河野太郎氏の発言がまた物議を醸している。税や社会保険料など所得に関するデータを国が一元的に管理する「デジタルセーフティネット」なるものを作りたいらしい。
(記事題:河野氏「デジタル支援網」提唱 総裁選、所得データ管理)
マイナンバーカード所有者の個人向けサイト「マイナポータル」を活用し、国民の所得データを把握しやすくする。河野氏は「移行期間を経たうえで年末調整を廃止して、すべての国民に確定申告してもらう(上の記事より一部抜粋)
とも発信しており、特に「年末調整を廃止してすべての国民に確定申告してもらう」の部分が注目を集めた。
名前だけで誤魔化せると思うな
まず「デジタルセーフティネット」という名前がいやらしい。「セーフティネット」と言えば何となく良いものだと国民が”理解”してくれるとでも思っているのだろう。何かと言えば「国民の誤解を招いた」などと責任転嫁する分際で、こういうところでは堂々と国民の誤解を狙いに来る。性格悪すぎ。
確かに国が国民の所得を一元的に把握すれば、所得に応じた支援なども確かにやりやすくはなるだろう。しかしそれはあくまで1側面に過ぎず、実態は課税強化のための下ごしらえでしかない。だからこそ国民全員に確定申告させる、などというバカげた話が出て来る。
そうでなくとも金融所得課税の話が出ているように、自民党の中では増税ありきで話が進んでいる。これが非常に気に入らない。歳出削減の努力など微塵もするつもりがないのだ。
(記事題:茂木氏が立候補表明 「増税ゼロで政策推進」 自民総裁選)
茂木氏が「増税ゼロ」と言い出したのが話題にもなっていたが、金融所得課税の話が出た後でこれが出て来たあたり、火消しでは?と思う。茂木氏が総裁選で勝てるイメージも持てないし、党内で増税ゼロやその他の内容について合意が得られている訳でも、得られる可能性も感じない。
政治資金パーティーで得た収入を課税対象とすることや、子育て支援負担金の停止は賛同できるものの、信用ができないしどこまで分かってモノを言っているのか分からない。大体なんだよ増税ゼロって。減税って意地でも言わないのな。あるいはお得意の「社会保険料を引き上げないとは言ってない」か?
世の中「出来る」人間ばかりではない
確定申告に話を戻すと、「税務署がパンクするのでは」という意見が多い。これは一理あると思う。どうせ「電子化とマイナンバー管理を推し進めれば効率化されて税務署がパンクするような事はない」、と高を括っているのだろうが、現実はそんなに甘くない。
電子化するとやり方が分からずに問い合わせる人は出るし、税務署に押しかけて操作方法を教えてくれと言うのも確実に出てくる。セルフレジですら発狂する人間がいるのに、デジタルでの確定申告を全員に強制して何の影響も出ないと思っているなら現実が分かっていない。最近は外国人労動者も増えた訳だが、彼らへのサポートはあるのか?
それで、確定申告出来なければどんなペナルティがあるんですか?追徴課税?適用税率引き上げ?自分たちは税金逃れするくせにな。
そもそも確定申告が必要な人間はそう多くない。現在、確定申告をするべき/した方が良いのは以下の条件にあてはまる人、あるいは医療費控除を受けたい場合など。
- 年収2,000万円を超える場合
- 副業による収入が年20万円以上ある場合
いくらデジタル化で効率化出来るとは言っても、効率化できる以上に処理内容を増やしてしまえばトータルで負荷は増える。デジタル化はあらゆる業務を最小化する魔法ではない。経験談として書けばデジタル化でかえって手間が増える、非効率的になる、新たなリスクが生じることなんかザラにある。コストもかかるし安くもない。
「別に確定申告する必要なんてないのにな」という人にまで確定申告を強制する意義を感じない。政府にとっては税金を取りっぱぐれないために必要なのかも知れないが、税金を取るために一体どこまで余計な金=原資は税金をかけるつもりなのか。
中抜きのための手間増やし
結局はこれをやりたいのだろうな、という感想しか出てこない。デジタル化すると言ってもどこが実際のシステムを作る?どこが運用する?それを懇意にしている業者に中抜き価格でやらせたいのだろ。マイナンバー関連はみんなそう。死にかけの住基ネットで啜れなくなった甘い汁を別の幹に移って啜るだけ。
