気になってはいたが映画館でまでは観なかった映画、AmazonPrimeVideoで視聴可能だったので見てみた。劇場公開は2023年10月27日。
ネタバレ控えめのざっくりしたレビュー
映画.comでの評価は★3.8だが個人的には★3程度の出来。単純に強そうなおっちゃんがナチスぶっ殺します、というのが「面白い」ならば面白く感じるのかもな、程度。
前もって映画のあらすじを読まないと主人公、コルピの出自や舞台設定がよく分からない。そして主人公に関してあらすじ以上のことが作中であまり掘り下げられない。ナレーション的にその背景が語られることはあっても、実際に何が起きて彼が修羅になったのかが映像化されていないので主人公に感情移入できないまま終わる。
なぜ彼がそこまで不屈の精神を持って敵に向かうのか分からない、視聴者として実感できないので最後まで「タフだな~この人」と思うだけ。やってる事はタフネスでゴリ押しの「ジョン・ウィック」みたいなもの。良く言えば無駄のない構成だが私には説明不足に感じられる。
SISUは不屈の精神みたいな概念らしいので、それを描くという意味ではよく出来ている部分もある。ウィックのようなスマートな強さを期待していると若干スカされるというか、ジョン・ウィックシリーズで言えば最初から3作目か4作目くらいの感じ。主人公もそれなりにやられるし苦戦する。爽快感あるシーンもあるにはあるが、全体的な比率で見れば少なめ。
敵として出てくるナチス兵は実質的に「こいつ悪いな」と思えるのは1人だけであり、その1人のせいで下っ端兵士の命は簡単に失われるので逆に少し可哀想にも思えるシーンがある。欧米ではナチス=絶対悪なのでどんな殺され方をしようが都合の良いやられ役でしかないのだろうが、もう少し敵役としてはヘイトを稼いだ方が良かったのではないか。
動物好きにとってはたとえ演出でもうっと来るシーンがあるのでそこは注意。と言ってもウマだけだが。あとチャプターなんとかっての要る・・・?いらなくない?
ネタバレ緩衝地帯・兼・どうでも良さそうなところ
一般人的にはどうでも良いだろうと思うのでネタバレ緩衝地帯として書くが、ナチスの戦車、トラック、飛行機として登場するそれらがどう見てもナチスっぽく無いのが個人的には常に気になってしまう。
特に戦車とトラックは主要なシーンで何度も映るので余計に。「ナチスの戦車」として出てくる戦車はどう見てもソ連のT-55です本当に(ry。T-55が登場したのは1958年とナチス・ドイツ降伏から約14年後である。国籍が違うしその戦車どっから持って来た。ナチスの戦車とはマジで明らかに形状が異なるので終始気になる。キャタピラから砲塔のシルエットからマズルブレーキから何から何まで違う。一般人に分かるようにクルマで例えるならジュークとジムニーくらい違う。わかりづら。でも映画で「ジムニー」として「ジューク」が走って来たら笑うでしょ。
車上に乗ってる機関銃もナチスっぽく無い。ナチスの機関銃は割と有名なのでちょっと知ってる人なら違和感を覚えるレベル。軍服、帽子とヘルメット、歩兵携行の銃はまだ許せる。どうしても当時のものが用意しづらいので仕方のない部分ではあるが。
ネタバレ込みでの追加感想
コルピが金塊を掘り当てるところから物語は始まる。その金塊をどこかで換金したいんだろうな~という何となくの目的は分かっても、文字通り原野で生活しているコルピが金塊を換金して何に使うつもりなのかが分からないので、命をかけてナチス兵をぶっ殺しながら金塊を持ち歩く様が何とも言えない。「戦争で全てを奪われた俺から何かを奪おうとする奴は全員ぶっ殺す」という気概は感じられるがあくまで視聴者の脳内補完。
金を発見した時の若干アニメみたいな、黄金の輝きでコルピの額が照らされるシーンは正直やり過ぎ感がある。
コルピがヘラヘラ舐めた態度を取っているナチスの兵士を殺すシーンが一般兵士を殺すシーンの中ではまあまあ爽快。ではあるが同じようなシーンが続く訳ではなく、以降のナチス兵を殺すシーンは結構地味。池の中に誘い込んでナイフで首を切り裂き、死体から出てくる気泡で息継ぎするのはもはやホラー。それも全員コルピが始末するのかと思いきや、女性捕虜に奪った銃を渡してトラック一杯の兵士を殺させるなど、「お前が全員殺るんじゃ無いんかい!」と思う場面も。どこで使い方を習った?説明書を読んだのか。
地雷原での戦闘は正直微妙。映画でありがちな「踏んでも足を離さない限り爆発しない」地雷ではなく、踏んだらすぐ爆発する描写になっているのは良いとして、地雷に石を投げつけて爆発させて煙幕代わりにし、砂金を掘る時に使っていた金属製の皿?を盾にして銃撃から逃げるというのはお粗末。お前のそれはキャプテン・アメリカの盾か。
これは動物好き向けに書くが、ウマは最初の方で地雷を踏んで派手にグロい死骸になってしまう。撫でているシーンの直後なので辛いシーン。イヌはナチス兵に撃たれながらも命からがら逃げるシーンあり。死にはしないが途中で置いていかれる。そういうのが演出でも苦手という人は注意。
ダメ出しばかり書いた気がするが、縄をかけられて看板?の柱に吊るされても死なない、それどころか不時着した飛行機のパイロットを何だかんだで殺害、そのまま飛行機に乗って悪霊ばりの追跡力を見せるのは面白い。自らガソリンを被って着火し軍用犬を遠ざける、池の中に引きずり込んでは殺して首の傷から息継ぎ、撃たれても敵兵の死体を肉の盾にし、打たれてもボロボロになりつつ無言で殺しに行くスタイルはもはや本物の悪霊。
最後にナチス部隊のボスを航空機用爆弾に思わぬ形でくっつけてそのまま投下したシーンはとても良かった。なぜパラシュート降下用の輸送機に1発だけ微妙な大きさの爆弾が搭載されていたかを考えてはいけない。