9,000人から850億円を集めた投資会社が破産したのがニュースだった。政府をあげて投資ブームを作っているが良い話ばかりではない。
(記事題:9000人から850億円集めた投資会社破産 被害者、生活の窮状訴える)
素人投資家と書いて「ようぶん」と読む
この記事に記載があるが、この投資会社は「元本保証、月利3%」を謳って金を集めていたという。もうこの時点で分かる人はおかしいと察するレベル。「元本保証」とは「預けてもらったお金はいつでも返せると保証します」という話で、投資において言い換えれば「絶対に儲かります」と言っているに等しい。信用するに値しない。
金融商品取引法第39条には以下のようにある。
ごく簡単に言い換えれば「金融商品を扱う業者は、金融商品の取引で出た損失の一部あるいは全てを保証する約束をしてはいけませんよ」という話で、元本保証を謳って資金を集める時点で法令違反である。まともな会社なら金融商品を勧める時に元本保証しますなんて自分から言わないし、客から求められても「無理です」と答える。違法なんだから。
8,700万円も投資した人間がいるようだが、「そこまで金を突っ込むのにこんな基本的なことを知らないのはそいつが悪い」とさえ思えるレベル。あるいは業者に「実は元本保証で投資できる方法があるんですよ」と甘い言葉で誘われ、魔が差してライフハック感覚でちょっと法の抜け穴を突いて投資した気になりたかったか。そんな抜け穴はありません。
また、「月利3%」という数字もきちんと調べると非現実的。以下の記事によれば投資の神様とも言われるウォーレン・バフェット氏の投資会社、バークシャー・ハサウェイの年利は19.8%*1。
「月利3%」を年利に換算すると12ヶ月分で年利36%でバフェット氏の投資会社の2倍近くになる。投資の神様で年利20%前後なのでそれを超える利率はまず怪しいと判断するべき。
どこの馬の骨とも分からない日本の投資会社が、投資の神様と呼ばれるバフェット氏の投資会社のさらに上を行ける訳がない。そこら辺のおじさんが「俺、今から体操の選手になってオリンピック出るねん」と言ってるレベル。そうした基準というか相場を知らないと損をする。
なお、預金については1つの金融機関につき1,000万円まで+利息分が預金保険制度によって保証されている。元本保証と言えば元本保証だが、金融商品を扱うために預けている訳ではないので問題ない。逆に言えば普通の預金でも1,000万円を超える分については保証されていないとも言える。
一番悪いのは騙す人間なのだが、今の世の中はどんどん殺伐として来ている。「情報弱者は騙して搾取するもの」という認識が当たり前になりつつあり、最低でも何をすると違法になるのか、どの程度が相場なのかは知っておかないとどんな目に遭うか分からない。
今日も東証職員のインサイダー取引に関するニュースがあったが、立場によってもしてはいけない事が変わる。禁止事項は以下のサイトが詳しいのでそちらを参照して欲しい。
養分にならないために
投資に関して個人的に気をつけている事、心に留めていることは
- 焦って判断をしない(果報は寝て待て)
- 他人に任せない
- 向こうから歩いて来る儲け話は全て詐欺
まず何事も焦って判断してはならない。特に株式投資においてはデイトレーダーでも無いなら日々の増減を見て一喜一憂するのは無駄。上がると見込んだら5年、10年握り続ける覚悟で買う。株式投資は成果が出るまでにかなり時間がかかるので、すぐにお金が欲しいという人には向かないと思う。
「他人に任せない」というのは投資信託など、資金を預けて運用してもらうという考えを完全に捨てるということ。自分で情勢を見て考えて売り買いするのが楽しいし、その結果として損が出てもそれは自分の判断の結果なので納得できる。もちろんどの銘柄が良いのか、どんな理由で上がっているか/上がる見込みがあるのかも調べる。
誰かに預けて運用してもらうと損が出た時に納得出来ないし、エクシアのような詐欺にあう可能性も高い。ウェルスナビとか何が楽しくて使ってるのと思う。毎日の増減が気になり過ぎる人はそれの方が精神衛生的に良いのかも知れないが。
まあ、慣れるまでは1日の増減で一喜一憂しがちなのは分かる。少なくとも投資プラットフォームは大手を使うのがいい。
3は基本中の基本。言うまでもない。本当にうまい儲け話は他人に教えたりしない。広義で言えば日本政府が投資を勧めるのもこれに入る。安直に政府が勧めるからと投資を始めると、この前のような株安が来て精神的に大きく揺さぶられることになる。そもそも日経平均が過去最高値をつけているような時期に投資を勧めるのが悪どい。ここから更に伸びしろがあるとも思えないし、株で「儲けた」と言えるほど利益を出すには時間がかかる。「投資で資産所得倍増」なんて何年ベースの話をしているのか。その頃には皆、老人よ。今、金が無いから困ってるのに。
あと日本株は買わない。日経平均が上がってるのはマネーゲームの結果であって実態が伴っていないから。ユニコーン企業なんて言うが将来ビッグになる企業が本当に予測出来るなら誰も投資で苦労なんかしない。だったらアメリカの有名どころを買った方がマシ。インドと中国は知らん。
本当に悪い奴らは法律をよく知っている
「本当のワルは『強』のつく犯罪はしない」という記事を見かけたがあれは一理あって、本当の悪というのは法律をよく知っている。法律を知ってどこまでなら許されるか、あるいは刑罰を受けてもどこまでなら許容できるか、という損得勘定が出来なければ変な言い方になるがちゃんとした犯罪は出来ないからだ。「ミナミの帝王」なんかを見ればそれは面白く理解できる。