デジタル庁が1から10まで全部作って見せる、運用まで出来ると言うのであればそうした批判もしづらいが、これまでの経験からしてまずそんな事は有りえない。せいぜい電通だ富士通だNTTだと中抜き大手に依頼して、5次請け6次請けに流れた挙げ句、掛かった費用に比してお粗末が過ぎる制度を作る未来しか見えない。
マイナンバーと税務申告のシステムはほぼ出来上がっている面もあるが、これまでよりずっと多くの人が確定申告をしなければならないとなれば大きなビジネスチャンス。
手間が増えれば他にもビジネスチャンスは広がるもので、確定申告代行サービスは拡大するだろう。インボイス制度導入後は会計ソフトの営業が増えた。テレビでもCMをよく見る。彼らはそういうので大いに儲けているのだろう。それで儲けた金で献金をする。パーティー券を買う。
税理士や会計士、企業が楽になる訳ではない
「年末調整をしなくなれば税理士や会計士、企業が楽になる」、などという意見を見かけたがまったくの的外れである。誰も源泉徴収そのものを止めるとは言っていない。インボイス制度でも税理士や会計士を敵視するような意見があったが余計な手間を増やされて喜ぶ士業などいるのか。儲けているのはどちらかと言えば前述したような会計ソフトなどのメーカー。
むしろ確定申告の依頼が増えることが予想されるので税理士は仕事が増える。それで儲かるかも知れないが国民全員が確定申告しても対応できるほど人数に余裕はないだろう。会計士や企業についても源泉徴収自体は続くのであまり変わらない。年末調整がなくなったからと言って源泉徴収票を出さないで済む訳でもあるまいし、年末調整という1工程が無くなったからって何?年末調整なんか昔からやってるんだから今さら手間でも何でもない。
今は外国人労動者も多い。外国人にまで確定申告をさせるとなるとそっちのサポートで手間が増える。年末調整をする方がマシ。
個人からお金を払って依頼すれば確定申告を代理でしてくれる人もいるようだが、政府として全員に強制すると言われると企業としてもそのような個人間のやりとりに任せる訳にもいかず、サポートは必要になるだろう。それが企業としての、雇う側としての責任。
マイナンバーカードを事実上強制する口実その2
マイナンバーカードはそもそも任意だった筈だが、今や保険証切り替えという形で実質的にマイナンバーカードの作成が強制されている。
これがデジタルセーフティネットとやらで確定申告にも関わって来るとなれば、マイナンバーカードは完全に任意とは言えなくなる。電子での確定申告とマイナンバーカードの使用は必ずセットにしてくる。
膨大な税金を投じておいてそのくせ簡単に偽造され、券面刷新がどうのと言っている分際でどうして安心してマイナンバーなどという制度を使えと言うのか。日本政府のサイバーセキュリティも信用ならない。そもそも日本政府が信用ならないからマイナンバーカードの普及が進まないのではないか。
それでもポイント付与だの保険証だの、あの手この手で無理やり普及させようとしているあたり、何かと国民を管理したがっているのが透けて見える。
憲法改正、緊急事態条項にもその一端は見えており、政府は「緊急事態である」ということを口実として、主権者たる国民に対して管理する側に回りたいと考えている。管理される側はどちらか、主権者はどちらか、手綱を握るのはどちらであるべきか、今一度、愚かな政治家どもに思い知らせなければならない。
「でもお前らは税金払わないよね」
と何かにつけて思う。そのくせ増税、課税強化、所得把握のよる増税の下準備、そんな話ばっかり。
河野太郎は裏金問題に関して返還させると述べているが、追徴課税も含めた納税には触れていない。あくまで同額を返せば良い、それで許されるという立場。自分たちに甘いことに変わりなく、そのような連中が一体どの面さげて国民全員に確定申告しろなどと言うのか。
個人(事業主)の経理関係書類、確定申告書類などの保存期間は5~7年。かたや政治資金収支報告書の保存期間はたった3年である。まず何よりも先にここを是正しろ。デジタルセーフティネット?金融所得課税?最低でも
- 政策活動費の廃止
- 政治資金収支報告書の保存期間10年
- パーティー券購入の1口からの購入者情報公開義務化
- パーティー券で得た政治資金の課税
- 裏金相当額に加えて追徴課税分も含めた額を国庫へ返納
- 会計責任者に関して連座制の導入
くらいやってから言え。でなければお話にならん。憲法改正なんかもこれをやらない内は出すな。