ヤマネコ目線

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オスプレイの安全性と使用される理由

 オスプレイが墜落事故を起こしたことで、マスコミや一部の人間が大はしゃぎしている。日本政府は飛行自粛を要請したらしいが、アメリカ軍は飛行停止に応じていない。最低でも1日くらいは飛行を停止して総点検くらいはするべきだと思うが、日本政府は立場が弱い。というかハッキリと伝えたのだろうか。遠慮というか忖度して飛行を一時的にでも停止して欲しい旨、明確に伝えなかったからアメリ国防省から「正式な要請は受けていない」などと言われるのでは。

 下の記事は元朝日新聞記者、ハフィントンポスト・ジャパン元編集長の高橋氏が書いたもので、データの見方や解釈がオスプレイに否定的。これに限らずオスプレイに関する記事はそれに肯定的か否定的かで評価が変わるように思う。

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(記事題|オスプレイの事故率は本当に低いのか 米軍の最新データで読み解く: 高橋浩祐)

「不時着水」か「墜落」か

 当初、副防衛大臣が今回の事故を「不時着水」と表現し、後に「墜落」に修正した。当初の発言は明らかに誤りである。「不時着」と「墜落」の違いは難しい問題だが、「墜落」は完全に制御を失って地面や水面に激突すること。「不時着」は故障等の緊急事態に対応するため行われる予定外の着陸/水。今回の事故は当初出た目撃証言からしても制御を完全に失っており、墜落と言わざるを得ない。正直こんな話は言葉遊び感が強く、落ちた事実に変わりは無いのだが印象に紐づいて来るので大事と言えば大事か。

 副防衛大臣の言いようでは「最後までパイロットが頑張って制御しようと努力していたから”不時着水”」、といった感じだったがそんな精神論は必要無い。米軍の伝書鳩と揶揄されても仕方ないだろう。

オスプレイとは

 MV-22やCV-22と言う型番があって紛らわしいが、もともとV-22というベースとなる機体があり、海兵隊で運用されるものがM(マリーン)V-22、空軍で運用されるものがCV-22で機体の基本的な構造は共通している。Cはおそらく輸送機のC(Carrier)。実際の運用はおそらく輸送だけでは無いが。

 開発段階で事故が相次ぎ、「未亡人製造機」と不名誉な名がついたのは事実。ただそれはあくまで開発段階の話であって、当然ながら安全性がある程度確保された段階で量産化され配備されている。試作機の事故映像をテレビで流すなどして量産配備されているV-22系を意図的に開発段階の機体と混同し、「未亡人製造機」が配備されているという印象操作をした日本のマスメディアには偏りを感じざるを得ない。

 2023年11月29日に墜落したのは空軍所属のCV-22である。

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(記事題|墜落したのは横田基地所属の空軍機CV-22オスプレイか アメリカ軍関係者(ABEMA TIMES)

事故率について

 冒頭で示した高橋浩祐氏の記事で記載がある事故率のデータはV-22について2000~2021年まで22年分のデータであり、後述するがMV-22とCV-22の事故率を分けて考えるべきかは議論の余地があろう。他の航空機との事故率比較グラフも示されていない。記事内ではCH-47の事故率に言及してオスプレイより事故率が低いとしているが、それ以外の航空機との比較は無く根拠とするデータを確認すると掲載されているのはH-47の2016~2020年の5年間のデータ。22年分のデータと直近5年分のデータを比較することが適切かどうかは疑問がある。米軍の全航空機平均との比較も行っているが米軍機と一口に言ってもその中身は多種多様であり、そのような比較をする意義が見いだせない。

 CH-47初飛行が1961年と実に半世紀以上前からある機種であり、現行型はF型。十分な年月を経て改良に改良が重ねられて安定した機種の直近5年分と、航空機としての形態そのものが新しいオスプレイの22年分のデータを単純比較することは不適切ではないか。氏は「防衛省がたびたびオスプレイの引き合いに出してきたから」という文脈で事故率を比較しているが、CH-47がオスプレイと引き合いに出されるのはその輸送能力と双発の回転翼機という点において類似性があるからで、航空機の形態や運用歴の長さは別モノである。

 また、22年間のデータ全体で見て事故率が上昇傾向にあるのは事実ではあるがマスコミが10年以上前から煽って来たほど事故が多発している訳では無いように見受けられる。実際、日本において初の試験飛行が行われた2012年7月から現在に至るまでで目立った事故は2016年、2023年の2回。

