ヤマネコ目線

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保守とは何か

 書き散らし。杉田水脈政務官が辞表を提出した事に関して、Twitterで一部勢力が「岸田は貴重な保守派議員を守れなかった」と批判しており、個人的には改めて保守とは何かを考えさせられた。

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日本における保守とは

 辞書的に言えば「保守」というのは従来からの伝統、習慣、価値観などを維持し、それらに対する変化に反対しようとする思想のことであるが、日本における保守(特にそれを自称する人間)に関して言えば、そこに復古主義愛国主義民族主義の側面が加わる。特に自民党やその支持層に見られるのは、大日本帝國時代への憧憬であるように思う*1。「構造改革」や「抜本的改革」といった言葉が出てくる時点で自民党は辞書的意味での「保守」からは程遠く、むしろ憲法守れと叫んでいる人間の方が辞書的な意味での保守に近い訳だが、そうした層が「左翼」とされる現状はなかなか紛らわしい。

杉田氏は「保守」なのか

 「保守という名のもとに憎悪を撒き散らす者」を保守と呼ぶならばそうなのだろうが、氏の発言は日本らしい「保守」のあり方(権威主義的、事大主義的でその時の時世に柔軟に対応する「従う政治文化」)からしてそうとは言い難い。LGBTQに対する発言も、国連女性差別撤廃委員会に関するブログでの書き様も、政治家として思想的にバランス感覚に欠けている。

 結局、氏の言動は「保守」的ではなく後述するような民族主義愛国主義と、それに根ざした排他的な偏見によるものでしかない。

保守の皮をむいてみれば

 どういう観点から見れば杉田氏は「保守」たり得るのか。LGBTQや外国人あるいはその文化を異物として排除し、純粋な日本らしさを求めるという点はあるが、それは民族主義愛国主義的であり厳密に言えば保守とは少し違う。いわば杉田氏やそれを支持する人間は、民族主義愛国主義を「保守」という言葉でオブラートに包んでいるのだろう。あるいはその自覚すら無いか。それが「保守」だと思いこんでいるか。

 そして彼らは民族主義愛国主義の全盛期であった大日本帝國時代の在り方、価値観に根ざした政治を行うことが「保守」であるとも思っているのだろう。かつての(ある意味での)全盛期の真似をすれば日本が良くなる、それで国が良くなるならそれが愛国であり、そうした流れを支持することこそが愛国心であり、第二の大日本が実現した姿こそが「美しい国」だ、と。

 実際は民族主義愛国主義で失敗して原子爆弾を2発も落とされて今に至っている訳だが。愛国だ、美しい国だと言うまえに歴史の教科書を読み返すべきである。まずもって大日本帝國が実現した時とは何もかもが違う。世界情勢が違う。日本という国に戦前の勢いは無いし、現代の日本においてどこぞの神社で苔むしてそうな古臭い価値観は受け入れられない。社会的にそうしたエセ保守的な価値観は広まらない。

 むしろ自民党は日本国民を広く困窮させて日本人を減らし、格差を拡大させて文化的な豊かささえ破壊している。そうした政党を支持している人間や、そうした政党の中で過去の栄光に囚われ続けている人間が「保守」とは嗤わせる。それはただの愚かな破壊者でしかない。私は彼らを「美しい国民」とは思わないし、「美しい国」とやらを作れる人間とも思わない。

なぜ彼らは愛国主義にハマるのか

 というのも私なりに観察し、考えてはいる。日本人というアイデンティティ固執し、いわゆるサヨクと同じくらい現実から目をそむけながら、実際に旧統一協会という*2カルトと仲良しこよしな自民党をこの期に及んで支持し続ける彼らは一体何なのか。何がそこまでさせるのか。

 つまるところ、彼らにとって誇れることが「自分が日本人であること」くらいしか無いのでないか。日本というアイデンティティに縋り、よくある日本礼讃番組を見るような感じで、勝ち馬に乗った気分で「自分は優れた民族の一員なのだぞ」と思いたいだけなのではないか。それが民族主義愛国主義国粋主義へと繋がっていくように思える。それが悪化すれば日本会議だの何だのといった団体、自民党における「保守」を支持するようになるという感じだろう。

 たまに「本当に日本人か?」、「~じゃないなら日本人じゃない」という文言も目にするが、そうした言葉が出て来る思考の根底には「日本人ならこうあるべき」という思想と、そこから外れた者、自分たちと意見の異なるものは「日本人ではない、あるはずがない」というある種の選民思想的な偏見がある。それは日本人という民族にありもしない理想を抱いている証左であり、現実から目を逸らしている表れにほかならない。

 悲しいかな、そうした「日本人であること」くらいしか誇れることが無い人間は本当に中身がない。自分自身というものを国やその在り方に依存しており、1人の人間としての価値基準も物事の理非も思考能力も持ち合わせていない。「防衛のため」と言われれば増税も喜んで許してしまう連中などその典型。最悪なのは、そうした人間に支持されるような同じように中身の無い人間が政治の場に実際に居ることである。

 私もそこまで人に誇れるような事は無いが、落ち目の国の国民とはここまで情けないものかと涙を禁じえない。

*1:そのくせ「富国強兵」という思想は知らんようだが

*2:彼らの大嫌いな韓国発祥の