よく見ているガジェット系YouTuberの吉田製作所さんが面白い動画を上げていたので紹介させてもらう。勝手に。動画中の非ガジェオタには分かりづらいと思われる内容も補足しておく。
メルカリでPCを買うリスク
「少しでも安く買い物したい。中古で良いからゲーミングPCが欲しい」と思ってメルカリでゲーミングPC(として売られているゴミ)を買ってしまう人がいるのだろうが、PCオタクとしては全くおすすめしない。
まず素人(PCパーツに詳しくない人)にそのあたりの目利きは難しい。パーツの性能を知らずにただ何となく「ピカピカ光ってゲーミングPCっぽいし、メルカリで他のユーザーからの評価も高いから」、なんて思って買うとゴミを掴まされる。評価している他のユーザーも素人であることを忘れてはならない。
逆にPCパーツに詳しい人なら「これは地雷だな」と分かるだろう。少なくとも8万円のゲーミングPCなんかゴミに決まっている。
また、吉田氏は「白いパソコン買ったはずが在庫切れと言われて勝手に黒にされた」と言っているがそのくらいの不誠実さは当たり前なのだろう。商品画像と実際についているパーツが違うなんてのもあって全く信用ならない。動画を見れば分かるが、使えないことは無いにせよツッコミ所満載でゲーミングPCとは名ばかり。
そもそもどこの馬の骨かも分からぬ相手からどのような梱包で送られて来るかも分からないのに、パソコンのような精密機器を買うこと自体が怖い。梱包で言えばAmazonも大差無いが。まともなPCパーツショップなら梱包材がしっかりしている。
*以下、一部動画のネタバレを含みます
1:45付近 ケースは新品
超ド素人はケースが新品なだけで「キレイなPC」という印象を持つかも知れないが、PCケースなんか新品で3,000円台~あるので外観のキレイさはあまりアテにしない方が良い。ケースだけ買って中に古いパーツを入れればハイ、外観だけは美しいPCの出来上がり。
動画に登場するPCケースは何か少し調べてみたらおそらくこれ。私も自作erなのでPCケースのメーカーはある程度知っているが、これは聞いたことも無い。新品でもいらん。
通貨表示が謎のアラビア文字になっているが、アメリカドルと仮定すると現在のレート(=149.91円/ドル)で約 3,800円くらい。あまりに安い気もするが内部機構はそんなに凝ってなさそうだし、中国メーカーなら出来なくはなさそう。
何にせよケースは新品なのだろうけど、使い勝手も悪そうだしあまり洗練されてはいない安物という感じ。ケースはあくまでケースなので、ここにどこまでお金をかけるかは難しいところではある。
あとこいつ、E-ATXという大きさのマザーボード(=メインの基盤の大きさ)対応ケースなので結構デカい。スリムデスクトップPCの感覚で「机の上にこのPCとモニター、キーボード置いて~」と舐めてかかっていると痛い目を見る。
このシーンで「USBが奥にあって使いづらい」と言っていたのは大きさの関係。デカいので机の上に置くのは無理→机の下に置こう、となるのが目に見えているが、机の下に置いたら置いたで上画像、一番右のUSBなんかは奥にあり過ぎて使いづらい。
机の上に置けたとて、おそらくガラスパネル側に座る関係上、どうしてもUSB端子は遠くなる。せめてフロントパネルか手前側上面に付けてくれ。
作りの違い、質感の違い等は以前書いた私のメインPC、ケースのレビュー記事を見れば少しわかって頂けるだろう。こいつはケースだけで24,000円くらい。
2:30付近 Wi-Fi受信機
上のリンクのようなコンパクトなWi-Fi受信機が背面I-Oポートについているが、この手の無線アダプターは性能がカス。これを背面に刺して「Wi-Fi対応!」は嘘ではないにしても良心的とは言えない。
同じメーカーでもマザーボードに刺すタイプのこれが100倍マシ。私のサブPCも小さい受信機からこれにしたら体感100倍くらい速くなった。
3:37付近 デュアルCPU
搭載されているCPU*1がまさかのデュアル=2つ、それもサーバー向けのXeon E5-2680 V4なのがガジェオタ的には面白い所なのだが、興味ない人にはサッパリだと思う。
まず当該CPUの発売日は2016年4月。実に8年前と目まぐるしく変化する半導体の世界ではまあまあ古い。価格も中古品で単体4,000円行かないくらい。2個セットで7,000円台とお世辞にも高性能/高価なCPUとは言えない。
何より問題なのはCPUがサーバー向けの製品であること。端的に言えば個人で使うのに向いたCPUではない。無駄。一人暮らしで必要も無いのに冷蔵庫5台持つくらい無駄。コア(=計算用の回路)やスレッド(同時に出来る仕事の数)が多すぎる。
「計算回路や仕事のキャパが多いのは良いことじゃないか」と思うかも知れないが、吉田氏が動画中でも指摘しているようにそれほど単純ではない。ソフトウェア(アプリ)が複数のコアを使って動作するようなプログラムになっていなければ、回路があっても使われないので意味がない。100コアだろうと200スレッドだろうと、ソフトが1つのコアだけで動作するものなら残り99個のコアはあるだけ無駄。
