自民党、杉田水脈氏が教育勅語に関してXでアンケートを行っていた。教育勅語を見ると背筋が伸びる/凍るという選択肢のもので、結果を見るに自称保守の方々はなかなか独自見解を改める気は無いらしい。
教育勅語の是非
教育勅語自体の是非については以前に書いたので、これ以上語ることは無い。要約すると教育勅語は国会決議で失効が確認されており、自称保守の間で出回っている教育勅語の内容とされるものは明らかに拡大解釈である。そもそも原文は箇条書きでは無いし、内容も件の画像ほど詳細に語られてはいない。原文を全体で見れば国家主義の掲揚が主眼であり、彼らが言うような教育方針はあくまで説得力をもたせるためのオマケ程度。現代日本において「何ひとつ間違った事は言っていない」などと言うのは何もかも間違っている。原文を読んでその意図を正しく理解できないあたり、日本語読めないのか？
そも教育勅語自体、天皇陛下のお言葉として作られておりその前提は天皇主権体制である。しかし今の日本の主権者は国民であって天皇陛下では無い。国民全員、天皇陛下の臣下でも無ければ”お国”のために奉仕する立場でも無い。現状に即していない価値観を是認することは出来ない。
それも国会議員は主権者たる国民を代表する立場である。もちろん杉田氏も国会議員である以上は日本国民の代表という立場。それがあたかも天皇陛下の臣下にでもなったつもりで、「お国のために尽くしましょう」などと言う内容を礼賛する。それで一丁前の愛国者のつもりでいる。ふざけるな。背筋が伸びるだのと抜かす前に足元を見ろ。地に足つけてモノを言えないなら国会議員なんか辞めてしまえ。背筋が凍りはしないが薄ら寒いんだよ。
大体、裏金議員に代表されるように自民党の議員は教育勅語のポジティブに取れる内容すら実践していないではないか。己が出来ないことを他人に、それも主権者に対して分を弁えずに一体何様のつもりで押し付けようとしているのか。その在り方からして大好きであろう教育勅語(と思い込んでいるものの)内容にすら反している。謙遜が無い、博愛も無い、遵法精神も無い。公益世務に反して日本を停滞させ続け、孝行、友愛、夫婦の和、朋友の和、修学就業、知能啓発、徳器成就が出来るような日本を破壊し続けて来た。それもよりによって韓国発祥のカルトと手を組んで。
これを許した上、教育勅語の賛美に喜々として賛同している自称保守の連中の気が知れない。そんなに戦前に返りたいならどこか島でも買って勝手にやってくれ。ここは戦後、民主主義国家としての日本だ。帝國臣民の居場所は無い。保守とは復古主義のことでは無い。そうあるべきでは無い。
杉田氏のアンケートはメディアにも取り上げられた。「排外的投稿」という批判の文脈は分かるが書き方がイマイチで何とも微妙な記事。「教育勅語を否定する人間は本当に日本人なのだろうか」という杉田氏や自称保守の投稿、思考回路は確かに排外的というか思考停止だなと思う。「私たちと異なる意見を持つものは日本人では無い(だから相手にしなくて良い)」という思考回路は偏った人間が己のバイアスを正当化するためにありがちなパターン。
この記事に対する本人の反応は下図の通り。共同通信の書き方は下手ではあるが、何が「排外的である」と言いたいのかは文脈から十分読み取れる内容である。にも関わらず本人は何が排外的であると批判されたか理解していない様子。ひょっとして日本語読めないのか？読解力が無いだけか？批判を受け入れて正面から反論するだけの力が無いあたり、教育勅語とされるものの内容に足りていない。
加えて「海ゆかば」は軍歌では無いとも書いているが無理があるだろう。確かに原歌は軍歌として作られたものでは無いが、戦時中に一部を抜き出して歌われた「海ゆかば」が軍歌として利用されたのは紛れもない事実であり、それを今さら「軍歌では無い」などと言うのはもはや一周回って面白い。戦後の軍事忌避の反動なのか何なのか、逆張りで全肯定に走るのはあまりに滑稽である。そもそも軍歌として認めたら何か不都合あるの？良いじゃん、軍歌として歌えば。何をそんなに怖がってるんだ。
私も歌詞は知っている。もちろんその解釈も含めて。だからこそ軍歌では無いだの何だの言う奴らが滑稽に思える。覚えている理由は声が低いので軍歌を歌ってみようと思った事があるから。他意は無かったが歌詞を知ることで当時の雰囲気を少しだけ感じることは出来た。
「海ゆかば」の歌詞は
海ゆかば 水漬く屍(かばね) 山ゆかば 草むす屍(かばね) 大君の 辺にこそ死なめ 長閑(のど)には死なじ
＊「長閑には死なじ」は「かえりみはせじ」のパターンもある
戦時中におけるこの歌詞の一般的な解釈は
海に行くなら水に沈む死体になりましょう。山に行くなら草が生える死体になりましょう。天皇陛下のお側でこそ死にましょう。のどかに生きて死ぬことはしません/自分の命をかえりみる事はしません
あたり。これが軍歌で無くて何なんだ？日本語読めないのか？？意味が理解できないのか？？？
何にせよこいつらは戦後否定されたものを何もかも肯定して行く気なのだ。それがかつての強い日本を復活させる道とでも思っているのだろう。とんだ勘違いである。民主主義国家として日本をどのように成長させれば良いか分からないから、理解できないから、努力できないからそこから逃げようとしている。かつての帝国に憧憬を抱き、良い面だけを見て甘えている。酔っている。その非現実的な理想を追い求める様は彼らが嫌うサヨクによく似ている。皮肉なものである。
私は彼らを保守とは認めない。
