JNN世論調査によると岸田政権の支持率は38%で、物価高騰対策への「評価する」は52%らしい。調査対象や手法に問題があるとしか思えないのだが、それはともかくとして、改めて岸田政権に対する評価を見つめ直す必要もあるだろう。
止まらない円安
物価高騰、燃料費高騰で言えばその原因は止まらない円安なのだが、これは岸田総理だけが悪い訳ではなく、安倍元総理が経済政策アベノミクスの一環として始めたマイナス金利政策、イールドカーブ・コントロールに端を発している。アメリカが利上げを続ける一方で日銀は利上げどころかマイナス金利なので円安傾向に振れ続ける。
円安誘導によって物価上昇率2%を実現し、デフレを脱却することがアベノミクスの狙いの1つであったと言えるが、これが実際の賃金上昇に追いつかずスタグフレーションと化し、なおかつ円安傾向が止められない、金融緩和の出口戦略が見えなくなっている。日銀は為替介入をたびたび行っているがマーケットからは為替介入の限界を見透かされている。私のような素人でもそんな手法に限界があることは理解できる。
こうした状況に政府としてどのような対処をしていくのか。日銀に何兆円もの外貨準備高をつかって為替介入をさせる一方で、物価高騰対策として国債依存で29兆円もの予算を組んでいる。それ以外でもあまりにムダの多い予算で毎年のように”過去最大”の予算編成をしながら、効果がろくに見込めない政策で国の借金ばかり増やしている。
この点、岸田総理は安倍政権、菅政権と何ら大差なくアベノミクスの延長線を惰性で走っている。悪化する状況に対して積極的に何かしらの対応をする姿勢が無い。日銀が利上げに踏み切った場合の影響を考えれば下手な利上げは出来ない、かと言って円高に誘導する手段は為替介入くらいしかなく、物価高騰対策は補助金なり給付金なりででもしなければそれはそれで国民から不満が出る、という八方塞がり感は少々同情するが、そこで何か別の手は打てないのか。特に減税。野党にこれを解決できる人材がいるかと言われればそれも怪しいものだが・・・。
為替介入で言えば、それに必要となる外貨準備高を日本がかつて景気が良かった頃の感覚で、諸外国に支援という形で大盤振る舞いしているのは非常に気になる。これも前々から続いて来たことではあるがそんな余裕があるのか。国民には増税・社会保険料引き上げで負担を増やす一方、海外には手厚い支援をしてみせる、財布が別とはいえ腹も立つというもの。
物価高騰対策
2022年3月あたりに年金生活者に5,000円を給付する案が出て批判を浴びた。結局中止になったと思うが、支給対象を年金生活者に限定するのであればなぜ年金給付額の引き上げではなく”給付金”なのか。GPIFは黒字ではないのか。そもそも生活が苦しいのは年金生活者だけでもない。
2022年6月には肥料価格高騰が農家を直撃との報道がある。畜産の飼料その他何もかもが円安で高騰し、政府はそうした動きに対して新たな補助金などを創設で対応している。その予算は国債や税金であり、給付事業ではパソナのような企業に中抜きさせるのでムダが多過ぎる。「借金して火の車、自転車経営」などという言葉が可愛く見えるほど政府行政の運営が酷い。とにかく何でもかんでも補助金、給付金。事務的な手間がかかることをあえて選び、減税はしない。
直近で言えばガソリン価格高騰においてはトリガー条項を相変わらず凍結したままである。政治家は「トリガー条項で物流が混乱する」だの「ガソリンの買い控えが起こる」だのと言うが、昨年、2022年4月26日には燃料費高騰に関する記事が出ている。そこから今までの間、一体何をしていたのか。市場メカニズムがどうのと言うのであれば、その影響が少ないような施策を考えるのが仕事ではないのか。買い控えに至ってはまったくもって意味不明。ガソリンのような危険物は一般家庭で備蓄しようにもそうそう出来るものではない。財務大臣はバカでもなれるらしい。今すぐ辞めさせるべき。
経済政策
前述したようにアベノミクスの延長線を惰性で走っているのが基本だが、そこから「投資所得倍増」などとバカげたことを言い出した点で更に印象が悪い。誰もが投資で成功できる訳ではないし、スタグフレーションの中で投資に回せるような余剰資金があるのは比較的恵まれた人間だけ。政府が「自己責任で投資して資産増やしてね」というのは格差拡大政策でしかない。
そしてどのような形であれ減税は絶対しない、インボイス制度という実質的な消費増税で逆進課税を上げる。実質賃金が下がるのは指をくわえて見ているだけ。政府がするべき格差是正の使命を放棄している。「成長と分配」などどこにあるのか。岸田総理はかつて「財務省の言う通りにするつもりは無い」と言っていたが、ではなぜあのような悪法を今、このご時世で実施するのか。
インボイス制度については何回か書いているのでそちらを。税金をみっちり取るために手間ばっかり増やされて経理としては本当に腹が立つ。
少子化対策
岸田政権における少子化対策は、今までの効果の無い政策と方針が変わっていない。ただ金額を大きくしようというだけ。「聞く力」だとか言っていたがまったくもって現実に即していない。「結婚できる」前提、「子どもを作る」前提での少子化対策で何とかなる時代はとっくに終わっているのだが、出てくるのはそうした今さら感しかない政策ばかり。給付金だクーポンだで子どもなど増える訳が無い。給付型奨学金拡充も"世帯"年収600万が上限?理工農学系か子ども3人以上世帯限定?笑かすなや。
そもそも「こども家庭庁」という組織自体がムダ。解体すべき。創設は菅政権時代なので一概に岸田総理に非がある訳ではないし、解体しようにも菅総理のメンツもあるのでそうそう出来ないのだろう。が、解体どころか「こども予算倍増」などと言って、ムダな役所と検討/見当違いの少子化対策のためにさらに予算を増やす・社会保険料を引き上げると言い出した。この点においても評価に値しない。
