ヤマネコ目線

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続:「うっせぇわ」の人は一発屋じゃねえ!

 俗に言う「うっせぇわの人」、女性歌手 Ado 、まだ「一発屋」とか思ってる人がいるのでたまにこういう記事を書いている。後述する「歌ってみた」動画もYouTubeに投稿されるや否や1日で約100万回再生されており、一発屋」とか言ってるのはもはや恥ずかしいレベル。Ado”さん”と呼びたいが前回に続き以下、敬称略。

 直近に投稿された「歌ってみた」がやはり凄かったので改めて。前回記事は↓

manuller416.hatenablog.com

直近の「歌ってみた」

 直近に投稿された「歌ってみた」動画は2つあり、「Adoに歌って欲しい曲」が1つはボカロ限定、1つはそれ以外からでTwitterハッシュタグを使って募集されていた。選ばれたのは下の2曲。

罪と罰 / 椎名林檎 feat.Ado

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 原曲について端的に書くと、リリースは2000年1月、1970年代風のロック・バラードで巻き舌と絶叫に近い掠れ声での歌唱が特徴。オリコン週間最高4位。歌詞の内容は椎名林檎氏によると「病床に臥せっていた時の日記」。最初にドストエフスキーの同名小説が頭をよぎるがそれは全く?関係ないようだ。

 これはその原曲を尊重しつつAdoなりに歌っていてかなりカッコいい。いつも思うがAdoの「歌ってみた」は「歌ってみた」ではなく、良い意味で「Adoの曲にしてみた」という感じに思える。ただ原曲通りに歌うだけでなく、確実に自分の作品としても完成させて来る。その辺りは賛否両論あるかも知れないが、私はただ原曲を真似るよりはその人の持ち味を生かした方が絶対に良いと思う。原曲MVも見てみたが個人的にはAdo ver.の方が好き。

 MVは文字とエフェクトだけとかなりシンプルだがそれも演出がかなり凝っていてかなり良い。”歌い手”は顔出しをしないのと、元のMVが実写なのもあって文字だけにしたのだろう。原曲のMVでは度々モノクロームなシーンが登場するが、白と黒だけの文字列にこだわったのもある種のリスペクトだろう(Movie:Saki Naito / vanishock)

神っぽいな / ピノキオピー feat.Ado

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 先の「罪と罰」を聴いた後にこれを聴くと、本当に同じ人が歌っているとはなかなか思えない。知らないと別人とかグループでやってるとか思いそう。

 原曲は作詞作曲編曲がピノキオピー氏、2021年9月にニコニコ動画へ投稿されたのが初出。歌唱は初音ミクで時おりSofTalk(俗に言う”ゆっくり”)っぽい声が入る。歌詞の内容は現代人への皮肉的な内容を多分に含む。もっとも、この曲の歌詞で煽られているのはこの歌詞の内容を煽りだと捉えずに”踊れる”人間だろうが。

 これまでのAdoの持ち味とは少し違い、「ダーリンダンス」で見せたような小悪魔チックな声をメインに据えている。正直、地声が少し低めで”カッコ良いお姉さん”チックな感じがする人なので、こんな声まで出せるんだと驚かされる。声色そのものが目まぐるしく変わって行くのが面白く、Mixありきとはいえどこまでアナログ的に声色を変えているのか気になる。Mixを担当したさぶろう氏いわく↓

 実際に聴くと50人とまでは行かずとも、「もしかしてAdoって5人くらいのグループでいらっしゃる?」という感じ。歌い方も例に漏れず作品として完成されており、聴いていて圧倒される、気持ちいい、癖になる。

 原曲は↓。完成度が高く、初音ミクの歌い方がかなり人間のボーカルに近いと感じる。時たま入るゆっくりの音声が少し違和感あるが、初音ミクは声色を変えるのが難しいのだろう。とはいえAdoの歌ってみたと聴き比べると、まだまだボーカロイドが人間に勝る日は来ないように思う。

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余談:歌詞の簡単な考察

 「神っぽいな」の歌詞の簡単な考察、要点の説明。独自解釈を含みます。矛先が自分に向いていないと思う人間と、そうでない人間とで受け止め方が変わると思う。私は後者。正直、真意は知らん。あと「うっせぇわ」も同じだがあくまでAdoは”歌っているだけ”なので、歌詞の意図とAdoは何ら関係ない。何ならご本人は煽りスキルとか皆無。

