ヤマネコ目線

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素人が3Dプリンターを買って半年経った

 厳密には半年以上だがそんなことはどうでも良い。3Dプリンターを買って感じた事をいろいろを書きたいだけ。文句メイン。

モデリングが出来る事は前提としてお話します

購入したのはこの機種(安心してください、アフィリンクじゃないですよ)

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印刷できるモデルとそうでないモデル

 この記事はこれから3Dプリンターを買ってみたい、使ってみたいという人向けに書くので、一応最初に書いておく。

3Dプリンターならどんな3Dモデルも印刷できる訳ではない

 知っている人は知っている大前提。立体物にするからには、現実世界で立体物として破綻していないモデルでないといけない。塞いであるべき場所が塞いでなかったり、物体としてそもそも厚みが無かったり、といった場合が主なエラー要素。好きなVtuberのモデルを印刷したいとか、ゲームに出てくるモデルを印刷したいとか、そういった場合はここが問題になる。Vtuberなどのモデルは厚みがない部分が多いだろうし、ゲーム用の3Dモデルは負荷軽減のために見えない部分を作らない事が多い。なのでそのまま印刷しようとすると前述したような引っかかる箇所がある。

 よくあるのはキャラクターモデルのスカートの裏が無い、ロボットモデルの腕が繋がっているようで3Dモデルとしては繋がっていない等。

フィラメントは吸湿で劣化する

 普通のプリンターで言うところのインクにあたるのがフィラメント。PLAという樹脂で印刷物はそれなりに強度があり、かつかなり軽い。それは良いのだがこのフィラメント、吸湿すると劣化する。何が問題かと言うと印刷する時に糸引きや精度の悪化が起こる。出番が多くはないので、フィラメントは余りがちになる(そして劣化していく)。乾燥機などで乾かせばいいらしいがまあ手間がかかる。

参考:フィラメント(ANYCUBIC)

ぶっちゃけ出番が少ない

 世の中、ほとんどの事は既製品で対応できる。なのでフィギュアを作りたいとかプラモデルのパーツを作りたいとかでも無い限りあまり出番が無い。買ってからこれまでに作ったものと言えば・・・マイクスタンド、ペン立てと容器の間仕切り、ストーブ給油用のアタッチメントくらいか。興味本位で買ったのとホビー用途でいずれ使うので後悔はそこまでしていない。

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オリジナルペン立て

 ペン立てはそれなりに大きいものになったが、印刷に丸24時間くらいかかった。デスクと用途に合わせたものを作れるのは良いが、24時間とそれなりの電力、フィラメント(プリンターでいうインク)を消費して作るだけの価値はあったのかどうか・・・(便利には使っているが)。これならばレーザーカッターみたいなのを買って、素材を平面から切り出した方が時間的にも電気代的にもコスパが良い気がする。とにかく、実用的なものを作ろうというだけなら出番が少ない。

 今のところ使用しているフィラメントはPLAのみ。出来上がった物はかなり軽い。大きさがそれなりにあってもかなり軽い。厚みがある部分はインフィルと呼ばれる構造体のみで中身がほぼ空洞みたいになるからか、見た目以上に軽くなるのだろう。強度はそれなりに出ると思う(モデルや印刷方向にもよる)。

積層方向による制約

 まずは下の画像を見て欲しい。普通のプリンターでいう印刷プレビューはこういう感じ。3Dモデルを印刷するには専用のスライスソフトと呼ばれるソフトを使い、どのように積層してモデルを印刷するかというデータを作る。

3Dモデルをそのまま印刷できる訳ではない

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印刷プレビュー(スライスソフト)

 FDM方式でも光造形方式でも、積層方向による強度差はある(はず)。感覚的にはFDM方式のほうが(おそらく)差は大きい。

 この積層方向による強度差、印刷した時のモデルの出来が左右されるのはアタマでは理解できていても、実際に使ってみるまでなかなか実感できない点。当然ながら積層方向に並行な力には強く、積層方向に垂直な力には弱くなる(モデルにもよるが)。

 そして上の画像を見てもらうと分かるが、単純な円筒でも下の方はキレイに印刷できるのに対し、上の方は円筒が90度曲がるので円筒としてキレイなものにはならない(円がキレイに出来ていない)。同じ円筒でもやはり見栄えが変わるし強度も変わって来る。単純な形状であっても出来栄えを考えると印刷できない、したくない場合が出てくる。

 余談ではあるがFDM方式でより強度が出る印刷方法は

  • 印刷用ノズルの径を小さいものに変える
  • フィラメント加熱温度を高めにする
  • 印刷速度を速くする

の3つ。ノズルを小さいものに変える=印刷ヘッドから出てくるフィラメントがより細くなる=フィラメント同士がより密着するのでくっつく力が強くなる(ただし印刷にかかる時間は増える)。フィラメント加熱温度を高くすると、フィラメント同士がくっつきやすくなると同時に冷めるまでに時間稼ぎが出来る(ただし電気代は多少増える)。印刷速度を速くすると、印刷されたフィラメントが冷める前に次の層を積み重ねるのでフィラメント同士がくっつきやすい(ただしプリンターの精度によっては速くするのがそもそも無理)。

