ヤマネコ目線

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超法規的措置を許すな

 大阪万博の工事遅れに関連して、自民党から信じられない発言が出ている。

news.yahoo.co.jp

(リンク切れ対策|記事題「万博工事「超法規的措置を」 自民会合で発言、残業規制の除外求める)

五輪に続いて世界に向けての恥晒し

 まず顛末を整理しよう。2025年開催の大阪万博のパビリオン建設が遅れていることは、これまでもたびたび報道されて来た。2023年7月時点で海外からのパビリオン建設申請が1件も行われていないことが報じられている。背景には建築資材の高騰、人手不足に残業規制、工期の短さなどがあるとされている。とはいえパビリオンはタイプA~Cの3種類があり、アメリカや中国などは設計から建築を自前で行うタイプAを見込んでいるので、国内の問題もあれど建築申請自体が1件も行われていないのは大阪府あるいは政府の根回し不足もあるのではないか。本来の工事完了予定は2024年7月なので、もう感覚的にはあと半年ちょいしか無い。

 物流の2024年問題が見込まれるのと同様に、建設業界でも残業規制によって作業に遅れが生じるとされている。これがパビリオン建設遅れの一因とNHKなどで報じられている訳だが、残業規制とパビリオン建設申請の遅れに一体何の関係があるのか。

 結局間に合わなさそうなので、決まった形のハコで間に合わせようという話まで聞く始末。タイプBは決まった形状の建物を各国がアレンジする。タイプCは決まった形状の建物に複数の国が出展する。各国が独自性を出せるのはタイプAなので、それが間に合わなければ画一的でつまらない、華が無い万博になることが予想される。

 万博に賛成している人々はかつての大阪万博の華やかなイメージを引きずっているのだろうが、今や日本が世界をリードする時代では無い。景気も悪い。開発力では中国に抜かれつつある。その中で中抜きのためなのか何なのか、大阪万博を開催することは無様だった東京五輪の二の舞という感じ、何とも情けない。恥晒し。太陽の塔のような後世に残るオブジェも生まれないだろう。今のところ目につくのは、一体いくら払って作られたのか分からない気色悪いマスコットくらい。ドローン1つまともに作れない国が主役張れるワケ無いだろ。

 記事によれば自民党議員からは「人繰りが非常に厳しくなる。超法規的な取り扱いが出来ないのか。工期が短縮できる可能性もある」「災害だと思えばいい」、といった発言が出たらしいが、もはや万博の開催が"災害"だ。

超法規的措置発言の愚かさ

 今回の”超法規的措置”発言は残業規制に対してのものだろうが、働き方改革と称して労働環境改善のために続けて来た流れを大きなイベントのためとはいえ妙な形で断ち切るのは悪手である。そもそも残業規制等の法的拘束を万博建設においてのみ外そうというのであれば、超法規的措置云々と言うまえにそのための立法を目指すべきではないか。法治国家において切迫した人命の危機がある訳でも無いにも関わらず、おいそれと”超法規的措置”などという話が国会議員の口から出てくること自体がおかしい。そのような勝手なことを許してしまうと本当にこの国は法治国家ではなくなる。まったくもって勝手で筋道が通っていない。国会議員が立法府の役割を忘れたのか。知らんのか。そんな勝手が許されるなら、物流2024年問題だって物流業界に超法規的措置とやらを取れば解決ではないか。それで良いのか?良いと思っているなら大間違いだ。

 話が反れるがこうした点において、今の日本という国に緊急事態条項のような緊急事態を理由とした行政府の勝手を許す条項はふさわしく無いと考える。今の政治家は国民の代表者たる本分も、三権分立の意義も憲法や法律の重さも忘れている、自覚していない。分かっていない。あんな奴らにこれ以上好き勝手やられてたまるか。

残業規制を撤廃すればどうなるか

 特措法か何かを制定して残業規制を万博建設においてのみ撤廃したとしよう。そこではまた新たな問題が出てくる。

 何よりも問題なのは過労死リスク2017年3月、新国立競技場の地盤改良工事で施工管理をしていた23歳の新入社員が過労自殺した事例がある。新入社員で自殺直前の1ヶ月の時間外労働時間は200時間超。

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 当時からその程度は氷山の一角であると指摘されて来た。東京五輪の開催は2020年。建設するものが新国立競技場という大きなモノだったとはいえ、開催約3年前の工事でそのような事態が発生している。2025年開催の大阪万博を残業規制を撤廃して今から急ピッチとなれば、また死人が出ることは容易に予想できる。日本人からすれば「必要な犠牲」で済むかも知れないが、過労死リスクを押してまでの万博は海外の目にどう映るか。

 過労死まで行かなくとも、労働時間が伸びれば伸びるほど労働者は疲弊し、安全管理上のリスクは高まっていく。国会議員は議事堂で寝ていても仕事になるのかも知れないが、現場仕事ではそうはいかない。生産性は下がる可能性すらある。「工期が短縮できる可能性がある」と言うが、果たして本当にそうか。

 疲労が蓄積すれば施工ミスも増えるだろう。施工ミスが大して影響の無い小さなものであれば良いが、重大な事故につながるものであれば災害は広がる。結局、遅れているものを無理やり間に合わせたって一流のものにはならない。

今から何をするべきか

 結局、税金を投入して人を雇うなり何なりして日本政府、日本維新の会の尻拭いをするしか無いのだろう。実際そういった話が出ている。上の不手際のツケを払わされるのは結局、現場の労働者その他国民。大阪万博に関わった政治家は万博が終わるまで議員報酬を返上して万博費用に充てるべきでは?そういう事をしないから責任感も緊張感も無い、仕事になってない仕事しか出来ないのだ。