ヤマネコ目線

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実習生問題と日本の現状

 書き散らし。技能実習生に関するセミナーを受けて、想定の範囲内のことが大半だったがそうでない内容もあったのでネタにする。さすがにセミナーの内容すべてを書く訳にはいかないが。主にベトナムからの実習生について。

 過去の類似の記事は↓

manuller416.hatenablog.com

今や魅力がない日本

 多くの人がうすうす勘付いている通り、今や日本はベトナム人からしても出稼ぎ先として魅力がない。オーストラリアに行けば日本円換算で月約38万円稼ぐことが出来る。なので実習生の中でも良い人材はオーストラリアへ行く。その次に彼らが行きたがるのが台湾。その次が韓国で日本は4番目である。つまり日本に入ってくるのは今や四流の人材しかいない。というかオーストラリア良いなあ・・・俺だって行きたくなってる。向こうは向こうで物価が高いのだろうが、出稼ぎ先としては魅力的。

 出稼ぎ先として日本にそこまで魅力が無くなった理由は低賃金・悪待遇・重税・通貨安の4重苦だから。

 まず低賃金はお察しの通り。技能実習生の賃金は最低賃金にほぼ張り付いている。最低賃金より上だったとしてもその額はたかが知れたもので、決して高いとは言えない。40円50円上とかそんな程度。先に挙げた国と比べればもはや情けなさを感じざるをえないレベルで低い。日本へ来るのはお金を稼ぐためが第一の彼らにとって、もうこの時点で日本は終わっている。

 悪待遇もお察しの通り。技能実習生が来るのはそもそも日本人がやりたがらない仕事の現場。つまり言い方は悪いが日本社会の最底辺。キレイな寮なんてあるハズもなく、業界によってはパワハラ、セクハラが横行し、下手すれば給与も実質的に最低賃金を下回っていたりする。この辺の悪い事例は挙げ始めるとキリがないが、最近で言えば建設会社での暴行事件なんかが有名か。

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 重税は我々が身をもって知る通り。技能実習生でも当然、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・住民税・所得税が少ない給与の中からがっつり取られて行く。健康保険・厚生年金はメリットもあるし後で返ってくるものがある(年金の脱退一時金)から良いとしても、やはり手取りは減る。オーストラリアはここまで重税ではないらしいので、その点でも魅力が無い。

 最近では「住民税非課税世帯に5万円の給付金」という話もあるが、その給付金は住民税非課税でさえあれば出る=当然、技能実習生でも請求できる。ここで揉めるのが住民税非課税になっている実習生とそうでない実習生。親族をしこたま扶養に入れるようにしている実習生は住民税が非課税になるので、給付金をもらえる。一方でそうしていない実習生はもらえない。こういう所で揉め事が起きるから給付金出すなら出すで中途半端なことしないで欲しいのだが。

 なお、海外にいる親族を扶養に入れるためには親族関係の書類などを用意することに加えて、扶養する親族一人一人個別に送金を行った送金明細を保管しなければならない。「兄妹も扶養に入れたいが手数料を節約しようと思って両親にだけ送金した」、という場合はたとえいくら送金していようと扶養していると認められるのは両親の分だけ。

 これに加えて、来年からは扶養に入っているとみなされる条件として1人あたり年38万円以上を送金していることが加わる。今まで金額に条件が無かったのもおかしいが、この金額は金額でなかなかに厳しい。住民税非課税を目指そうと思えば大体3人は扶養に入れないといけないと思うが、それでも年間114万円を送金しなければいけない。実質不可能。

 そしてこの状況に最近の円安傾向がかかってくる。今や円はドルだけでなくドン(ベトナム通貨)に対してすら安くなっているので、ただでさえ少ない賃金がさらに目減りすることになり当然、ベトナム人としては面白くない。家族への仕送りの金額が目減りすることになるので、円安を理由に賃上げを要求してくる場合もある。というか、あった。下図を見ると単位的にはわずかに思うかしらないが、現地民からすれば差は大きい。

 通貨安の話ついでに言えば、彼らが来日するために背負っている借金はドル建て・ドン建てである。それも10万20万ではない。失踪するベトナム人の多くは円換算で100万円以上の借金を抱えている。そこに通貨安が重なって彼らからすれば借金が思ったようには全然減らない事態になっているのが現状。特に円がまだ1ドル110円台の時に来日しているベトナム人からすれば、こんな円安聞いていないという思いでいっぱいだろう。

