ヤマネコ目線

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パーティー券とは何か

 自民党がパーティー券とその販売に伴うキックバック問題で揺れている。ところで「パーティー券」とは何なのか。名称は聞いたことがあるがそもそもどういった存在なのか等を改めて見てみる。

モノ自体は何なのか

 政治資金パーティーに参加するためのチケット。自民党のパーティー券は1枚2万円が相場。政治資金パーティーはチケット代とパーティーで用意する飲食物・会場費用との差額を収益=政治資金とする目的で開催される。ソースがWikipediaはよろしく無いが、これを見る限りパーティー券をめぐる問題は昔からある。

ja.wikipedia.org

政治献金の代わりとしての「パー券」

 政治資金規正法によれば政治家が政治献金(寄附)を受けた場合、その金額が年間5万円を超える場合にはその寄附をした相手の住所、氏名、職業を政治資金収支報告書に記載しなければならない。また、個人からの献金は認められるが会社や労働組合から寄附を受けることは認められない。

政治資金規正法第12条

 一方で政治資金パーティー券の購入では年間20万円を超える場合に政治資金収支報告書への記載が求められる。つまり政治資金収支報告書を作成するための事務コストを抑えることが出来る。また、パーティー券は企業や外国人であっても購入が可能なので、寄附と異なり手広く資金集めをすることが出来る。

 そしてパーティー券の購入は寄附にあたらない*1とされるため、これが「寄附の禁止」の抜け穴となり実質的な政治献金の場となっていると以前から指摘されている。

 なおパーティー券の購入費用は経理処理上、基本的に「寄付金」ではなく「交際費」で処理される。下の会計事務所の解説では事実認定によっては寄付金になるようだが、実質的な企業献金をしようという事業者が正しい事実認定での経理処理をするとは考えづらい。あるいは事業者側が「寄付金」で処理してもお互い何ら不都合が無いのだろうか。

m-accounting-firm.com

www.soumu.go.jp

何が問題なのか

 今回の自民党政治資金パーティーをめぐる問題の1つ目は、年20万円以上のパーティー券を購入した個人・団体の情報が安倍派、麻生派、茂木派、岸田派、二階派政治資金収支報告書に記載されておらず、その”記載漏れ”の総額が2021年までの4年間で4,162万円にのぼることである。

mainichi.jp

 2つ目はキックバックの問題。各派閥では所属議員にパーティー券販売のノルマを課しており、そのノルマが達成できるか否かが派閥内での評価を左右する。実際、ノルマが厳しいと桜田議員が派閥を退会している。

news.yahoo.co.jp

(記事題|ノルマ300枚「さばくの大変」桜田元五輪担当大臣が二階派を退会、”裏金疑惑”に重い口の安倍派閣僚ら… 政権幹部「そろそろ何とかしないと」【news23】)

 自民党最大派閥の安倍派においては販売ノルマを超えた分についてのキックバックがあり、それを各議員が裏金にしていた事が問題視されている。下の記事にあるように中には9千万を超える「裏金」を手にした議員もいるようだ。

news.yahoo.co.jp

(記事題|安倍派「裏金」9千万円超議員も 特捜部、還流の経緯捜査)

 ただでさえ他の政党とは桁違いの政党助成金を受け取っている自民党が、このような手法で政治資金を調達することは政治資金規正法、ひいては法律を軽視していると言わざるを得ない。政治資金の透明性を損ね、汚職・贈収賄のリスクを高めている。「政治とカネ」の問題は尽きることが無いだろうが、それにしても酷いものだ。

 岸田総理は政治資金パーティーの自粛指示などと生ぬるい事を言っているが、さっさと関係した議員の氏名を公表して辞職勧告なり離党なりさせるべきである。野党も身内に甘いが自民党だって大概甘い。岸田総理に党内におけるそれだけの力は無いか。それともバカな国民が忘れてくれるまで、選挙が終わるまで触れないでおけば良いと思っているのだろうか。

それ以外の問題点

 パーティー券には根本的な問題がある。20万円未満の購入は政治資金収支報告書に記載する必要が無い、と言うことは「20万円未満でパーティー券を購入している団体・個人」は有権者には知られない。また、パーティー券を販売斡旋者から購入した個人等について、その情報を公表する義務が無い。NHKの過去の報道によればこうした匿名の支援者が全体の95%にのぼるという*2

 これでは政党に対してどのような個人、組織が支援しているのかが分からない。あえて隠蔽しているとも見れる。政治資金の透明性がそれだけ損なわれ、公平公正な政治運動が阻害されている可能性がある。

 また、終わった話ではあるが新型コロナウイルスが流行して世間に会食の自粛等を呼びかけている最中に政治資金パーティーを実施した例もある。世間は忘年会や新年会などを自粛していた時期だけに、金のために感染拡大も行政との不整合も顧みず酒まで提供してパーティーを開催した事は批判されてしかるべき。

mainichi.jp

余談:憲法改正

 自民党内では憲法改正へ向けた動きがあるようだが、経済政策は出来ない、少子化対策は的外れのまま、政治資金パーティーのような以前から指摘されてきた問題はずっと放置、いざ問題が噴出した時の対応も甘い。このザマで一体どの口が憲法改正などと言うのか。やるべき事をせず、適切な政策もせず、自分たちのやりたい事だけをしようとしている。それも権力を縛る最高法規に緊急事態条項などという抜け穴を作り、今以上にやりたい放題しようとしている。到底許せるものではない。

 そも政治家が利益団体の言うがままどれだけこの国を破壊し、凋落させて来たか。政治家としての質を考えれば憲法改正など口にするだけで焚刑に値する。自民党憲法改正草案を読んだがまあ酷い。憲法を作った人々の方が今の政治家どもより確実に賢く、私利私欲ではなく国のためを考えていたのだと思う。憲法金科玉条では無いし、来るべき時が来れば改正すれば良いと思って来たが政治家の、それを支持する私も含めた国民の質を見るにまだまだそれには値しない。それ以外に何とかするべき事が多過ぎる。

 

*1:親睦を深めるためのイベントに参加するための費用であり飲食物の提供もある

*2:現時点で記事が削除されているためリンク無し