ヤマネコ目線

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技能実習生の現実202205

 書き散らし。感想文のようなもん。でもブログだからいいっしょ。

 私は給与計算に関わっているので、今月のGWを含んだ給与計算の結果が見られる。弊社の技能実習生は日給制で、時給換算では最低賃金ギリギリのライン。なぜ最低賃金ギリギリラインかと言うと、このご時世でも値下げを要求されているような業界だからである。

 それにしても今月の技能実習生の給与、差引支給額が10万も無い。日給制なのでGWで労働日数が減った結果と言える。あらゆる物が値上がりしている中で流石に不憫に思えて来る。住まいは社員寮と言う名のボロ屋、移動は自転車か徒歩、慣れない海外まで出て来て、それも一番習得が難しいとされる部類の日本語もある程度覚え、実家に仕送りもしている。社会保険料その他税金ももちろん納めている。

 「偉い」という言葉はあえて使うまい。それは社会的に上の人間が下の人間を今の立場に甘んじさせるために使う言葉だ。感心こそすれ、我々はどこかで彼らより上の立場であり、彼らが苦労して今の社会が維持されているからそれを「偉い」と言う言葉で労うのである。正直、実家が兼業農家の私はそれがあまり好きになれない。割に合わない苦労をすることが「偉い」か。その言葉の本質を考えた事があるか。

 ちなみに社会保険料の中でも厚生年金は特に不憫で、年金がもらえる訳でもないのに支払う必要があり、帰国してから脱退申請をする事で初めて支払った年金の一部が返ってくる(そして全額が返って来る訳ではない)。

 技能実習生は治安悪化や日本人の賃金が上がらない原因とも言われる一方で、日本の消費者が求める値段の安さを維持するために劣悪な労働環境、最低限の賃金で働いている。弊社の環境でもまだマシな方であり、介護業界などはもっと苦しいと聞く。これはいつか日本人全体に何らかの形で罰として返ってくると思わざるを得ない。

 日本企業が海外に工場を増やした結果、既に海外(主にタイやベトナム)では国内で人件費が上がっている。なのでわざわざ日本に来て仕事をするより、多少給与が安くても現地で仕事をする人が増えている。日本に来る際は現地の送り出し機関に多額の費用を支払わなければならず、下手すれば借金してまで来る技能実習生もいるが、そこまでリスクを負うなら国内で働く方が確かに良いだろう。

 数年前まで見かけた中国人技能実習生は、既に日本の人件費が安くなり過ぎてしまったので最近は来ていない。少なくとも弊社の業界ではそんな感じ。近年、ベトナム人やフィリピン人の技能実習生が目立つようになったのはそのためである。

 そしてこれから先、そのベトナムやフィリピンからですら日本は人材を確保できなくなる可能性がある。その次はタイだろうか。どこまで行くかは分からないが安易に外国からの労働力をアテにし、消費者・経営者とも日本人へしかるべき対価・給与を支払うことを拒み続けた結果、技能実習制度で延命された企業、業界はいつ絶命してもおかしくないと感じている。その結果として社会全体がじわじわと崩壊して行くのは予測に容易い。

 何も弊社程度が潰れたところで社会に悪影響があるとは思っていないが、それが何かしらの業界全体に渡るレベルであれば当然、影響は大きい訳で、介護や農業などは一体どうするのだろうか。アフガニスタンバングラデシュあたりからでも労働者を引っ張って来るのだろうか。まあ、落ちる所まで落ちなければ国民も政府も何をどうすべきか分からないのかも知れない。

 何より日本人が技能実習制度を前提とした物価に甘んじる限り、この状況は変わらないだろう。治安悪化など、日本社会全体が外国人労働者に強いていることを考えれば可愛いものだ。彼らによる犯罪を肯定はすまいが、彼らを追い込んでいるのは日本社会である。特に介護業界は怨嗟が業界の垣根を超えて漏れ出て来る。

 弊社の技能実習生の一人は、今の実習期間が終われば介護業界への転身を希望している。監理団体の方からは明らかに止められているが、本人の意思が固ければこちらも監理団体もどうしようもない。割とか細い子なのでやって行けるのだろうか・・・。