ヤマネコ目線

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「岸田政権は増税していない」に反論する

 X (Twitter)で面白いものを見かけたので。これで何を言わんとするかは察するしか無いが、本当だろうか。

一時的な減税、恒久的な増税

 まず言いたいことは、前政権で決まったことを勘案しないことは卑怯であるということ。安倍、菅、岸田政権と自民党政権は長く続いており、その中で行われて来た政策全体を見るのではなく、「岸田政権の行ってきた税制改正」に限定して論ずることは視野が狭い。あえてそのような方針で書いているのだろうが。

 「岸田政権下で決まった増税は少ない」が事実であるならば、「国内情勢に鑑みず以前から決まっていた増税をそのまま実施している」も事実であろう。インボイス制度はいつから始まった?森林環境税はいつから徴収されるようになった?言ってみろ。

 加えて減税の項目についてもそれぞれの制度の特性、決まった時期を考慮していない。至極表面的で詰めの甘い比較であり、こんなデマ同然の内容がこれだけ拡散されていることに恐怖さえ覚える。「etc.」って何だよ。画像まで作るんだったら全部書けよ。ツッコミ入れられないじゃん。

 上の画像、ツッコミやすい所から言うと定額減税。所得税と住民税の減税が行われるのは今年1度限りである。制度として恒久的に負担を強いる増税と1度限りの減税を単純比較することは明らかに誤り。特に所得税と住民税の減税については言いたいことがある。というか前に書いた。

manuller416.hatenablog.com

 ビール酒税に至っては酒税法改正されたのが2018年安倍氏が総理大臣だった頃。その時点で2026年にかけて段階的に酒税を変更することが決まっている。あれ?過去の減税は表に含めるのに増税は含めないんだ?都合が良いね。

smbiz.asahi.com

 上のサイトを見れば分かる通り税率が上がるもの、下がるものがあって一概に減税か増税かは分かりづらい。ぶっちゃけ普段、飲んでいるものによる。

 なお、ビールの酒税は引き下げである一方で発泡酒および新ジャンル*1の酒税については引き上げである。下の記事、2019年までしかデータが無いがこの時点で[ ビール ] と [ 新ジャンル+発泡酒の量]  が拮抗しつつあり、ビールとしてトータルで見れば減税とも増税とも判別しがたい。

mainichi.jp

 そもそも酒税がどうなろうが酒を飲まない人間からすれば関係無いのだが。税制改正の背景は酒の種類による税負担の公平性見直しというものであり、減税によって国民の負担を減らすという意図で行われたものでは無いことも留意すべき。

 所得拡大促進税制は中小企業を対象として賃上げを促進するものであり、減税政策というよりは経済政策の一環としての性格が強い。決して無意味な訳ではないと思うが、賃上げによって税制上の優遇を受けられるのはあくまで法人である。間接的なメリットはあるものの、要件に該当しない企業や賃上げが出来ない(しない)企業の従業員には恩恵が無い。

www.smash-keiei.com

 ガソリン補助金についても減税とは言い難い。厳密に区分するならば補助金と減税は異なるのはさておき、意味不明な理屈*2でトリガー条項の凍結解除をしないという問題を無視している。以前から指摘されている二重課税についても改められていない。これらを放置して補助金という形式で国費を投じる非合理的な姿勢はむしろ批判されるべきだ。無駄に金を取って無駄な形でばら撒く最悪の手法。

www.wjsm.co.jp

 住宅ローン減税の延長は岸田政権下で決まったことだが、住宅ローンが無関係である人には何らメリットが無い。というのはさておき住宅ローン減税の延長が決まった背景は経済政策として住宅への投資や支出を拡大させるため、可処分所得を増やして内需を回復させるため。環境対策としてより環境にやさしい新しい住宅を増やすため。減税による負担軽減と可処分所得を増やすということは表裏一体ではあるが、対象者は限定的でその効果が広範に及ぶとは言えない。

 冒頭に貼った画像で「減税」の欄に入っているものはいずれも期間や対象者が限定的であり、改正に至った内容も減税が主眼とは言い難い。これで「岸田政権は増税よりも減税しているんです」と言われても納得は出来ない。「社会保険料の引き上げ」は「増税」では無いのでセーフか。「復興特別所得税を防衛費に回したい」などと抜かしてたのも忘れたか。

 直近では配偶者控除の廃止金融所得に応じた社会保険料の負担増などという話も出ている。控除の廃止は「増税」では無いのでセーフ?「自己責任で投資して所得を増やして」などと煽るだけ煽って儲かったら「はい社会保険料いただきま~す」も「増税」では無いのでセーフ?それを是認する国民は一体誰の味方なのか。

 国民負担率が下がっているというデータもあるようだが、スタグフレーションに陥っており物価高に苦しむ中では下げない方がおかしい。下げて当然。それでも正しい方法で下げているとは言いかねるのが現政権である。意地でも消費減税しない、インボイス制度も止めない。減税するにしても定額減税のような面倒で複雑な手間のかかる手法を取り、累進課税である所得税を減らす。

 政策にしても「異次元の少子化対策」だの「防衛費倍増」だのと明らかに増税前提の内容で進んでおり、これから先、減税よりも増税が行われるであろうことは火を見るより明らか。無理のあるポンチ絵で「岸田政権は減税している」「減税メガネ」などと言ってのける人々は愚かな逆張り人間か、自民党ネットサポーターズクラブかのどちらかでは無いだろうか。そう解釈しないとそんなことを言ってのける神経が分からん。

 消費減税しない内から「減税メガネ」なんて呼ばせないぞ

生前贈与の増税

 生前贈与における増税は加算対象が過去3年→7年へ伸びることで、課税対象額が増えるので増税になるという理屈。しかしこれも生前贈与が無関係ならば関係無い話であるし、相続税の抜け穴を塞ぐ意義があるため決して嫌な意味での増税では無い。そもそも取り過ぎな所で抜け穴塞ぎに来るのはいやらしい感じがするが。

souzoku.asahi.com

余談:オリジナルグッズ

 気が向いたら勝ってください。私が喜びます。文字は自分で書きました。上司の前でこれ見よがしに着るもよし。何かの集まりで着るもよし。配偶者に対する当てつけで着るのはやめてください。相手が可哀想です。その他いかなる不利益が生じても自己責任で。

suzuri.jp

*1:=第三のビール

*2:「ガソリンの買い控えや流通の混乱が起こる」