安全保障
安全保障は自民党の唯一の牙城というか、野党がこれに弱すぎるから自民党には勝てない感がある。岸田政権においてもおおよその方向性は正しいように思う。ただし、経済が円安とスタグフレーションによって疲弊している中でただでさえムダに取り過ぎている税金を防衛のためという大義の下、さらに増やそうという方針は許しがたい。円安の放置・加速は海外からの武器調達の負担をより重くしている。
少子化の加速度といい、このまま経済とのバランスを欠いた政策を続ければ防衛どころか守るべき国が無くなっていく。経済と安全保障は両輪であるということを理解していない。中国の脅威は確かに増しているが、利害が一致しておりオトモダチ予算もあるのだから、もっとアメリカに頼ることもすべき。
F-35やトマホーク、JASSMの購入などは特に間違っているとは思わない。いわゆるサヨクはそうした部分を批判することが多いが、私が気になるのはむしろ国産兵器の研究・開発・調達。日本の防衛産業の環境では本当に膨大な金がかかる。分不相応な研究開発を目指していないかが心配*1。それらのコストを抑えるための武器輸出の方針は文句ない。量産できなければユニットコストは高くなる。10式戦車(約44t)は「同重量の金と等価」とさえ言われる。
野党やエセ平和主義者のいう「兵器買うな開発もするな」は論外。費用面だけで考えればアメリカから買うのが最善。
最近で言えばNTTの株式売却の話を止めようとしないのが気になる。是認するようであれば何も分かっていない。最低最悪。
旧統一教会問題
自民党自体の問題という面も大きいが、積極的に解決しようという姿勢が無い。関係があったとされる政治家、特に萩生田光一は閣僚に居座っている。それを許している時点で評価に値しない。山際大志郎にいたっては旧統一教会問題で更迭されたわずか4日後に自民党のコロナ対策本部長に就任している。
旧統一教会問題への対応、反カルト政策や被害者救済への取り組みは不十分というほか無く、最近になってようやく文科省が解散命令を出すという風を出して来たが、それまでに旧統一教会が資産を韓国へ引き上げる猶予を与えてしまっている。
安倍総理の国葬
自民党の問題という向きが強く国葬自体は仕方無かったにせよ、わずか2日の入札期間で「桜を見る会」の実施業者に受注させ、予算が当初の2.5億円から16億円超に膨らんだことは問題である。その金額もなかなか明かそうとしなかった。安倍政権から政府の情報に対する透明性が欠如しており、改善しようという意思も見られない。誤魔化せばいい、バレなければいい、そんなのばっかり。これが「美しい国」ですか、安倍さん。
サラリーマン増税
サラリーマン増税は岸田総理が言い出した訳ではなく、政府税制調査会(自民党の税制調査会とはまた異なる)が言い出した話。ではあるが、岸田政権が打ち出した”こども予算倍増”、”防衛費増額”が背景にあることは確かである。SNSで「増税メガネ」なるあだ名をつけられても致し方ない。今ある歳出からムダを洗い出して、それこそ庶民のように1円2円でも気にしてムダを削ってそれでもどうしても足りないので、というような姿勢が無い。旧民主党政権ではないが、歳出に占めるムダの多さに無頓着過ぎる。そればかりか率先してムダを増やしているようにさえ見える。それで「足りないから増税」などもってのほか。
半導体産業支援
ラピダスを国をあげて支援するというのは非常に今さら感が強いが、やらないよりはマシとは思う。ただ今すぐ評価することは難しく、ジャパンディスプレイの二の舞いにならないことを祈るばかり。ただ、これはこれで岸田総理から強く打ち出されたという感じもしない。経済産業省と業界が盛り上がってそれを是認、支援する方針を固めたという感じ。評価できなくも無いがしづらい。
その他
基本的なスタンスとして、岸田総理には様々な問題に対する積極性が感じられない。防衛と少子化対策こそそれなりの方針を打ち出たが、マイナ保険証や旧統一教会問題といった足元の問題に対しては担当大臣、省庁に任せるだけで特段、強く指示することが無い。経済政策も引き継いだだけで「後は自己責任で投資でもしろ」。トップが強い決断を下さないので下はなあなあで済ませ続ける。責任を問われた大臣をむしろ擁護さえして辞めさようとしない。責任はいつから「重く受け止める」とか「感じる」ものになったのか。
長男を首相秘書に任命したのも間違い。世襲に対する批判がある中で自分の息子を起用し、結果として年末の官邸でバカ騒ぎして顰蹙を買った。あんなのが次世代の政治家など冗談じゃない。それでもまだ本人は政治に関わり続けるつもりなようで呆れる。感覚が決定的にズレている。
つい先日は内閣感染症危機管理統括庁なる覚えづらい役所の創設が報じられた。いちいち何かしらの役所を作らないと仕事が出来ないのか。ムダに予算を使うための行為にしか感じられない。年1くらいで余計な組織とそのための予算を作られていてはたまったものでは無い。
庶民が1円10円を気にして生活する中で世界的に見ても高い議員報酬をもらい、それとは別に文書交通費だと月100万もらい、ボーナスだと200万以上もらい、議員宿舎の家賃は値下げさせ、少子化対策だ何だと言ってお友達企業に中抜きさせながら借金ばかり作って億円兆円単位で税金をムダにし、諸外国には昔の日本の感覚で手厚い支援を施してはいい顔をする。良い仕事ですね、政治家というのは。
憲法改正?論外 of 論外。政治家も国民も論ずる器に非ず
*1:特にレールガン