CESでNVIDIAからRTX5000シリーズの発表があった。株主としてもPCオタクとしても嬉しいニュース。
現状
NVIDIAのグラフィックスカードで最新のラインナップを性能順に並べると、上から
- RTX4090
- RTX4080 SUPER
- RTX4080
- RTX4070 Ti SUPER
- RTX4070 Ti
- RTX4070 SUPER
- RTX4070
- RTX4060 Ti
- RTX4060
となっている。「SUPER」と付くものは後から発表される性能強化版、「Ti」は「Titanium」の略で「ちょっと強い版」。要は40xxのxxに入る数字がデカいほど、TiやSUPERと付くほど高性能と考えて良い。
性能的というかスペック的にはTiだSUPERだが付こうが、たとえば RTX4070 Ti SUPERが RTX4080 を超えることは無い。なので絶対的な指標としては40xxのxxの数字を見るのが楽。
ただし、性能が高ければ高いほど値段も消費電力も高くなるので、とりあえず一番上のRTX4090やRTX5090を買っておけば良いと言う訳でもない。RTX5090の予想価格は日本円で約40万円、TDPも575W*1と性能も価格も消費電力もモンスタークラス。おそらく物理的な大きさもモンスタークラスになるだろう。場合によってはPCケースの中に収まらない、ということもあり得る。
性能向上と価格
今回の発表で注目を浴びた内容の1つに、次期グラフィックスカードでミドルクラスのRTX5070が現状の最高グレードであるRTX4090と同等の性能を持ち、なおかつ値段が 1/3程度になることが挙げられる。
言ってしまえばかつての最上位グレードがミドルクラスで実現してしまう訳で、クルマで言えば「今まで売ってたスープラと同じレベルのもの、250万円台で売ります。古いスープラ買ってくれた人ごめんね」くらい衝撃的。
頑張って最上位グレードを買うことは全く無意味とは言えないにせよ、将来的に出てくる製品の性能を考えればコスパの良さでは最上位を買うのが正解、とも言い難い。「何が何でもその時点で最高の性能が必要なんだ」というマニアや企業でないなら、RTX~90は一般の消費者には無用の長物といえる。
この公式の価格はおそらくリファレンスファンモデル?と思われるので、実際に各メーカーからオリジナルファン、OC*2モデルが出て来たり、発売直後のご祝儀相場が崩れればこれより下がる可能性はある。円安で上がる可能性もあるが・・・。
何を買うべきか
発売前にこれを書くのは時期尚早だが、個人的に狙い目になると思っているのはRTX5070 Tiか RTX5080。いずれもTDPが 300W、360WとRTX4070Tiから乗り換えやすそうな範囲、かつ画像生成AIを動かす場合にしろ、ゲームをするにしろコスパが(比較的)良さそう。
ゲームをするだけなら並大抵のものはRTX5070で確実に動く筈で、ゲームだけでAIを触らないならRTX5000シリーズ発売後に型落ちのRTX4000シリーズ、RTX3000シリーズを狙う方が良い。多少値下がりはするはず。ぶっちゃけゲームするだけなら RTX 4060 Tiあたりで良い。APEXなんかRTX2000シリーズでも余裕。
公称値のうち、ゲーム性能に影響しそうなCUDAコア数(上記の表には載っていない)を価格で割ると以下のようになる。
正直言って誤差レベルの話だが数値として見た場合、1円あたりのコア数が多いのはRTX5070Tiになる。
同様にAI関連のスコアを示すAI TOPSを先に示した参考価格で割ると以下のようになる。
公称値から見た場合、AIを使うなら一番コスパが良さそうなのはRTX 5070 Ti。ちもろぐ氏の過去の記事でも画像生成AIを使うなら RTX 4070 Tiが一番コスパが良いという結論が出ていたので、その辺りは変わらない。価格的にもまだ手を出しやすい部類。
搭載されるVRAM*3を見ても RTX 5070 Ti と RTX 5080 ではメモリ帯域こそ差があるものの、16GBなのは変わらないので差は少ない。なので画像生成AIを使う場合はRTX 5070 Tiを買うのが良さそう。
画像生成AIにおいてVRAMの大きさは生成できる画像の大きさに直結するので、大きい画像を生成させたいなら基本的にVRAMが多いものが良い。この点でVRAMが32GBもある RTX ~90 系が有利であることは変わらないが、最近は少ないVRAMでも実用十分に大きな画像を生成できるのでやはりコスパは RTX~70系が有利。
AI TOPSにおけるコスパだけ見るとRTX 5070の方が若干 RTX 5080よりもコスパが良いように見えるが、VRAMの量が RTX 5070 で12GB、RTX 5080 で16GBなので画像生成AIを使う場合、RTX5080の方が良い。
画像生成AIに関する私見
賛否両論さまざまあるかと思うが、画像に限らず生成AIは所詮は道具。最終的な成果物の出来は使う人間に左右される。今は技術普及の過渡期なので様々な反発もあるだろうが、いずれ生成AIも使いこなしてなおかつ自分自身の技術もある、という人間が天下を取るようになるだろうと思う。そこで取り残されるのは画像生成AIも使えないし実力も半端な人。使える道具は使う方が良い。
Pixivなんかも画像生成AIの画像で溢れているが、画像生成AIを使っている人間の中でもやはり良い感じの画像を出している人とそうでない人が分かれつつある。AIさえ使えば誰でも、という訳ではないし、進化し続けるAIについて勉強し、ついていける人間でなければ見劣りするようになっていく。
個人的には画像生成AIを好きなキャラクターの画像を作りたいがために研究している。公式から供給が少なすぎる上に、画風が変わり過ぎてもはや訳が分からなくなっているのでこっちで一番良いと思う時期の画像を出せるようにしたい。自分自身の腕だけで良い感じに描けるほど実力は無いのでAIは頼りになる。
LoRA作成はもちろん、今年はそれで作成した画像の中で出来が良いものに自分で加筆修正して学習素材としさらに理想の画像生成を目指すつもり。推しの絵の自給自足を目指す。
余談:演算性能
今から約23年前の2002年、初代地球シミュレータが登場した。初代の演算性能は約40TFLOPS*4だった訳だが、改めて演算性能を調べて見ると今、私が使っているメインPCのGPU、RTX 4070 Tiで約40TFLOPSらしい。23年前とは言え、気づけばかつてのスパコンレベルのものが家庭に普及していた。技術の進歩恐るべし。
ちなみに2015年まで運用されていた第2世代地球シミュレーターの演算性能で 131TFLOPSらしい。RTX 5070 Tiの演算性能が 133TFLOPS なので10年前のスパコンと同等。もはや「あんたそれで何をしようってんだよ」というレベル。それをたかだかTDP 300Wで出せるのだからNVIDIAの株価が爆上がりするのも納得。
書くまでも無いが一応補足しておくと、スーパーコンピューターと呼ばれる種のコンピューターと家庭で使うコンピューターでは使用方法や目的その他あらゆる点が違う。演算性能はあくまで理論値であって、予算度外視で何時間も全力でぶん回し続けられる業務用機器と、電気代を気にしながら市販の電源ユニットが許す範囲でそこそこ使う家庭用機器では最大性能を発揮できる時間が違う。
なのであくまで参考までに、の話。理論値はあくまで理論値であって実際は異なる、というのは理系において常識(というか理系文系関係なく常識になって欲しい)。