FDM方式*1に関して。光造形方式には今回の内容は関係ない。久々に3Dプリンターを動かしてみて改めて思った内容(前回の記事への+α)。購入を考えている人にとって参考になれば。模型関係で欲しいならやはり光造形一択。
以前、書いた内容は↓から。
積層方式特有の問題
前にも書いた内容だが簡単に。FDM方式は単純に1層1層を積み上げていく方式である。なので下図のようなモデルを作ろうとした場合
実際の印刷はこのようになる(印刷プレビュー)
下の方はキレイな円柱として印刷できるが、印刷の層と平行方向の円柱部分は円柱としてはあまりキレイな形としては出て来ない。このように何らかの形が直交する形状は積層方向の関係でキレイに出しづらい。
(あまり過剰に気にする必要もないが)強度が必要なものなら、この積層方向に対する強度の違いも気にしながらモデリングする必要がある。
寸法精度
FDM方式の寸法はフィラメントを排出するノズル径にある程度依存する。たとえば極端な話、ノズル径よりも幅の狭い壁を3Dモデルで作っても寸法通り印刷することは出来ない。
あくまで喩えであり模式図なので細かい事は勘弁して欲しいが、極端な話、上図のように幅0.58mmで3Dモデル(緑)を作り印刷する場合、ノズル径0.3mmならどうしても幅は0.6mmに近似せざるを得ない。こうしたことが3Dモデルを印刷用データに変換する時に発生する。
また、フィラメントは円形ノズルから溶けた状態で排出される。なので当然ながらいくら3Dモデルでエッジのあるモデルを作成しても、実際にはそこまでエッジが立つ訳ではない。
上図、左は印刷前の理想的な3Dモデル、右がそれを印刷したものの模式図。少し誇張しているがよく見れば角の部分は概ねこんな感じで、前述したようにノズル径が円形であること、さらに熱されたフィラメントが冷めるにつれて収縮することからこのような角の形状になる。
分かりやすいように誇張してあることは重ねて書いておくが、特に角の部分は丸みがついていたり、あるいは少し外側に膨らんでいたりするのが分かるだろうか。こうした誤差があるので、3Dモデル上でピッタリ嵌まるような構造を印刷するとフィットしないことがある。また、上図で左側面の壁に出ている筋は内側のインフィルとの接続部分。
先程の印刷物の断面図はこのようになっている。内部はインフィルという充填構造になっており、みっちり中身が詰まっている訳ではない(そういう設定も出来るがフィラメントのムダ)。で、この内部にある仕切り板と外側の壁とがつながっている場所とそうでない場所とでは、フィラメントの収縮の仕方が違う。印刷時に熱されていたフィラメントが冷めて縮む仮定で、この外壁と内壁との接続部分は比較的に縮まない=接続部分が先程の図のような縦の筋として浮かび上がる。見た目的にはあまり良く無いし、可動部分にも出る可能性があるならなおさら良くない。インフィルの充填率を上げて平坦に出るようにする、あるいはインフィルの形状を変えてみるなどするしかない。あるいは印刷したあとに削るか。因みにヤスリがけもデザインナイフでの切削もした事があるが地味になかなか硬い(一般的なPLAで)。なので印刷した後にヤスリがけすれば簡単に削れてくれるだろう、と思うのは間違い。工具があって修正すべき場所が少ないなら楽だろうな、という感じ。
結局、3Dプリンターは”買い”なのか
結論から言ってFDM方式の3Dプリンターはあまりおすすめしない。模型関係で3Dプリンターが欲しいなら、造形可能サイズは小さいし面倒くさい処理が必要なものの、積層痕が目立たずに高精なモデルが印刷できる光造形方式を買うべき。*2FDM方式の3Dプリンターは根本的に出番が少ない。大抵は既製品を買ったり工作でもすれば何とかなる。買ってから個人的に役に立つものを作れたのは指の数で足りるくらい。ペン立てはかなり気に入っているが、単純な直線の組み合わせなら材料を自分でカットして接着するなどすれば良い気がする。
ただしまったく用途がない訳ではなく、YouTubeなんかでもたまに見る「自分でラジコン設計してそのシャーシとか作るぞ」、とかならアリではある。というか私はそれをやりたい。3Dプリント委託サービスもあるがちょっと大きいものを作ろうとするとすぐ1万円オーバーとかするので、モノによっては自宅で印刷したほうが安い。メリット・デメリットを考えると使わない時間が圧倒的に長いので微妙にデメリットのほうが大きいような気もする。YouTubeで「cool 3Dprint things」みたいなワードで検索するとしょーもない小物の紹介ばかり。要はそういうこと。頻繁に使うとしてもおもちゃづくりが関の山。
ペン立ては作って1年以上経つがまあ使えている。