ヤマネコ目線

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裏金問題とキックバック問題は別

 一部で「どうして安倍派ばかりがメディアで叩かれているのか。中国親派による安倍派潰し、保守潰しでは」、などと陰謀論めいた事が囁かれているので補足的に書いておく。

「裏金」と「キックバック」は別

 「裏金」は "20万円以下のパーティー券購入は政治資金収支報告書に記載義務が無い” ことから生じた問題で、安倍派だけでなく麻生派、茂木派、岸田派、二階派など広い派閥で問題となっている。

 どうして不記載が起こったのかは少し分かりづらいが、たとえば私が「 2023年12月15日に会場Aで開催される政治資金パーティーについて、◯✕派の議員5人から依頼されてパーティー券をそれぞれ6万円ずつ購入した」 としよう。それぞれの議員からすれば確かに20万円以下の購入で記載義務は無いように見える。

 しかし◯✕派への支援額は計30万円であり、本来であれば政治資金収支報告書への記載が必要である。それを記載していなかった(彼らいわく「見落としていた」)のが「裏金」問題。不記載の額は過去4年間で4,000万円ほどとされる。議員間の連絡が悪いというのはあるのかも知れないが、我々からすればそんな事は知ったことでは無い。それくらい記載漏れが無いよう連携処理するのが当然だ。

 一方「キックバック」問題は上であげた5派閥の中で安倍派において行われていたことであり、「安倍派ばっかり叩く」も何も安倍派が一番タチが悪いのでそれが当然の流れではある(ほかの派閥の裏金問題も追及はするべきだが)。

 キックバックはパーティー券販売ノルマ達成を上回った分の売上をそれぞれの議員に還流、政治資金収支報告書に記載しなかった問題。同じ裏金づくりに違いは無いのだが、まだ「うっかり」で説明がつく?他の派閥の裏金問題と比べて弁解の余地が無いほど悪質である。安倍派(清和政策研究会)所属の議員に還流された金は去年までの過去5年間で数億円にのぼるとみられ、金額ベースで見ても派閥中で最悪レベル。一応書いておくが「裏金問題」の約4,000万円は過去4年間、5派閥の不記載の額の総額であって、安倍派のキックバック問題はこの額を軽く超えている。

参考↓

www.nhk.or.jp

 つまり「安倍派つぶし保守潰し」もへったくれも無く今、純粋に一番問題視されるべきは安倍派で間違い無い。まず安倍派を追及せずに他の派閥の裏金問題を追及することは、むしろキックバック問題の矮小化にもなり得る。旧統一教会問題といい、彼らは愛国保守を標榜しながら裏でどれだけ汚いことをやって来たのか。

 自民党は最も多くの政党交付金を受け取っている。野党と比較すればそれだけでも選挙では有利と言える上に、さらに裏金まで作って政治資金としていたとあっては選挙の公平性に疑念が生じる。テロがそうならこのような事態も「民主主義の根幹を揺るがす問題」だ。本来であれば関係者は全員、即刻議員辞職までして欲しい。というか内閣総辞職レベルではないか。

 インボイス制度などと言って個人事業主にさえ重く細かい経理処理を求めるくせに、何千万ともらっている自分たちは20万円以下の記載不要などとドンブリ勘定。不記載は後で訂正すれば許されると思っている。問題が明るみに出ても「辞めるつもりは無い」。議員辞職どころか職も退かぬ、「精査している」だの「適切な時期に対応する」だのとその場しのぎの逃げに徹する。心底アタマに来る。今の政治家は年食ってるだけで恥というものを知らん。

 「答弁を差し控えると言うくらいなら議員になるのを差し控えろ」、「人として賞味期限切れの人間が総理や閣僚になっている」、という田中真紀子氏の言葉は間違い無い。頷き過ぎて首が飛んで行きそうになった。

「保守潰し」という陰謀論

 以上から、安倍派に対して追及が激しい理由は「保守潰し」でも何でもなく正当な理由があると分かる。すぐに陰謀論に走る自称保守のエセ愛国者どもには心底うんざりだ。彼らは自身の信仰する安倍元総理の負の側面を受け入れられない、直視出来ない。だから陰謀論で無理やりに擁護しようとする。

 エセ保守はそれっぽい綺麗事に流されて安倍元総理をまるで教祖のように信奉し、「偉大なる指導者 安倍晋三大先生の下に集った誇りと愛国心ある日本人」の一員であるということに酔って、その酔いに水を差そうとする批判からは目をそらし続け、挙げ句に現実を直視することも真偽を見極めようとすることも出来なくなった無知蒙昧の世迷い人だ。決して彼らが思うようなキレイで誇り高い日本人では無い。旧統一教会問題やキックバックでの裏金問題を見てもまだその酔いから覚めていない。

 現実を直視せず、自分たちが信じて来たものを信じ続けたい、その一心で狭い見識の中からどうにか自分たちの”信仰”を破壊せずに済む物事の解釈を考えるから陰謀論にもハマる。どんな不祥事でもあらぬ解釈で擁護さえしてしまう。その方が簡単で楽だから。自分が信じるものを否定せずに済むから。それでは物事の見方を誤る。狭い見識で世界を都合よく解釈しようとするから、世界が現実よりもずっと複雑怪奇に見えてしまう。無理筋ですぐに中国の意図がどうのと言うのはただの愚か者。

これからの「保守」

 正直に言えば、これは自戒と過去の自分への批判でもある。常に正しい判断力を保つことは難しく、10年先20年先を見据えたモノの見方をするのは至難の業。実際にその立場になってみて初めて気づく事も多い。悪夢の民主党政権からの安倍政権誕生は確かに待望されて希望に満ちた政権交代であったし、そこから自民党の天下が長く続いたことに無理は無い。

 とは言え、このままで良いのかをいい加減に見直すべき時期だろう。自民党にいつまでも政権を任せていてもろくな事にならない事は明らかだ。だったら少しずつで良いので政治を変えるしか無い。野党にも力を持たせていくしかない。逆に言えば今の政治の惨状は、野党を育てることを怠り自民党に頼り過ぎた国民にも非がある。1つの政党に権力を持たせ過ぎたからろくでも無いことになっている。

 そこでの「保守」やるべき事は指導者や過去の帝国を美化することでも、「日本人であることの誇り」に縋ることでも無く、民主主義の先進国としての日本を少しでも維持できるよう政治を変えることではないだろうか。エセ保守はその点、保守というより悪い方向へ国を変えようとしているように思う。憲法改正にせよ彼らの理想とする社会像にせよ、戦前に戻ることがこの国を良くする事なのか。少なくとも私はそうは思わない。

余談:安全保障だけで良いのか

 これまで自民党が政権を握り続けて来られた最大の理由は安全保障政策の強さである思う。逆に言えば安全保障政策さえしっかり国民の意に沿えば、政権交代が出来る可能性は確実にある(それがお話にならないのが野党でもある訳だが)。一方で安全保障だけで自民党を支持し続けるのにも限界が見えている。

 確かに安全保障は最重要政策と言って良い。しかしそれが全てでは無い。外部からの脅威に備えることは出来ても、このまま自民党に政治を任せれば日本は内部から破壊されてしまう。と言うか、すでにかなりの年月を破壊され続けて来た。もはや一番の脅威であり敵は自民党に限らず無能な政治家といえる。純然たる軍事的な備えに固執するのではなく、まず政治の場から敵を排除することが必要だ。