ヤマネコ目線

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残念石を大阪万博のトイレに使う件

 またしても香ばしい話が出てきたのでネタにする。なんでも「残念石」と呼ばれる大阪城再建に使われなかった石を、大阪万博のトイレの一部として使おうという話。

news.yahoo.co.jp

(リンク切れ対策| 記事題:大坂城再建で使われなかった「残念石」、400年経て大阪・関西万博でトイレの柱に)

文化財としての価値

 Xではこの残念石の活用策について、文化財としての価値を問う声が多く挙がっている。私は理系であり門外漢なのでこのようなものにどれだけ文化財としての価値があるかは理解しかねるが、トイレの建材の一部として移設した上で名称まで「万歳石」に変えようというセンスは理解しがたいものがある。

 逆説的に考えればそのままの形で保存するからこそ文化財としての価値を保持するものが、これが悪しき前例となって「有効活用できるならいかようにも処理して良い」とならないか。限度というものがあるだろうが、人間、慣れてしまうとその限度が徐々に広がっていったりする。軽く見てはいけない。

 一方で現地で保存にあたってきたNPO法人は肯定的な反応をしており、外野がめちゃくちゃに目くじらを立てるほどでも無いかも知れない。文化財とはいえ重要文化財でもなければ国宝でも無い。

それよりも問題は

 残念石の活用につい目が行きがちだが、トイレの建設予算約6,300万円も一体何がどうなってそこまで掛かるのかと思う。それも記事によれば会場南西のトイレとのことで、調べると小林広美氏が代表のstudio mikkeが受注したトイレ2単体の建設費が6,300万円と見られる。

大阪・関西万博会場内の「休憩所」「トイレ」等 20施設の設計を担う若手建築家が決定 | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト

 大阪万博の公式Webには誇らしげに「20施設の設計を担う若手建築家」と書かれており、それぞれにそれなりの建築家が割り振られていることが分かる。小さい施設でもそれだけお金をかけて、その数20ともなれば予算が膨らんだ理由も何となく分かる。

 研究分野では若手に資金が回らず人材が海外流出しているため、未来ある若手建築家にそれなりの金額で好きにデザインさせて建築を残すことは安直に否定すべきで無いかも知れない。しかし一般人の感覚からするとどうにも。デザイン性を優先するとそういう事になるのだろうか。

 もう1つ解せないのはこれだけの予算がついていながらクラウドファンディングをしている点。目標額は300万円*1で控えめではあるが、6,300万円で石の輸送も込みにはならないとは。

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 好意的に取れない面が無い訳ではなく、プロジェクトを見ると同じ種類の石を当時と同じ方法で割る体験、石を引っ張る体験なども計画されている。残念石の存在の周知や理解を深める活動としては良い。

 と思う一方で、どうしても応援したくなるような感じはしない。活用されていない石材とはいえ文化財を下手に巻き込む必要は無かったのではないか。

建築した後の問題

 ここまでして建てた施設は残るのかと思いきや、クラウドファンディングの説明を読むと大阪万博の後は大阪内のどこかへ移設する予定であるとの事で、おそらく他の施設も合わせて同じような感じなのだろう。建てたものをそのまま残して活用するのではなくIR、カジノ建設のためにまたどこかへ移設すると言うのだ。何とも無駄の多い話に思う。ひょっとすると6,300万円は移設費込みの値段か?いや、そう考えるのは甘いか。

 結局、今回の万博はカジノ建設のための下ごしらえに見える。大阪だけで誘致しても地方自治体として夢洲整備まで面倒を見きれない、しかし万国博覧会という国家も関係した一大イベントを誘致し、そのために夢洲の整備が必要だという大義名分を作ってしまえば日本という国家のパワー=税金を使ってカジノのための土地が整備できる。そのために無駄なことをやっている。

 万博で経済効果が出ると言うが、果たしてどこまで言うほどの経済効果が出るのやら。

*1:石の運搬等に使われるのは200万円、イベント費用に55万円、クラファンの手数料に45万円