それを許して来た、許し続けている有権者にも問題がある。

 「閣議決定された内容がほぼ国会で通るのだから『閣議決定で何でも決めている』は間違っていない」はただの屁理屈。閣議決定に関与するのは総理大臣と閣僚だけだが、政策決定においては自民党公明党全体における議論や官僚の意図も関与している。言い方として無理があることに変わり無いし、そこまで行間を深読みしなければならない報道、言い回しは誤解を生む。

改憲に関して

 ついでなので書いておくと私は憲法改正については現状、反対。何が何でも反対という立場では無いと言うか、自衛隊を正式に軍隊とすることには賛成の立場。だった。しかし今は憲法改正どころの状況では無い。憲法改正をしきりに進めたがっている連中に信頼して憲法改正に関する議論や改正案の策定を任せられるとは到底思えない。

 国の現状を見れば憲法改正よりもやるべき事が山積している。それが分からない、重要な問題を多少なりとも解消しない内に改正のための改正を目指す連中を許して良いのだろうか。優先順位を間違えるなよ。裏金問題に対する対応1つ、政治資金規正法改正案1つ取っても甘過ぎる。なされるべき事がなされていない。

 大体、憲法改正に関する国民の議論は深まった」と言えるのだろうか。そもそも政治の話をするのがタブーと言われるような国民性で?大衆はそんな事には無関心であり、息苦しい社会の中で日々を送ることに精一杯。関心の高い人でもただ漠然と一個人がそれぞれの意見を抱えているに過ぎない。せいぜい同じ意見の人同士でつるみ、エコーチャンバー現象で「自分の意見が多数派」と思っている程度。議論が深まるどころか議論そのものが行われていない。

 政治屋は己の立場を弁えずに民意を汲む気などさらさら無く、やるべき事をやらない。経済界や官僚の良いようにされて国益を蔑ろにし続け、自分たちがやりたい事だけに夢中で、価値観も狂っていれば最低限の道理すら理解していない。そんな連中が最高法規たる憲法を改正したいと言っても何をもって信用すれば良いのか。任せれば良いのか。無理。ム・リ。

 安全保障における憲法改正の必要性もそこまで感じない。むしろ安全保障を憲法改正のための口実として使おうとしているのが透けて見えるのでますます信用ならない。従来の法解釈で出来ることは多い。その辺のアクロバティックなロジックを考えるのはお得意の官僚任せにすれば済む話。それでも不可能ならもともとやるべきでは無い。

 自民党憲法改正草案も読んだが明らかに改悪であり、自衛隊を軍隊とする以外に余計な改変・削除が多過ぎる。憲法改正に賛成と言っている連中は本当にあれを現行憲法と比較して精査したのだろうか。改正するにしてもあまりに改正内容が多いものは受け入れられない。文章表現もいちいち幼稚な愛国心(自称)が透けて見えるもので、昔の政治家のほうが賢かったんだなと思わされる。

 憲法改正の最終段階では国民投票が必要になる訳だが、そんなものやっても無駄なのでそれにかかる費用を別の場所に回すべき。回す所が無いなら減税しろ。