政治家なんかもその一例だ。彼らは立法まで出来る立場なのでよりタチが悪い。どこまでなら責任を誰かになすりつけられるか、どこまでなら言い訳して逃げ切れるかを考えているのはもちろん、本来なら許されないレベルのことを合法化している。裏金問題も批判はあれど会計責任者に全責任をなすりつけて軽い処分で済ませてしまった。そればかりか非公認とした議員に政党助成金まで支給している。どこまでも汚い奴ら。
(記事題:自民、非公認議員に政党助成金2000万円を支給 「支部の活動費」)
政治資金規正法関連も都合の良いように甘く設定されている。政治資金収支報告書の保存期間はたったの3年。以下の記事にある選挙運動費用収支報告書も保存期間はたったの3年。
一般的に個人事業主や企業の経理資料の保存期間は7年である。赤字企業で10年。政治に関する収支報告書も保存期間を最低でも10年にすべき。
政策活動費の使途公開を10年後に、なんて話があったがそもそも収支報告書の保存期間が短すぎるので、10年後には「保存期間を過ぎていたのでとっくに捨てました」と言い出すのが見えている。
前にも書いたが裏金が税金と無関係という判定もおかしい。政治資金パーティーは政治団体しか開けない。そこで得られた収入を政治資金収支報告書に記載せず、あまつさえ議員個人へ還元していた(=キックバック)のだから、それは政治家個人の収入であって課税されるべきである。正常に処理されたパーティー券収入と同等ではない。
話が逸れたがこれとは対照的に法律を知らず、何となくのイメージでしか物事を考えられない素人はその加減を間違えて重い犯罪をし、相応の罰を受ける。今流行りの?闇バイトなんかはその典型であって、無知ゆえに強盗のような割にあわない犯罪に手を出してしまう。あれはそもそも募集段階で見抜けないのも問題なのだが。
先に書いた「強のつく犯罪」とは強盗と強姦のこと。強要罪は入っていないというか刑が軽い。もちろんこれ以外ならやって良いという訳でもないし、これ以外にも場合によっては重い罰が下されることはあるのだが。
ちなみに身近なもので言えば、あおり運転は一発で免許取消処分の上で懲役または罰金が課されるし、マイナスドライバーを正当な理由なく持ち歩いていると現行犯逮捕される場合がある。プラスドライバーはセーフ。
余談:死刑になり得る犯罪
一般的に死刑になり得る刑罰は以下の通り。参考)
死刑になる犯罪は18種類|主な罪名と死刑執行までの流れ|ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)
- 内乱罪
- 外患誘致罪
- 外患援助罪
- 現住建造物放火罪
- 激発物破裂罪
- 現住建造物等浸害罪
- 汽車転覆等致死罪
- 水道毒物等混入致死罪
- 殺人罪
- 組織的な殺人等
- 人質殺害罪
- 決闘殺人罪
- 強盗致死罪
- 強盗強制性交等致死罪
- 爆発物使用罪
- 航空機強手等致死罪
- 航空機墜落等致死罪
- 海賊行為致死罪
2の外患誘致罪はネット右翼が好んで持ち出す罪名だが、内容としては「外国と共謀して武力行使を誘発させる行為」を指すのでおいそれと適用できるものでもない。これが適用される事態になった時=他国と交戦状態に陥った時。
よく知られているように外患誘致罪の法定刑は死刑のみであり、これを好んでつかうのは間接的に「お前、死刑」と言って喜んでいるに過ぎない。言いたくなる奴は確かにいるが・・・
似た罪名の外患援助罪は外国からの武力行使に協力して日本を攻撃した場合の罪。意外にもこれは「死刑または無期もしくは2年以上の懲役」と結構な幅がある。
4の現住建造物等放火罪は、人が住んでいる or 人がいる建物に放火した場合の罪。6の現住建造物等浸害罪は意図して水没させるなどして害を与えた場合。いずれも電車や船、坑道を含む。人がいない場合は非住建造物等放火 / 浸害罪が適用される。
5と15、激発物破裂罪と爆発物使用罪はかなり似ているが、激発物破裂罪は建物を破壊する目的=放火罪などに近い場合。爆発物使用罪は治安を乱す目的や人に対して使用した場合に適用されるらしい。実際、どちらが適用されるかはケースによるだろう。
9~12はいずれも殺人に関する罪だが定義されている法律および刑罰が違う。殺人罪/決闘殺人罪であれば「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」、組織的な殺人であれば「死刑または無期もしくは6年以上の懲役」、人質殺害罪は「死刑もしくは無期懲役」。場合によるが人質を殺害するのが一番重い。
なお、ヤンキー(系創作作品)が大好きなタイマンは決闘罪にあたる。法令自体がかなり古いので読みづらい。
「殺人罪」と「致死罪」の違いは前者が意図して人を死に至らしめた場合。後者は意図せず死に至らしめてしまった場合も含む。たとえば強盗に入り、被害者があまりの恐怖から心臓発作で亡くなった場合なんかも含まれる。
直近で言えば以下の事件がそれに当たる。
この事件では強盗に入った3人が高齢女性を窒息死させたが、弁護側は女性の持病悪化が死亡の原因で3人に殺意は無かったと主張していた。しかしながら強盗致死罪に問われているので殺意の有無は問題にされず、一審の懲役27年が無期懲役になった。
「意図せず死なせてしまった場合でも」という点においては殺人罪より~致死罪の方が犯罪をする側にとってはリスキーと言える。そもそも強盗に入った上で死者まで出しているので当然ながら殺人罪よりも重い。
うちも監視カメラくらい付けた方が良いのかな・・・盗られるほどの財も無いんだが嫌な時代だ。ありがとう自民党、日本をここまで凋落させてくれて。民主党政権が悪夢なら自民党政権は煉獄だ。
*1:1965~2023年末までのおそらく平均