ヤマネコ目線

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久々にラピュタ観た感想など

 天空の城ラピュタを久々に観て以前よりも感じ方が変わった部分を少しだけ書いておく。

冒頭、飛行船を海賊が襲撃するシーン

 海賊のメンバーは

  1. ドーラ
  2. シャルル
  3. ルイ
  4. アンリ
  5. モブ5人(カ、キ、ク、ケ、コ)
  6. ハラ・モトロ

 このうちハラ・モトロは船の技術者なので戦力にはカウントしないとして、襲撃に加わるのは最大で9人。この人数で民間船とはいえ飛行船を簡単に制圧してしまう手際、その描かれ方が面白い。この時点でドーラ一家はかなり手慣れた海賊であることが分かる。操縦室に催涙弾みたいなものを撃ち込んでいるし。

https://www.ghibli.jp/works/laputa/#frame フレーム32

 モブ5人は小説版によればカ行順にポルトガル人、エジプト人、中国人、日本人、セネガル人らしい。女性こそ居ないものの今流行りの多様性を先取りしているようにも思える。

スラッグ渓谷と鉱山

 パズーが働いている鉱山はスラッグ渓谷という渓谷にある。スラッグとは金属を精錬する際に出るカスのこと。石炭のカスは「ボタ」。

 パズーが親方に任されてエレベーターを操作し、鉱夫たちが出てくるシーンでトロッコに乗せられているのは石炭で、同時に金属鉱石が出ないことを嘆くセリフがある。この事からおそらくパズーがいる鉱山は主に石炭を掘りつつ、同時により単価が良さそうな金属を掘ることを目的としていることが分かる。

 パズーが降下中のシータを見つけて駆け寄っていくシーン、上空からの視点のカットではちらっと廃棄された線路とトロッコが映るので、鉱山としての最盛期はとっくに過ぎた後であることも推測できる。人がいるらしい描写があるのも親方たちがいる小さな街だけで、それ以外は広大な廃墟となっている。

ラッパとパズーの身の上

 朝、吹いていたラッパは起床ラッパだろうか(でも距離的に届くんかね)。パズーの家は街というか、炭鉱夫が住む集合住宅のような場所から離れた場所にある。それも初期の設定画では街よりずっと上の方、渓谷のほぼ最上部にある。

 作りは決して豪勢とは言えないものの、街から離れた場所にレンガ作りの基礎があってその上に木造の小屋が建っているという構造。内部には飛行機械の工房もあるのである程度は広い。えらく白い鳩も飼っている。

https://www.ghibli.jp/works/laputa/#frame フレーム6

 パズーの父は飛行船?で冒険に出ているし、ある程度広い家を持っておりパズーに楽器も残していることから、それなりに裕福であったのではないか。ただの炭鉱夫が道楽であのような飛行機械を作って冒険に繰り出せるとは思えない。時系列的にもパズーの父が生きていたのは鉱山の最盛期ではないだろうし、「詐欺師扱いされて死んじゃった」というセリフがあるので没落したのだろう。

 作中では孤児となったパズーをあの気の良さそうな親方が面倒見ている感じなのかな、と思う。それでもパズーは自分の家で1人暮らしていることを見るに、父の死後は詐欺師の子として差別的な扱いを受けたのかも知れない。そういう背景からも「ラピュタの真実を明らかにしたい」という意思の強さに裏付けがある。

 炭鉱夫が重労働であり労働環境が悪いことは言わずもがな、同じような時代の炭鉱夫の平均寿命は30代という話もある。それでも働けるだけマシと考えるとパズーの人生はなかなかハード。今の価値観で見れば児童労働なのもアウトだが、作中のような時代は珍しく無かったし問題視されてもいなかった。

産業革命期イギリスにおける子どもたちの労働と健康 永島剛

乗り物の動きが良い

 本当に単なる感想だが、改めてこの時期の手描きで動くメカが良い。味があるというかCGでは出せない楽しさを感じる。紅の豚飛行艇なんかもそうだが何というか、生きているのだ。描写としてはメカなのだがカートゥーン的な挙動もあいまって生命的な躍動感を感じる。

 特に改めて関心したのは海賊が乗っているクルマ。あの時代のクルマにしてはめちゃくちゃパワーがあってスムーズで高速に動いている気がするがそんな事はどうでもいい。装甲列車から逃げるために木造の線路を駆け抜けるシーン、サスペンションが効いた感じの車輪の動きなんかめちゃくちゃ面白い。線路脇の木造の小屋?なんかを粉砕して行くシーンも最高。個人的な見どころの1つ。

 CGは描写的に間違いがないし手軽ではあるが、そうした良さが出しづらい。

マツダ・ラピュタ - Wikipedia

 ちなみにマツダからかつてラピュタというクルマが出ていたらしい。スズキ車のOEMだが。ご存知の通り「ラピュタ」という名前はスペイン語で「売春婦」という意味なので良い名前とは言えない。*1

銃撃や砲撃の音が良い

 案外、気にしているようでみんな気にしていなさそうな部分。新しい作品であっても安っぽい音になりがちで気になったりするのだが、ラピュタのこういう音はリアル感があって今でも見劣りしない。

 何なら装甲列車の砲撃シーン、要塞砲の砲撃シーン、ロボット兵に対処しようと重機関銃を撃っているシーン、ロボット兵の破壊光線などなど、気持ちが良いくらい迫力がある。

 あとロボット兵を仕留めるゴリアテの砲手、シータが近くにいるのにお構い無しにロボット兵の胸のど真ん中を撃ち抜く超スゴ腕。ロボット兵に初撃を与える時にムスカが「信管を抜け」と指示するのも細かい。

