ヤマネコ目線

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いなば食品の謝罪?文が面白い

 一般職の女性の9割が入社辞退し、その理由が

  • 何度も求めたにも関わらず事前に労働条件が明示されなかったこと
  • 募集要項に記載の給与よりも実際の額が3万円も少なかったこと
  • 新しい社員寮のはずが雨漏りするようなボロ屋だったこと
  • 希望配属先について「ほぼ希望通り」と言っておきながら実際は第3希望ですらなかった

等で注目を集めているいなば食品。今度は悪い意味で面白い謝罪?文を出して話題になっているのでネタにする。当のいなば食品のサイトが繋がりづらいので、Xで拾った魚拓をもとに文字起こしして解説しておく。

タイトル:由比のボロ家報道について

 まずプレスリリースのタイトルからして面白い。本来は「弊社、社員寮に関する一部報道につきまして」くらいで良いと思うが、わざわざ「由比の」と地名を明らかにした上で、その是非や事実はともかくとして「ボロ家」と書くことで社員寮がボロ家であることを認めてしまっている。

 報道で「ボロ家」と書かれたから?ボロ家という言葉を使ったのかも知れないが、それでも他社から言われるのと自社で書くのは違う。以下、ブルー、太文字で順次、本文より抜粋。

 この度は、由比のボロ家報道につき皆さま方に多大なるご不快をおかけいたし、心よりお詫び申し上げます。ご指摘の点につき、誠意をもって改修に全力を挙げております。誠に申し訳ございませんでした。

 「多大なるご不快をおかけいたし、」のあたりが少し引っかかる。せめて「皆さまにご不快な思いをおかけし、」では無いだろうか。「~いたし」を使うならせめて語尾は「いたしまして」であって欲しい。「ご指摘の点につき」も「ご指摘の点につきまして」の方が個人的には良い感じがする。

 「誠意をもって改修に全力を挙げております」も正直嘘くさい表現。「誠意」だの「全力」だのという言葉を多用するあたりが余計に黒く見えるので、「現在、改修工事を進めております」程度の方が現実味がある。本当に誠意をもって全力を出せるなら最初から今回のような事態にはならない。

 由比のボロ家・雨漏り住宅と指摘されたシェアハウス1件に関してですが、同地由比のシェアハウス対象物件は計6棟でございます。既に3棟に5名の一般職(転勤のない事務職・工場勤務職)入居者がおり毎日勤務しております。

 蛇足。正直何の必要も無い一文。達成できるかどうかはともかくとして、このプレスリリースの目的は一般消費者、世間一般に対して「報道されている箇所は既に修繕を進めていて報道で指摘されたような内容は解消しつつ/しています」と弁明するためのものではないか。

 そこでシェアハウスがどの地域にあって、何棟あって、どんな職種が何人住んでいるなどと言った情報は全く必要無い。書いた側としては「文句を言わずに住んでいる人もいるんです」と言うつもりか知らないが世間一般からの評価は変わらない。ボロ家はボロ家。新入社員が入った時点で雨漏りしていた事実も変わらない。

 今回の対象は唯一の新規の1棟でした。弊社はこの物件を含め、全てのシェアハウスに関して3月20日~26日にかけ、全家屋の点検・クリーニングを実施、完了しておりました。

 「私達はやるべき事はやっていた」と言いたいようだが、受け手からすれば1週間もかけて全家屋の点検・クリーニングをやって雨漏り(それも電子レンジの前の目立つ場所)を見つけられなかったのか、と取られてしまう。2024年3月の該当期間の天気は天気予報を見れば23日~26日にかけて雨マークがある。

 強いて言えば新規=これまでシェアハウスとして運用していなかった物件である、ということで雨漏りの発見が運悪く遅れたと見れなくも無い。ということなら「今回、雨漏りを指摘された物件は新規に運用を開始したシェアハウスで雨漏りの発見が遅れてしまいました」くらいが現実味がある。言い訳は最低限にしておいた方が良い。

 新卒で、勤務場所に原則異動のない新卒「一般職」社員の各位も新たに上記物件に入居し勤務を開始しております。現在今期、新規一般職は合計で43名、辞令で国内外へ異動する総合職の新卒社員55名も弊社に既に入社し、合計2024年新卒入社済社員は「計98名」となりました。

 蛇足その2。で?それが?どうしたの?としか言えない内容というか、今回の問題に関係ない内容。国内外に異動する総合職うんぬんは根本的に関係無い。正直、こうした関係無いことをつらつら書いても受け手は文章の量を水増ししているとしか受け取らない。

 何なら入社辞退をせずに我慢して入った人がこれだけ居るんだな~と悪い方に解釈される可能性もある。

 今後、シェアハウス入居者に対しては、ご負担にならないよう実質家賃の請求を0円にて検討し、実施する決意でございます。

 「タダにすりゃ良いだろ」と言わんばかりなのも気に食わないが、それを差し置いても何か違和感があるというか引っ掛かりがある一文。「実質家賃の請求を0円にて検討し」の実質とはどういう意味か。こういう場所で使われる「実質ゼロ円」にはろくなものが無い*1。それも家賃ゼロを「検討し、実施する決意」とは?検討するのか実施するのか曖昧である。

 実は、10月26日に間質性肺炎の急性増悪で緊急入院し、1月10日に死亡、2月1日に社葬となった副社長で、いままで本件の一切の担当責任者であった総務部長がこの入院期間中の詳細な支持が酸素吸入による呼吸困難でほぼできず、空白となってしまいました。会社は3月15日付で新総務担当を急遽任命したものの改修自体に残った期限に余裕がなく、修正が極めて遅れました点、心よりお詫びいたします。