無駄にコアが多いので 8:08付近 で触れられているようにアイドル時(何もしていない状態)でも電力を100Wも食っている。値段が安くてもランニングコストが高いゴミの典型。それにしても酷い。
で、このXeon君はと言うとコア1つあたりの性能は高くない(動画13分以降で言及あり)。コア数が少なくても最近のCPUを買って、新しめのGPU(グラフィックスカード)を付けた方が絶対にゲーム性能は上。
4:28付近 メモリがECC対応の32GB×2
ずぶの素人からすれば「ECCって何だよ。英会話教室か?」という所から始まる訳だが、ECCは Error-Checking and Correctingの略。つまりデータに誤りが無いかを確認し、修正してくれる機能。
これだけ聞くと良さそうに思えるがデータをチェックするので処理速度は遅くなるし、メモリ自体が比較的高価。一般用途では非ECCのメモリが主流。ECCメモリは主にサーバーで使われる。
それにしてもゲーミングでメモリ64GBまでいらん。やはりサーバー向けというか業務用の感が強い。メインメモリは16GB~32GBあれば十分。動画編集するならもう少しあっても良いのかも知れないが。
デュアルチャンネルうんぬんは簡単に言えば、メモリ1枚を刺すより2枚刺した方が動作が速くなる機能。「机を1卓使うより2卓つなげて使った方が作業しやすい」程度の話。
4:45付近 電源ユニット
AcBelという台湾メーカー製。このメーカー名は正直知らなかった。マイナーどころではないはずで不安。80 PLUS BRONZEは電源ユニットが交流電流を直流電流に変換する時の効率の認証マーク。ブロンズは下から2番目のグレードなので特段良いわけでもない。
700Wというのは電源容量(連続して供給できる電力の最大値)であって常に700W消費する訳ではない。数値的にはまあ、よくあるレベル。容量が大きければ良いという訳でもなく、よく使う時の消費電力×2くらいの容量を選ぶのが良い。それにしても待機電力100Wは酷い。
ケース横から電源ユニットが見えるようになっているが、見せるほどのパーツでもないし何なら恥ずかしい。そりゃ、↑くらいの電源ならチラ見せしても良いかも知れないが・・・。
4:53付近 GPU
商品写真と比べて明らかにショボいGPU(映像処理用のパーツ)が付いている。ゲームをする上で一番影響が大きいパーツだけに一番酷い詐欺部分。感覚的には「スポーツカーを買った筈が中古の軽トラが届いた」レベル。それもホコリだらけで簡単な清掃すらしていないと来た。
正体はGTX1050Tiだった訳だが、これも2016年発売と実に8年前、それも当時の基準においてもローエンド(=性能が一番低いレベル)というゴミっぷり。
比べるべくも無いが最新のGPUと性能を比較するとこの通り。あれ・・・意外とGTX1000系が善戦してる・・・?GTX1050Tiは下から2番目。RTX4000系が今のところ最新のパーツで、RTX4070で8万円台。
GPU(グラフィックボード)性能比較表【2024年最新版】 | PC自由帳
このサイトで見ればGTX1050Ti、最新のIntel core Ultra200の内蔵GPU( CPUにオマケで付随するGPU)と同程度。
5:24付近 M.2 SSD
M.2 SSD*2はマザーボード(メイン基板)に直接付けられるストレージ。スマホで言えばSDカードや内部ストレージみたいなもん。
これもCeaMereとかいう訳のわからんメーカーのものが使われていて不安しかない。具体的に言えば使っているうちにすぐ壊れる可能性を感じるし固定もガタガタ、何よりSATA接続なのがゴミ。
【特集】同じSSDでもこれだけ違う。SATAから第4世代PCIeまで速度差を検証 - PC Watch
ストレージの接続規格にも何種類かあって、M.2 SSDを買う時に注意するべきなのが「どのような接続規格に対応しているのか」。マザーボードの端子とM.2 SSDの規格が一致していないとデータの読み書きが遅くなる/そもそも使えない可能性がある。
上のグラフを見れば、上2つのSATA接続と下3つのPCIe接続(=MVMe)ではデータの読み書き速度に雲泥の差があることが分かるだろう。今どきSATA接続をするとしたら記録用HDDとか光学ドライブくらいのもの。
これの何が問題かと言うと、データ転送速度が遅い規格だとゲームのデータを読み込むのに時間がかかる。つまりロード時間が長くなる。待ち時間が長いと退屈するし、オンラインゲームで他の人はもうステージを走り回っているのに自分だけ出遅れる、みたいなことが発生する。
5:56付近 配線が汚い
見えない部分なのでどこまで拘るかが問題だが確かに汚い。高級なPCケースでは配線をキレイにまとめる為のフックなんかが備わっているし、ケーブルタイなんかも付属する。というか電源ユニットのコードの色が黄色やオレンジでダサい。時代を感じる。おそらく電源ユニットも8年モノでは。
