ヤマネコ目線

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派閥解散だけで済まされない

 自民党は裏金問題について派閥を解散する方向で話を進めている。岸田総理はこれに先立つ形で岸田派の解散を表明した。

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(リンク切れ対策|記事題:岸田派解散、首相が乾坤一擲の勝負 岸田派解散表明で他派閥にボール)

そもそもの話として

 党内で意見が分かれる中での派閥解散表明はリーダーシップとも取れるが、政治刷新本部とやらの結論が出る前に派閥解散の方向性を決めてしまった事は政治刷新本部そのものの存在意義を弱めてしまった。

 自民党内からは「岸田の乱だ」との声が出ているようだが、岸田総理は逆風にある党内でひと悶着起こすことで「改革に真剣、党の体制に立ち向かっている」との印象を国民に植え付けたいのかも知れない。そこまで考えているなら大したものだが、ではなぜ党内をもっとクリーンにする方向で動かないのか。

どこまで意味があるか

 裏金作り、キックバックも派閥というくくりでの問題であるため、派閥を解散させれば大きな括りが無くなって派閥の枠組みを利用した不正は出来なくなる。派閥の解散はそうした点において一定の解決策にはなり得る。

 一方で派閥解消に対する反発は根強く、石原伸晃氏の「派閥を無くしても自然と人は集まる」との言もまた真理だろう。派閥解消というのはあくまで自民党内の話であるし、派閥以外の形での集まりを作ることは出来る。

 たとえば政治団体あるいは任意団体という団体という形式。志を同じくし、特定の政策を推進する議員の集団としてはむしろこちらの方が普通に思う。元より政治資金パーティーの主催者は政治団体*1。現存あるいは新設した政治団体(任意団体)の枠組みを利用した資金調達へシフトする可能性は高い。”結社の自由”憲法に保障された内容であり、議員同士でグループを作ることを規制するには限界があろう。

 自民党関連で政治団体と言って思いつくのは日本会議あたり(厳密には任意団体)だが、派閥の解消によってそうした団体に所属する議員だけ政治資金面が強くなる、影響力が増すとなれば今以上にろくでもない事になりそうだ。

 無届けの政治団体(任意団体)をめぐる不祥事は過去に事例がある。

jp.reuters.com

 また、かつての政治改革大綱で派閥解消が示されたにも関わらず現に派閥が存在したように、今だけ派閥を解消した所でなし崩し的に派閥が復活する可能性も大いにある。

 どのみち派閥が裏金・キックバック問題の根底であったかのような論点ズラし、それに対して既に抜け道が用意された解決策では許せない。そもそもの問題は故意にせよ過失にせよ会計上の取りまとめの不備、キックバック不記載のような遵法意識の低さではないか。派閥解消というパフォーマンスをした所で今回のような汚い資金作りが無くなるとは思えない。むしろより巧妙に、地下へ潜るようになる。

政治資金規正法の改正は必須

 現在、検討されている話がどこまで実現するかはよくよく観察しておく必要があるだろう。「共謀の意図が無くとも会計責任者と連帯して政治家が責任を負う」との案が出ているのは評価できる一方、それが検討だけで終わっては意味が無い。今回の問題で起訴されるのは会計責任者だけ、政治家当人はほぼお咎め無しとなっている。こんな事は最初から許されてはならない。

 パーティー券購入者の公開範囲を広げる話も、公開が必要な額を「引き下げ」とふわっとしている。パーティー券は1枚2万円が相場なのだから1枚からでも公開するべきだ。インボイス制度なんかと比べれば可愛いもの。もちろん販売斡旋業者を通じての販売も全部公開してもらう。そうしなければ納得できない。

 政党交付金も今年、自民党は約160億円受け取るようだが、政治資金規正法違反が出た以上はそうした場所においてもペナルティを受けるべきではないか。少なくとも明らかになった不正な資金の分については不支給とするべき。雇用調整助成金などは不正受給した場合、3倍返しになるのだがそれに比べればそれでも大甘*2

 政治資金パーティーをめぐる金の動きだけでなく、政治資金収支報告書にかかるあらゆる点において厳しく監視しなければまた同じことが繰り返される。政治家は「今回はたまたまバレただけで、バレなきゃセーフ」と思っている。実際、長きに渡って不正に政治資金を調達してきた実績があるのだから。

 

*1:政治団体以外による開催は禁止されていない

*2:不正受給100万なら100万返還+200万円の納付命令+延滞金