ヤマネコ目線

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投資を煽った政府、マスコミの罪

 自民党は投資で資産所得倍増などと煽っておきながら、さっそく金融所得に応じて社会保険料を引き上げると言い出した。

nordot.app

(記事題:金融所得で保険料増を検討 医療介護、不公平見直し)

 どうせそんな事だろうと思っていたが、投資熱が高まって来たあたりで株安に加えてこのような話で冷水を浴びせるあたり、やはり愚かなんだなと思う。企業に賃上げ要請をする傍らで増税社会保険料の引き上げをするようにアクセルとブレーキを同時に踏むのが得意技なのだ。それで経済が停滞し、東南アジアにすら「物価の安い国」と思われるようになってなお1980年代のような感覚でいる。救いようが無い。

 配当金も対象と記載があるが、配当金からは所得税・住民税が引かれる。これに対して社会保険料を取るというのは実質的な二重課税ではないか。もとより重税で手取りが上がらない中でなけなしのお金で投資をしているのに、その投資で、自己責任で儲けた分からさえ利益をかすめ取ろうという自民党の搾取根性には心底うんざりさせられる。

今ごろ株式投資を始めるのは分が悪い

 正直もう少し早くこの内容を書くべきだったかも知れないが、政府やマスコミに煽られて今から投資を始めるのは非常に分が悪い。理由は大きく3つ。

 まず一番明白なのは日経平均実体経済が伴っていない」こと。今の日本でGoogleNVIDIAに並ぶような世界的企業が登場、成長する見込みは無い。投資したいと思える企業が存在しない。本来、政府はそのような企業が育つような土壌を作るべきである所、それを放棄している。景気が回復しているような感覚などスタグフレーションもあって安倍政権時よりも薄い。

 「そんな事言ったって日経平均は上がり続けて来たじゃないか」という声もあるだろうが、「日経平均が上がっているから景気が回復している」などと言うのはもはや手垢のついた嘘。株価と経済は明らかに乖離しており実質賃金は23ヶ月マイナス。景気回復の実感など一部の政治家が見ている幻影に過ぎない。

 そんな実態を伴わない株価が過去最高の値をつけた後はどうなるか。本当に経済成長しているならそこから伸びる余地もあるだろう。しかしそうでは無い以上、後は下り坂しか無い。山の頂上まで登ったら後は下るだけだ。そこで投資をしても損にしかならない。

 加えて、政府やマスコミに煽られてろくな現状判断もせず投資を始めてしまうような「ド素人投資家の増加」市場を不安定化させる。株価が買値よりも下がってしまうと含み損となってストレスになるのは理解できるとして、そこでド素人はそれ以上の損害が出ることを恐れて損切りしてしまう。大勢のド素人がちょっと株価が下がっただけでビビって売りに走れば、それによって余計に株価が下がってしまう。からの、予想以上に下げたからまたそれでビビって売る奴が出る悪循環。

news.tv-asahi.co.jp

(記事題:株価大幅下落で新NISA「損切り民」が続出?)

 これのタチが悪いのは止めようが無いこと。国民全員の金融リテラシーが高ければ、理由あっての多少の下げ*1くらいで動じることは無いと思われる。しかし現実はそうでは無い。「周囲がやっているから」程度で始めて右も左も分からず、損をするのが嫌だからとすぐ逃げるような本当にドのつく素人が増えてしまえば混乱が生まれるのは必然、かつ数が多すぎて制御不能。止められない。政府やマスコミはこれも承知の上で投資を煽っている。

 日本人は自己責任論が大好きだが、時期の悪さや金融リテラシーの低さを承知で投資を煽った政府、マスコミには大きな非がある。無謀、分が悪い賭けであることを分かっていながら、その実態を知らせず煽るだけ煽り、平気で国民に損害を与える姿勢は太平洋戦争における政府、マスコミの愚行に近い。経済は命ではなく金を奪い合う戦争であり、その点において両者のやっていることは戦前・戦時中から何ら変わっていない。戦局我ガ軍ニ有利?我ラハ連勝ニ継グ連勝ヲ続ケテオリマス?冗談じゃない。

 また、止まらない円安とこの先のリスクも投資を始めるハードルになり得る。国内株式市場を見限って米国株を始めようと思っても円が安すぎるのでドルの調達時点で高掴み。名の知れた米国株は既に初心者が手を出すにはあまりに高くなっているので非常に手を出しづらい。私は数年前に投資用資金を全てドルに替えておいたのだが、それだけは自分を褒めてやりたい。何なら貯金もドル建てでやろうか迷っている。

 ちなみに謎の半導体企業NVIDIAの2024年4月26日時点の株価は826.32USD株約13万円。投資初心者なら下手すれば1株すら買えない。100株買えば1,300万円。

 それはさておき、今は円安だがトランプ元大統領はこれを歓迎していない。もし大統領に返り咲いた場合は是正すると明言している。実際どうやって是正するのか、実際に円高になる可能性はあるのかはともかく、もし今、円安のうちに無理してドルを買って投資をして、後で円高ドル安に振れたら?資金調達の面では相対的に損をすることになる。「円高になってからドルを買えば良かった」と後悔する。

 それも今年はアメリカ大統領選挙がある年なので、それ自体も株式市場にとっては大きな不安定要素。このところ日本の株式市場はアメリカの経済情勢に引っ張られる傾向があるので、米国株に手を出さないからと言って無関係な訳でも無い。市場が落ち着くまで様子を見た方が良いのでは。

そもそも論として

 自民党が抜かす「手取りが上がらないなら代わりに投資で儲けてください」があまりに無理のある話。手取りを上げる政策を取れば多くの人々が恩恵を受けられる。その確度は株で儲けられる可能性よりずっと高い。その道を放棄し、国民を欺いてあえてリスクの高い道へ誘導している現状は主権者に対する反逆に等しい。

 少子化の原因は格差拡大、中流階級の減少である。政府は中流階級を国として増やす方向に舵を切らなければならない。その観点からしても「投資で資産所得倍増」などという意味不明な戯言は無意味どころ害悪。現役世代は今、すぐ使えるお金が欲しい。今の年収を増やしたい。手取りを増やしたい。しかし株式投資ですぐに利益を出せるような人間は一握り。ひょっとすればそもそもお金に困っていないレベル。

 デイトレーダーでも無い限り、株式投資でそれなりに儲けようと思えば年単位の時間がかかる。「NVIDIAを400万円で買って10年持っていた人が今は億を超えている」などという話は確かに夢があるが、裏を返せば成長する企業の株を10年先を見越して持ち続けないとそこまでの成功は出来ない。100万200万動かして10万20万儲けて、それで手取りの足しになるか。年収の足しになるか。全くもってバカバカしい。それで足しになるなら元からお金に困っていない。

 それでも儲かるなら良い方で、含み損にビビって損切りしてそのまま終わりという人もいるだろう。どのみち社会保険料を上げるなどと言い出した以上、投資熱は冷めて終わる。終わりにしよう。自民党政権も何もかも。戦犯は吊らなければならない。

 

*1:年度始めの益出し売りによる下げ等