 詳しく書いているがもう、メチャクチャである。この話が本当であれば、2023年10月26日時点で緊急入院している時点で前の総務部長は仕事が出来る状態に無い。入院した日から後任の新総務担当を任命した3月15日までは約4.7ヶ月。その間に死亡も葬儀(それも社葬)もあってそれでもなお後任を決めなかった、新入社員が入る予定のシェアハウスについて誰も関心が無かったことになる。新総務担当を3月15日に急遽任命とか急遽過ぎるだろ。そりゃ期限に余裕なんか無いわな。

 せめてこういう所は(良いか悪いかは別として)ボカして書けよと思う。言い訳したいという気持ちが先行して下手に詳細を書いてしまい、かえって墓穴をさらに深く掘っている。「担当者が死んでたので無理でした」なんて近年稀に見る最低な言い訳。だったらこの件はそもそも書かない方が良い。書かないのが最善。どう書いてもツッコミ所にしかならない。

 ビジネスにおいて、特に世間一般に向けた文章で「実は、」と始まる文章も違和感がある。かなり親しい取引先の個人とのやりとりで「実を言いますとあの企画は中止になりまして」、などという感じなら分からなくも無い。遣い方は間違っていないが遣いどころが間違っている。書いてある事情を汲んだとしてもだから何なの?という話で、会社側の不手際に相違無い。

 いままでシェアハウスの改修のほぼ一切は逝去した副社長の担当でした。今回職場異動のない新卒一般職の16名の方々がご入社辞退となり、心よりお詫びいたします。

 副社長のくだりが余計かつ先の文章とダブっているのはひとまず置いて、それに続く文章も微妙に変。まず「職場異動のない」は入れる必要が無い。ならば

この度、当社の不手際により16名もの方々に内定辞退をいただきましたこと、深くお詫び申し上げます。弊社に責任のある不備によって、多くの方々にご迷惑とご心配をおかけしたことを重く受け止めております。

 くらい書けないものか。ChatGPTに訊いたらほぼこれが出て来た。少し手直しはしたが下手な人間が書くよりずっとうま・・・そもそも文章書く力が無いとChatGPTにも適切な訊き方が出来ないか・・・。ここで重要なのは世間一般に加えて内定辞退者に対しても謝罪の意思を示すことである。会社側と内定辞退した側、どちらが悪かったか。どちらが悪かったと思っているか。

 大変申し訳ありませんが、写真のコンクリート剥き出しの場所は洗濯機置き場で、現在は既に洗濯機が置いてありますので現状の映像は異なっています。今回、工場配属の一般職ご入居の皆さまに対し、十分なご説明を申し上げることができませんでした点を深くお詫びいたします。雨漏りは改修手続きを既に開始しております。また畳の交換も明後日(14日)中に完了です。

 指摘箇所について順次修正をしているという内容だが、「大変申し訳ありませんが」は余計。何について「申し訳ありません」なのか。最後の「完了です」もおかしい。せめて「完了する予定です」。文章の見直しというか、推敲はしないのか。現状、不備の解消が進んでいることを示したいのであれば

 洗濯機設置箇所には既に洗濯機を設置しております。畳に関しましては明後日(14日)に交換予定、雨漏りにつきましても改修手続きを進めております。このたび、入居予定であった皆さまに事前に十分な説明が行えなかったこと、深くお詫びいたします。

 くらいがすっきりするし隙が無い。入居予定だった人に対して謝罪の意思を示すことが重要。元の文章でもある程度そこは出来ているのがせめてもの救い。

 弊社のシェアハウスの現状は既にHPに映像を掲載しておりますが、全件健全で居住場所としては適切な物件を内検の上、選択しておりますのでご安心ください。

 今回のような不祥事を起こした上で、全件健全だのちゃんと内検した上で選択しているだのと謝罪文で能書きを並べるのは悪手である。特に今回のように内部が公開されており、キレイではあるもののレトロ過ぎるという感想しか出てこないような内装が知られてしまった以上、「いなば食品の経営陣が日本人の新卒社員が住む物件としてふさわしいと考えているのはこういう物件なのか(それもシェアハウスとして)」と感性にドン引きされる可能性がある。

 内装の写真を見るとそれなりにキレイに修繕されているようだが古いものは古い。昭和レトロが大好きならともかく、そうでも無い20代が喜んで住むような家では無いだろう。それなりに大きい企業だと思うのだがイメージに対してあのシェアハウスはケチ臭く感じる。文句があるなら別で借りて住めば良いという側面もあるが、募集要項の額面から勝手に3万円も削ってはそう言って跳ね除けるのも厳しい。

 このたび、責任者の死亡により作業指示が大変に遅れ、皆さまに非常にご不快をおかけしています。早急に誠意をもって、早期に改修を完了いたします。

 締めくくりで再度、故人のせいにしているのが何とも後味悪い。ところでシェアハウス以外の内定辞退に至った理由に対しての謝罪は???労働条件を明示しないのは明らかにアウトだし、事務職のはずが工場の製造現場勤務であったり、お詫びの品がツナ缶だったりと、優しいのはネコに対してだけかと言いたくなる。挙げ句「ネコが書いてるのか」とか令和の怪文書と言われる始末。組織としての質を疑う。少なくとも私はいなば食品の製品、今後買いたいとは思わない。反省点がシェアハウスの不備だけだと思っているなら大間違い。

 シェアハウスだけでなく文章、社内の組織運営にも修繕すべき箇所が山ほどありそうだ。

AI生成。かわいい。これなら許してしまうかも知れない。

シュ~ルシュ~ル超シュ~ル♪いなば超シュ~ル!

*1:あくまで個人の意見だが