 下記の記事は2015年のものだが、これくらいは他の航空機との比較が欲しい。そうしなければフェアではない比較になってしまう。事故率の低い機種をあえて引き合いに出せば良いのだから。

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 何より他の軍用機や民間の航空機の事故にはあえて触れず、オスプレイだけをことさらに取り上げて危険性を煽るマスコミや一部人間の意図がはかりかねる。保守系から「オスプレイ配備を嫌がる中国・ロシア寄りの意図がある」と批判されるのも無理は無い。

 沖縄タイムスあたりは2016年あたりの不時着も「墜落」であると言いたいようだが、あれは乗員5名全員が救助されているので比較的安全かつ制御された「不時着水」であったと見て良い。この時落ちているのはMV-22である。

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 総合的に見ればオスプレイは「安全と良い切れはしないがことさらに危険とも言い難い」程度ではないか。逆に考えると一体どの程度の事故率ならば「危険だ危険だ」と煽らないのだろうか。事故率がゼロにならないとダメか。そんなのは無理難題、お話にならない。100%安全な乗り物など航空機以外でも存在しない。

 なお素人目線で言えば同じ機体であれば差異は無いように思えるが、同じ構造の機体でも運用に差が出れば事故率や故障率には当然ながら差が出る。かと言って下記記事のように「問題にならない」とは思わないが。

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 内容としては理解できるが一般市民からすればそんな違いは知った事では無い訳で、事故を起こしてしまった以上は一時的な飛行停止等、それなりの対処が必要ではとも思う。アメリカ軍もバカでは無いのでその辺り、どこまで対処が必要かは分かると思うが、日本の国民感情にも少しは配慮してもらいたいものだ。身も蓋もないが人間はデータだけでは動かない。

 一般的な感覚からすれば「事故原因が究明されるまで飛行停止にせよ」という意見もあるかも知れないが、それは難しい。過去のヘリコプター事故でも原因究明に3年を要した事例があり今年、2023年4月に発生した陸上自衛隊のヘリ墜落事故もまだ原因がはっきりと公表されていない。長期にわたって軍用機の運用を止めることは安全保障上、当然ながら好ましくない。

オスプレイが使われ続ける理由

 開発段階での事故が相次ぎ、不名誉なニックネームまで付けられてなお量産化、使用され続ける理由には「能力の高さ」がある。ヘリと同じように垂直離着陸ができる上、上昇してからはプロペラを横に向けて飛行するのでヘリよりも航続距離が長く速度も速い、騒音も少ない。

 下図はCH-47ではなくCH-46との比較だが、行動可能範囲だけ見ても従来のヘリよりも絶対的に広い。これだけ違うと当然ながら使い勝手がかなり違う。速度が速い分、目的地までそれだけ早く到着できる訳でそれが人命を左右することもある。それでいて搭載可能な荷物の重量は9,070kgとCH-47よりは1.8tほど少ないものの、他のヘリコプターよりは多い。

作戦行動半径

 同等の搭載量を誇るCH-47の巡航速度は240km/hなのに対し、オスプレイの巡航速度は446km/hと約1.8倍。それでいて垂直離着陸が出来るので離着陸における使いやすさはヘリと変わらない。航続距離もCH-47の2,252kmに対してオスプレイは3,590kmと実に1,000km以上も長く、軍用機として待望された性能と言える。騒音にしてもCH-47よりはオスプレイの方が静かとされる。

 何にせよマスコミや一部の自称平和主義者が騒いだところで、よほどの事が無い限りオスプレイの配備・運用が停止されることは無い。配備しない理由が無いレベルで優秀な輸送機なのだから。

その他デマ・誤認

オスプレイアメリカで飛行制限があるが日本では無い」→そのような事実は無い。

「プロペラの発生させる強風で草木が倒れる」→ダウンウォッシュ、プロペラによって吹き下ろされる風は回転翼機にはつきものであり、何もオスプレイ特有の問題では無い。 

「新型のティルトローター機が登場しており日本はお古を買わされた」→おそらく新型のティルトローター機は下記記事のV-280 バロー を指すのだろうが、見ての通りオスプレイよりはスリムかつ小型でオスプレイと同等の任務をこなすための機体では無い。汎用ヘリコプターUH-60の後継機として開発されており、胴体はオスプレイよりヘリコプターに近く搭載可能な荷物の重量などは劣る。

trafficnews.jp

 別の話だが、オスプレイよりも高齢者ドライバーや電動キックボードの方がよほど人命を奪っており危険ではないか。