何それ意味深でかっこいいじゃん

 明らかに「かっこいい」とは1㍉も思っていない。

それっぽい単語集で踊ってんだ 失敬

 「抽象的な単語ばかりで踊らされてるんだ(あ、今煽っちゃった?)失敬」という感じか。「神ってる」、「神っぽい」、「ヤバイ」、そういった抽象的なそれっぽい単語をつかいがち、流行に踊らされがちな現代人を冒頭から全力で煽りに行くスタイル。タイトルや歌詞に抽象的な語句を使うのもあえての選択か。

もういいぜ もういいぜ それ

もういいぜ もういいぜ 逆に興奮して来たなあ

 「逆に」が何の逆なのか分からないのがかえってまた煽りになっているか。捉えようが難しいが、私は「(流行り過ぎて)もういいぜ それもういいぜ (まだやってんのかよwwwって煽れるから)逆に興奮してきたなあ」、と解釈する。

おっきいね おっきいね 夢

おっきいね おっきいね

景気いいけど 品性はThe End

 YouTuberやInstagramer、芸能人などインフルエンサーと呼ばれる現代の成功者への皮肉が感じられる。夢は確かに大きいし景気も良い、しかし(人によるが)品性は”終わってる”、The End、地の底まで落ちている。正直言いすぎな気もするし他ならぬAdoがインフルエンサーそのものなのだが、そのAdoがこの曲を歌うのもまた面白いか。

Gott ist tot

 「神は死んだ」、ニーチェが用いた用語であり本来は宗教批判と虚無主義を意味する。「神っぽい」という語から選ばれたフレーズだろうか。あまり深く考える必要がないようにも思う。単純に「救いようがねえ」といった感じか。

 より深く考察するならば、「神は死んだ」は虚無主義の宣言でもある=それ以前の最高価値(真理や世界の目的、神)の喪失を意味し、表面的な価値観、抽象的な語句だけで踊らされ、物事の本来の価値を見失っている現代人をニーチェの語を用いて皮肉っているように思う。

神っぽいな それ 卑怯

神っぽいな それ (My God)

アイウォンチュー ウォンチュー

IQが下がっていく感じ

 「卑怯」は堂々としておらずズルいこと、卑しいこと。どのような優れた物事も「神っぽいな」で済ませる姿勢が正面から物事に向き合う姿勢に欠け、卑しいと言うことか。「アイウォンチューウォンチュー」は「JPOPにありがちな無意味な歌詞にIQが下がっていく感じがする」と言う意味と、後述するある種の羨望から「私もお前らみたいにIQが下がっていく感じが欲しい(でも要らん)」、というダブルミーニングに思う。

邪心っぽいな それ 畢竟

邪心っぽいな それ (My God)

アイヘイチュー ヘイチュー 害虫はどっち

 「邪心」は文字とおり悪い心。「邪神」ではない。上記の歌詞に続けて「その心の在り方良くねえなあ」という感じか。「畢竟(ひっきょう)」は「つまるところ、結局」の意で卑怯と韻を踏んでいる。正直初めて知った。「畢」も「竟」も「終わる」という意味の漢字であり、究極、至極を意味する場合もある。

「アイヘイチューヘイチュー」でまた「アイウォンチュー」と韻を踏みつつ、IQが下がり切っている人間たちに敵意をむき出しにしている。「害虫はどっち」というフレーズからは、「踊れない人間(=少数派)は迫害されがちだが良くない存在はどっちだ(お前ら多数派の低IQどもだろ)」という意思も感じられる。

(中略)

神っぽいな それ 卑怯

ぽいな ぽいな ぽい 憧れちゃう!

 「神っぽい」ものを羅列したあとに来る「卑怯」は前述した卑怯の使い方とは少し違うかも知れない。「憧れちゃう!」に含まれるのは本当の意味での憧れがごく少量、皮肉が大半な気がする。これまで煽り倒しつつも頭空っぽにして踊れる人間の楽さへの憧れがごくわずかにありつつも、それにはなれない。「そんな楽で卑怯な人間になれたら良かったのにな、憧れちゃうわ」とやはり思いっきり煽りに行っている。

メタ思考する本質は悪意?

人を小馬鹿にしたような作為

 ここから「Do you know ?」までは韻を踏むために語句を選んでいるため、言葉とおりの解釈ではなかなか意味が通らないのであまり深く考えるべきではないかも知れない。

 まず「メタ思考」は物事を俯瞰的に(上から見下ろすように)考えていく思考方法だが、ここでは単純に「上から目線」と解釈して良いと思われる。「上から目線で分かったような事言うけど、それって悪意じゃないの?」か。

 「作為」は「つくりごと」「積極的な行動」。ここでは?が付いていないので、上の行の言い切りと考えると「(その上から目線って悪意じゃなくて)人を小馬鹿にした行為なのか。納得~」みたいな感じ?

