ヤマネコ目線

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機能性表示食品は信用に足るか

 小林製薬の紅麹を使用した機能性表示食品が大問題になっている。「意図しない成分」が混入し、サプリメントを摂取していた100人以上が腎機能を破壊されて入院、2024年3月28日時点で4人が死亡している。

news.yahoo.co.jp

(記事題:「紅麹」相談3600件超 病院でも...対応に後手? 2カ月後に会見 2人死亡106人入院)

 小林製薬の対応が後手に回っている上、未だに「意図しない成分」とは何だったのか、紅麹をどの企業に卸していてどのような製品に使用されているかが明確になっておらず不安が広がっている。この点は明らかに小林製薬が非難されるべき点だ。

機能性表示食品とは

 事態の行方は逐次観察しておくとして、機能性表示食品とは何かを整理しておこう。

 機能性表示食品は企業が消費者庁に対して表示したい機能に関する根拠を提出し、企業の責任において健康維持・増進に役立つことを謳う食品を言う。消費者庁に対してはあくまで機能性の根拠を提出するだけで審査はなく、個別に国から許可が与えられたものでは無い。

 この点で国が審査を行い、消費者庁長官から個別に認可が与えられる特定保健用食品(トクホ)とは敷居が違う。当然ながらトクホの方が敷居は高いのだが国の審査も完璧な訳ではなく、2017年にはトクホ認証を受けた粉末青汁で肝機能障害を発症した被害がある。いずれも信用して良いかどうかは難しいところ。

トクホの健康被害に関する事例)2ページ【情報1】

https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170803_1.pdf

結局、何を信じれば良いのか

 今回の一例だけをもってして「機能性表示食品は信用できない」と言うのは些か大げさに思うものの、機能性表示食品を謳うことのハードルが低い点には注意が必要だろう。トクホとの違いを知らなかった消費者もそれなりにいるのではないか。企業が独断で謳える以上、私は機能性表示食品を価値ある表示として信用したくない。

 また、健康を増進・維持できるだけの作用があると言うことはそれが悪い方向へ転んだ時の影響も大きいのではないか。薬とまでは行かずとも、それなりに作用を期待するのであれば近いものはある。今回の事例は完全に小林製薬の落ち度だが、既に処方されている薬との相性や自分自身の体質を知らずに機能性のある食品を摂取することもかえって健康被害を招きかねない。

 結局は規則正しい生活、健康的な食生活、適度な運動などの基礎的な生活週間改善こそが健康のための最適解であって、機能性表示食品だの特定保健用食品だのといった小手先のサプリ等に頼ることがそもそもの間違いなのかも知れない。

機能性表示食品の導入背景

 機能性表示食品の導入は第二次安倍政権時に当時の規制改革会議からの提言で行われている。Xでは機能性表示食品への批判と同時に安倍政権批判を展開する例が散見された。

 今回の1件だけをもって「安倍政権の負の遺産」とまでは言い過ぎだと思うが、安倍政権が機能性表示食品という如何にもしっかりした認証を受けてそうな売り文句を許可したことは事実であり、調べない消費者にも一部非はあるものの優良誤認を広めて消費者の利益より企業の利益を優先した、と捉えられなくも無い。

 Xではこの提言を強く行ったのが森下竜一氏だったという資料が挙げられている。当時の肩書はアンジェスMG株式会社取締役。

 氏は大阪万博における大阪ヘルスケアパビリオンの総合プロデューサーでもある。

iyakutsushinsha.com

 正直ただの印象でしかないが、あまり良い感じはしない。

 この巻き添えとして、再生可能エネルギーに関する規制見直しをするタスクフォースの大林ミカ氏が機能性表示食品の推進に関与したとの指摘も見られたがこれは何かの勘違いだろう。機能性表示食品の提言が採用された2013~2016年の規制改革会議のメンバーに大林氏は含まれていない。

www.sankei.com

 大林氏は反原発運動家でありエネルギー問題関連で何かが指摘されるならともかく、機能性表示食品という医療あるいは食品関係での関連したというのは無理があろう。

余談:右翼の色メガネ

 日本企業の不正問題が近年次々と明らかになっている。長年データの改ざんを続けて来たのがバレた、というようなものが多数。ぱっと思いつくだけでも豊和工業神戸製鋼日野自動車ダイハツトヨタ。最近で言えば近畿ツーリストのコロナ事業での過大請求、ビッグモーターの保険金不正請求。

 ここに来て小林製薬がある種薬害のような事件を起こした訳だが、右翼というか愛国保守・兼・陰謀論者にはこれらの不正が「日本企業潰しを狙った攻撃」に見えるらしい。彼ら曰く「日本企業を守るために攻撃された企業の製品を買い支えないと」とか。偏見もここまで来ると恐ろしいものがある。

 あまりに都合の良い解釈で厳しい現実から目を背け、日本と日本に属する個人・組織の善性を盲目的に信じているあたり、彼らが一番嫌う空虚な世界平和理論を信じて疑わない連中と大差ない。