6:22付近 マザーボードのネジが留まっていない
マザーボードをケースに固定するためのネジが留まっていない箇所が多すぎる。ネジくらい付けろや・・・。
これの何が問題かと言うと、最近のパーツは重いので下手すれば基盤に余計な負担がかかる可能性がある。あのパーツ内容なら曲がったりすることも無いとは思うが、まともな人間が組んだPCではない。
7:11付近 Windows11 Pro(セットアップ済)
本当に新品のパソコンなら、最初に言語設定などの初期設定を自分でする必要がある。それをすっ飛ばして起動した(セットアップ済)ということは、一回起動して何かしらいじられているという事。具体的にはWindows自体のライセンス認証不正。だからセットアップ済=地雷。
おそらく企業向けのボリュームライセンスか何かを不正に流用して入れるだけ入れる、みたいな事をしているのだろう。ネット検索で出てくる格安officeライセンスもこの類。時間が経つと使えなくなる可能性がある。動画ではクリーンインストール(自分で再度インストール)してライセンスが通っていない。
というかチップセットが非対応(後述)なのもあってちゃんとWindowsUpdateとか適用できるんだろうか・・・。
8:25付近 Officeライセンス
Officeはインストールされているがライセンス認証がされていないという詐欺もいいところな惨状。確かにOffice入ってるね。入ってるだけで使えないけど。
8:40付近 WinRAR
WinRARは圧縮ファイル(zip、rarなど)を解凍する(圧縮されたデータを圧縮前に戻す)のに使用されるフリーソフト。まあまあ古いソフトなので吉田氏は販売者がそれなりの年齢では?と推測している。
なお、Windows11では標準でzipやrarなどの圧縮ファイルを扱えるようになったのでこのようなフリーソフトはもはや不要である。
見方を変えれば勝手に余計なソフトが入れられている訳で、素人は裏でどのようなソフトが動いていても分からないかも知れない。安いからとメルカリなんかでPCを買うのはセキュリティ面においても最悪。
9:04付近 X99チップセット
パソコンにはOSが起動する前に様々な制御を行うBIOS (Basic Input Output System)というものがある。イメージとしては電源ボタンが押される→BIOSさんがまず目覚めていろいろ準備する→OS (Windowsなど)を起こす、という感じ。
X99はこのBIOSが使うチップセットのことで、これがWindows11に対応していない。要は本来はWindows11が使えないPCに無理やりWindows11を入れているということ。そんなこと出来るのか。出来ます。私も今使ってるサブPCでやってます。
何が問題かと言うと動画の通り、本来は自動で入るドライバが入らなかったりスリープモードに出来なかったり。細かい制御系で問題が起きる。
総評:メルカリでPC買うな
YouTuberならゴミを買っても動画ネタに出来るから良いが、そうでも無いならメルカリで8万円も出してゴミを買うことはオススメしない。中古を買うにしてもせめてBTOメーカーの公式中古ショップなんかの、まだ信頼できる場所で買うべき。
たとえば↑あたりとか。
PS5 Proが12万円もすることからその辺の需要を横からかすめ取ろうと今、PCメーカーでは新品で12万円程度のラインナップを強化する向きもある。そこを狙うのも1つの手。何にせよ8万も出してメルカリでゴミを買うのは良くない。
余談:サーバー向けCPUはなぜコア数が多いか
例えが下手なので余計混乱を招くかも知れないが、マクドナルドをイメージしてみよう。店員が28人いるマクドナルドだ。毎日不特定多数の客から注文を受けて商品を提供する。28人いないと回らないくらい繁盛しているマクドナルド。
この店で重要なのは何か。店員1人あたりの能力の高さではない。「そこそこ出来る奴が28人欲しい」、「人手がなければ注文を捌ききれない」。
サーバーも同様に多数のPCからリクエストを受けて要求に応じたものを返す。なので人手=コア数/スレッド数が多い方が良い。1コアあたりの能力が高くてもあまり意味はなく、複数のコアで同時に対応できることが役割に即している。
これが個人向けになると話は違う。店員28人のマクドナルドなのに来る客は毎日せいぜい1人か2人、多くて4人。対応するのに絶対28人もいらない。でも28人いるからそれだけ給料は出さないといけない。という状況が個人でサーバー用PCを使うということ。
動画で待機電力 100Wという話が出ているが、並のゲーミングPCならそんなにいかない。消費電力がもったいないしスペック過多。もっとも、個人で大規模にMinecraftのサーバー運用をしたいなんて話なら知らないが。それでももうちょっと良いCPU買おうぜ
メルカリPCの動画続き。プレゼント企画に回すためにいろいろアップグレードしているが結構良心的。
今使っているメインPCの記事。OS抜きで35万くらい。
闇を暴く企画もっと下さい