「その石をしまってくれんか。わしにはちと、強すぎる」

https://www.ghibli.jp/works/laputa/#frame フレーム18

 ポム爺さんが飛行石の結晶を見て言うセリフ。子供心に昔からこのセリフの意図をはかりかねていた。そもそも飛行石やラピュタ族の存在を知っていることが不思議なのだが、熱烈な石マニアとして見れば「本当は欲しくてたまらないので俺が変な気を起こさない内にしまってくれ」、という意味かもしれない。そうでなくとも売れば大金になるであろうことは想像に難くない。(誘惑が)強すぎる

 彼と分かれた直後にパズーたちが捕まるので裏切り者説もあるが、連絡する手段も隙も無い上に2人が落ちた場所に意図して居合わせることは難しい筈なので信憑性に欠ける。

 2人を「子鬼」と呼んだ理由は諸説あるが、個人的な解釈としてはあのような廃坑にいきなり現れた子供2人を見て、その非現実感から子供の鬼=伝承的で実態の無い存在と認識したゆえの発言だと思っている。まぼろし2人を現実の存在だと認識してからは「子鬼」と呼んでいない。

作中の技術レベル

 現実の歴史と比較するのはナンセンスかも知れないが、飛行機が登場していてそれなりの要塞がある、重機関銃がある、無線機がありモールス信号もすでに使用されていることから第一次世界大戦の後から第二次世界大戦の間、あるいは第二次世界大戦の最中くらいの世界観と見える。

 ムスカの愛銃としても知られるエンフィールド・リボルバー第二次世界大戦中にイギリスで開発されたものなので、大戦中が有力か。軍というか政府が戦力としてラピュタに目を付けてもまったく不思議ではない。

 「ゴリアテ作れるならラピュタ要らなくね?」と一瞬思うが核兵器クラスのラピュタの雷が使える、ロボット兵も使える以上はやっぱり戦力として欲しいか。

 なお、装甲列車第二次世界大戦を機に歴史から姿を消した。理由はいろいろあるが単純に使いづらいから。線路要るし、輸送しづらいし、線路壊されたら簡単に足止めされるし。飛行船?大きくてのろい的。

困った時のおまじない

https://www.ghibli.jp/works/laputa/#frame フレーム24

 「我を助けよ、光よよみがえれ」という意味の呪文、「リーテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール」、考察しようと思ったがあまり深く考えても無駄なのでやめた。シータの名前「トゥエル」=True、ムスカの名前「パロ」=Parodyあたりから推察して英語で近いものを捻り出せなくはない。

 制御端末としての王家の飛行石、これに対してある種の祈りのように「どうにかしてくれ(意訳)」と命じる呪文があるのは神秘性を孕んだ世界観が垣間見えて面白い。優れた科学技術を持ちながらどこか宗教的なのだ。

庭園と水没した都市

https://www.ghibli.jp/works/laputa/#frame フレーム39

 庭園はギリシャ風? 

 ラピュタ到着後、庭園のシーンで水の底に都市が沈んでいるカットがある。幻想的で探索しがいがありそう、わくわくさせられるシーンだが、今見たら同時に「どんだけ排水性悪い都市設計なんだ」と思ってしまった。

 おそらくラピュタの釜というか底の部分がまさしく釜のように水を貯めているのだろうが、それにしても居住区画まるごと水没するのは残念な設計。線状降水帯なんか来たらたまったものではない(来ないけど)。

ロボット兵のデザイン

 ラピュタ以前にルパン三世宮崎駿監督デザインの同型ロボット「ラムダ」が登場している(ラピュタのロボットとは細部が異なる)。それも内部にナウシカっぽい少女が乗り込む仕様。もとは有人機だったのである。逆にロボットでも人が乗り込むことが多い昔のSFで、無人自律型ロボット兵器を登場させているのは今見ても先進的。

 純粋にデザインとして見るといかにも兵器という感じでもなく、怖すぎもせずかと言って怖くない訳でもなく、絶妙なデザインに思う。

ゴリアテラピュタに着艦できた理由

 王家の飛行石が内部にあったので”竜の巣”の影響が少なかった、無かった可能性がある。

 ちなみにゴリアテの乗員数は360人らしい。全長全幅が近い艦船ではアメリカの原子力空母があるが、乗員はジョージ・H・W・ブッシュで 5,680名 と飛行船ゆえか結構少ない。

はいはいバルスバルス

 たまに「滅びの言葉としては短すぎる」とネタにされる禁断の呪文、バルスだが、前から思っているのは「見えない安全装置」的なものがあるのだろうな、ということ。

 たとえば「2人で飛行石に触れながら同時に唱えないと発動しない」とか。1人で発動できないならシータがパズーに口頭で呪文を教えられる。手を繋いで唱えているのも説明がつくし、実際セキュリティとしても有用。

 映画で原子力潜水艦核兵器発射シーケンスに入った時、2人の上官が2個所で同時にキーを回すシーンを観たことがある。そうしておけば1人が血迷って暴挙に出ることを防ぐことが出来る。

 短いのは「長いと詠唱を邪魔される可能性が高くなる」から。困った時のおまじないくらい長いと唱えている途中で撃たれる可能性がある。

 リーテ・ラトb((バァン!

*1:なので天空の城ラピュタの海外でのタイトルは「キャッスル・イン・ザ・スカイ」