印刷物が反る

 一番アタマを悩ませているのがこれ。フィラメントは200℃に加熱されて出てくるが、印刷された部分は自然と冷えてくる。すると印刷されている部分と既に印刷が終わった部分で温度差が生じ、主にステージに接している部分が反って来る。

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印刷中の模式図

 これがなかなかくせ者で、両面テープを貼ったりしているが解消しない。原因が温度差なので保温性の高い囲いを作るなどすれば良いらしいがなかなかの手間(それも印刷過程が見づらくなる=途中で失敗していても気づきづらい&嵩張るものがさらに嵩張る)。対策は何かしら必要。対策しなかったらしなかったで改善しないし、最悪の場合は印刷物がステージから外れて訳のわからないスパゲッティモンスターみたいになる。

 印刷途中で印刷物がステージから外れるのは最も避けたい状況というか、それが出るともう印刷失敗確定。逆に言えばステージから外れるようなモデルはそもそも印刷できない(ステージに接する面積が狭いと簡単に外れて失敗まっしぐらコース)。

 それなりに高性能な3Dプリンターでは一応この問題は少ないらしい。逆に言えばお手軽に3Dプリンターを使ってみたいと思えば絶対ぶち当たる問題。ステージに接する面積が少ないモデルが印刷できないのはおそらく高性能な3Dプリンターでも同じ*。

*完全に業務用の印刷方法が特殊な場合は別

それなりに場所を取る

 もちろん3Dプリンターは場所を取る。造形可能サイズが大きいものを買いたいのが普通だが(?)、造形可能サイズが大きい=プリンターもそれなりに大きくなる。私は実家暮らしで我が家がクソ田舎のムダに大きい家なので、モノを置く場所くらいいくらでもあるが、これが賃貸物件ならそうもいくまい。押入れにいれるという人は多い。そして使わない時もしっかり場所は取る。

音もする

 騒音問題は幸い、思っていたほどではなかった。ただ全く気にならないという訳もなく。スキャナーの音が印刷中ずっと鳴っていると考えてもらえばイメージしやすいと思う。ウィーンウィンウィッウィッウィッウィッウィッとずっと鳴っている。おそらく隣で寝ろと言われたら無理。レオパレス物件で稼働させるとたぶん、隣室からクレームが来る。機械的振動はあまり無い。

キャリブレーションが面倒

 地味に面倒くさいのがキャリブレーション3Dプリンターはステージと呼ばれる台に立体を印刷していく。この時、フィラメントが出てくるノズルとステージとの距離が適切でないといけない。離れすぎの場合は定着せずまともに造形されない、近すぎの場合は印刷物が若干潰れる(と思う)。その調整をステージの4隅で手動で行う。キャリブレーションモードに入るとボタンを押すごとにノズルが4隅の所定の場所へ移動するので、それぞれの箇所でコピー用紙をステージとノズルの間に挟みながら調整する。コピー用紙が引っかかるか引っかからないかの絶妙な隙間になるように調整するがこれがまあ本当に感覚的なもので人には伝えづらい。ちなみに一般的なコピー用紙の厚みは0.09mm(ちょっと厚めの紙とか薄めの紙とかでやると多分失敗する)。

 一度キャリブレーションすれば後はしばらく大丈夫だが、何週間かして使う時にキャリブレーションするとズレているので使用前には確認が必要。金属フレームなのでおそらく、寒暖差でも誤差が出ているのだろう。自動キャリブレーションしてくれる機種もあるようだが、調べた限り2022年1月末の時点ではそこまで出来るプリンターは少ない。というか一般人が手を出せる価格帯ではほぼ無いと考えて良い。

自分で設計したものがその日のうちに形になる

 ここまで文句を書きなぐってきたが、良い点にも触れておかないといけない。まず何より自分で設計、モデリングしたものが下手すればその日のうちに形になるのは素晴らしい。どちらかと言うと製品のモック製作に使われるのも納得がいく。モデリングも慣れればそこまで時間は掛からない(あんまり掛からないとは言ってない)。

委託するより安い(特に大きいもの)

 冒頭に画像を載せたオリジナルペン立て、DMM.makeで印刷を委託すると確か最安値で9万くらいになった気がする。印刷に24時間かかった事を考えても自宅で印刷したほうが安く済んだのは確かだ。当然と言えば当然だがやはりこの差は大きい。委託サービスは印刷物のサイズに基づいて値段が決まるので、大きいものほど値段は高くなる(厳密な体積ではなく1辺の最大サイズ四方のような感じ)。それに自宅まで届くまでに時間がかかる。比較的小さいものでも確か1~2週間はかかる印象(実際に試したことはある)。

 逆に言えば委託サービスは比較的小さなものであれば安く済むし、材質によっては業務用のそれこそ一千万クラスのプリンターで印刷してくれる。家庭用のプリンターでは扱えない材質でのプリントにも対応してくれるし、印刷に失敗していればクレームを入れる先だってある。特にDMM.makeの委託サービスで使える材質の中で、MJFと呼ばれるものは印刷に前述したような積層方向による強度差が無い(しかも比較的安いし強度もある)。うまく使い分けることが大事。