 なのでベトナム人からすれば給与や残業を増やしてもらいたいと思う訳だが、そもそも人件費を削るために実習生を雇っている企業に最低賃金以外の要素で賃上げをする余裕はなかなか無い。残業を増やすにも、即戦力ではない実習生にさせる残業がない。となれば結局、実習生はお金を稼がないといけないのに合法的に稼げる方法がなくなってしまう。

 技能実習生が来日するための費用についてはいろいろ縛りがあるが、あくまでそれは建前であって実際は親族からの借金、現地のブローカー、送り出し機関に払う費用などを加味すると100万円以上はあり得る。正直、日本人としてこんな国にそこまでの借金を背負って最低最貧レベルの出稼ぎに来た彼らを哀れに思わざるを得ない。なお、具体的にいくら借金しているかはかなり口が硬いらしい。受け入れる企業・監理団体側には日本の外国人技能実習機構に来日する際にかかった費用を申告する義務があるが、その金額は当然のごとく虚偽。下手なことを言えば虚偽申告で実習そのものが中止、帰国せざるを得なくなるため。あえて(同情を買って残業を増やしてもらうために)借金の額を多めに言う人間もいるらしいが、その辺は人それぞれ。

 とまあこんな感じで、よほど日本に憧れでもしていない限り良いことが1つも無いレベルなわーくに*1なので、技能実習生の人材としての質が落ちつつあるのは当然と言える。実際、私のいる職場でも出身地を聞くと最初に来た人はけっこうな都市部だったのが、どんどんド田舎もド田舎という地域に移っている。直近で来日した4人のうち1人はあまりにやる気が無いのですでに帰国したし、挨拶できない遅刻あたりまえというレベルも今や珍しくない。まあ、そういう人材が今の日本にはお似合いという事なんでしょう。

 そこで犯罪者が増えるのも当然。清水の舞台から飛び降りるつもりで借金抱えて来た国が本当はろくでもない国で、お金もぜんぜん思ったように稼げない。となれば犯罪でも何でもやって稼いでせめて借金を返そうと頑張るのが彼らである。田舎から出てきた人間であれば、日本に巣食う悪い人間の甘い言葉にも騙されやすい。最近は特に失踪が増えているという。犯罪を擁護する訳ではないが、しかし彼らとて最初から犯罪で稼ぐために日本に来ている訳では無い。

 現地の送り出し機関も人があまりに集まらないので、機関によっては非合法的なことをしているという。コロナ陰性証明はお金さえ出せば出してくれる病院に頼む、健康診断の結果を偽造する、その他、都合の悪いことは隠してとにかく人を集めている。

特定技能で永住権が射程に入る

 これまでの技能実習は最大5年までだったが、近年創設された特定技能1号は就ける業種が限定されるものの最大通算5年まで在留することが出来る。技能習熟や日本語能力試験があるがこれは技能実習第2号を修了していれば免除されるので実質、無いものと考えてもいい。

https://www.moj.go.jp/content/001326468.pdf

 そして技能実習5年、特定技能第1号5年から特定技能第2号に移れば日本に在住する期間が10年以上となり、永住権取得が視野に入ってくる。この特定第2号は配偶者、子に限り要件を満たせば家族帯同可。

 なお、この特定技能として認められる職種はなかなかに限定的、なおかつ技能実習が認められていても特定技能が認められない職種がある。基準がなかなかに謎。たとえば飲食は認められているが、スーパーでの食品加工は認められない(スーパーは小売業なので)など。この辺の認められる認められないは業界団体の政治的影響力の強さが影響しており、業界の実情とは関係ない。

今後の日本

 言い方は悪いがあまり程度の良くない外国人が増えていくのは確実だろう。日本という国がそういうレベルの国になっているのでそれ相応の人材しか来ない。それだけのこと。「ベトナム人が減れば外国人による犯罪が減る」などと喜んでいる人間は完全に考えが甘い。人手不足は何らかの形で解消する必要があり、ベトナム人が減っても代わりに別の国から今まで以上に問題を起こしそうな人材が来るだけである。すでに技能実習生の国籍は一部でカンボジアに移りつつある。一応、永住権を取得するためには素行が良くなければいけないが・・・。

*1:我が国