無為に生き延びるのは難しい

 「無為」は「何もしないでいること」が主な使い方だが、ここでは「ありのまま、自然なまま」の意だろう。「ありのままで生きて行くのマジムズカシ~」的な?

権力に飲まれて揺らぐ灯り

 「灯り」はインフルエンサーを指すのだろう。多くの虫ケラ同然の人間を引き付ける灯りは、権力に飲まれる(影響力を持ち過ぎる)とその在り方が揺らいでしまう。

神を否定し神に成り代わり

玉座で豹変する小物達

 ”踊れる”人間、思考能力が低く簡単に流行に流される人間に支持されて上へ行った小物達は、その成功の果てで物事の本来の価値を否定し、私こそが価値であると思い込む(神に成り代わり)ように豹変してしまう。

批判に見せかけ自戒の祈り

 これは批判と見せかけて実は自戒(自分もそうならないよう注意を促す)の祈りだった・・・?

Do you know ?

 知らん。

何言ってんの?それ ウザい

何言ってんの?それ

意味がよくわかんないし

眠っちゃうよ マジ

 再び煽りパート。思考力のない人間の言動をあえてマネて遠回しに「お前らってこういう感じだよね?」と言って見せる煽り。

 どうでもいいがYouTubeのAdoの切り抜き(AdoSense)でAdoさんが「何言ってんの?wwwな~に言ってんwwの?wwww」みたいな感じで言ってるシーンがあるがその言い方が好き。

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飽きっぽいんだ オーケー

みんな飽きっぽいんだ オーケー

踊れるやつちょうだいちょうだい ビーム

 「あ~そっかみんな飽きっぽいんだね~そっかそっか~」というある種の呆れを感じさせる。「踊れるやつちょうだい」はこれまでの「見る側」ではなく「大衆の前で娯楽のために裸踊りできるやつ」の意だろうか。もう開き直って「みんな飽きっぽいんだからバカできるやつどんどん連れて来い!」的な?

きっしょいね きっしょいね それ

きっしょいね きっしょいね

逆にファンになって来たじゃん

 どちらの取り方が正しいのかは知らないが2通りの解釈ができるように思う。

 まず「気色悪い気色悪いって言ってるけどそれだけ構うって事はもう、ある意味でファンになってんじゃん」という、考えなしに誹謗中傷するアンチへの煽り。

 もう1つは「気色悪いけど逆に(私がアンチ的な意味で)ファンになって来たわ」。

ちっちゃいね ちっちゃいね 器

ちっちゃいね ちっちゃいね

天才ゆえ孤独ですね かっけえ かっけえ

 「器が小さい」と断言してからの、「(本当は器が小さいから孤独なんだけど)天才だから誰にも理解されず孤独なんですね、かっこいい~!」という煽り。絶対に欠片もカッコいいとは思っていない。バチバチに煽るじゃんマジで。やめろ。その攻撃は俺に効く。

神っぽいな それ 卑怯

神っぽいな それ (My God)

超健康 健康 言い張って

くたばっていく感じ

 「私たちの方が健康的なんだ!と言いつつ本質的に人としてくたばっていく姿勢が卑怯」とでも言おうか。

ヤケっぽいな それ 畢竟

ヤケっぽいな それ (My God)

もう哀愁 哀愁

エピゴーネンのヒール

 「(先述した姿勢は)もう自棄になってるみたいだね。哀愁すら感じるわ」といった感じか。「エピゴーネン」は「創造性に欠けている模倣者」。現代風に言えば”パクリ野郎”。「ヒール」の解釈に悩むが、私は「悪役」の意味を推す。意訳すれば「流行りに乗って人のマネばっかりしている思考停止の害虫野郎」とでも言おうか。え?そこまでは言ってないって?

(中略)

すべて理解して患った

無邪気に踊っていたかった 人生

 ここまで煽りに煽り散らして来たこの歌詞の主人公だったが、最後の最後で弱音?を吐いている。何だかんだ言って、これまで批判して来た愚かな大衆、踊らされる人間たちに無邪気に混じっていられる方が良かった、その方が楽だったのに。という感じが出て来る。ここまでに出てきた「憧れちゃうわ」は批判的な意図が大部分を占めるが、本当の意味での憧れもごくわずかに含まれているのかも知れない。