ヤマネコ目線

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消費税二重取りの話

 X(旧Twitter)で「インボイスで消費税二重取り」が話題だったのでネタにする。元記事は↓

news.yahoo.co.jp

(記事題|インボイスで「消費税二重取り」の巧妙手口、財務省の試算以上の税収増の可能性 最終的な負担は国民に マネーポストWEB)

ざっくりとした説明

 至極単純化して書くと「課税事業者と課税事業者の間に免税事業者が入ると消費税が二重で徴収される」、という話。

 では実際にどのような流れが発生するのか見て行こう。

3社とも課税事業者の場合

 まず取引に関連する会社が3社とも課税事業者の場合を考えてみる。これは全く問題無いケース。A社、B社、C社が国に納める消費税の金額が、消費者が店頭で支払う消費税と等しい。

 A社は消費税1,000円をB社からもらっているので1,000円支払う。B社はC社から1,500円もらってA社に1,000円支払っているので500円、C社は消費者から1,700円もらってB社へ1,500円支払っているので200円。

 簡単に言えばこの「受け取った消費税と支払った消費税の差し引き」が仕入税額控除であり、インボイス制度ではそれが出来る/出来ないが問題になる。

B社が免税事業者であるケース

 次に問題とされている間に免税事業者が入る場合。A社は課税事業者なのでB社に材料Xを売る場合でも消費税は乗せなければならない。なのでA社が納めるべき消費税はB社からもらう1,000円。

 B社はC社から消費税1,500円をもらうが免税事業者のため、これを納める必要が無い。A社へ支払った1,000円との差額、500円がいわゆる益税となる。

 C社はB社へ消費税1,500円を支払っているが、B社が免税事業者であるためこれを消費者から受け取った1,700円から差し引くことが出来ない=仕入税額控除が出来ない。なので消費者から受け取った消費税1,700円を丸々国に納めることになる。

 結果として国納められる消費税は消費者が支払う金額よりも多くなる。これが「消費税二重取り」とされている部分。

 ではC社がB社に対して消費税抜きの金額を支払うようにすればどうなるか。

 C社は消費者から消費税1,700円を受け取るが、ここから支払った分の消費税を引こうにもそもそもB社へは消費税を抜いて支払いをしているため、どのみち1,700円から差し引けるだけの支払い消費税が無い。どう足掻いてもトータルで国に入る消費税は増える。

 たとえC社が消費者に対し、B社からの仕入値15,000円をそのままに消費税だけ乗せて16,500円で販売したとしても、消費者がC社に支払う1,500円の消費税はそこから差し引けるものが無い。”二重取り”は間に免税事業者が入る限り解消しない。

 つまり免税事業者を間に入れれば入れるほど全体で見れば損になる。政府は制度的に「免税事業者のままでいる選択肢もありますよ」と言うが、実質的には免税事業者が取引から排除されるような制度設計になっている。やはりインボイス制度、非常にいやらしい。これを考えた財務省の役人は本当に性格が悪いに違いない。頭は良いんだろうがそれで考えることが最悪。

 そもそも「インボイス」という一般人にはよく分からん横文字を使い、消費税の徴収を厳格化するという本質を誤魔化す制度名からしていやらしい。それで多くの国民がまんまと「私は関係なさそう」と騙されているのだから世話が無い。ちょっと制度に詳しい人間も「益税を貪って来た免税事業者が悪い」と、身近な人間がちょっとでも得をするのが許せないムラ社会根性丸出しで全体を見ずむしろ制度を支持する始末。

益税批判は妥当か

 「益税」批判に関してはこれまで何度も書いて来たが、免税事業者になれるのは年間課税売上1,000万円以下の事業者である。逆にそれを超えれば課税事業者にならなければいけない。これはインボイス制度が始まる前でも変わらない。ではインボイス制度は何のための制度なのか。本質的には免税事業者を排除し、消費税の徴収をより厳格に行うため+ついでに消費税の複数税率を将来的に導入するための布石と言われている。

 益税は課税売上1,000万円の10%=最大で100万円の利益に過ぎず、事業者として不当な利益を貪っていると叩かれるほどのものでは無い。一般的な感覚としては年100万円の利益は大きいが、事業を行う上で必要な機械やら備品やらを買えばその程度の額はあっという間に飛んでいく。何より企業はそうした益税込みの利益計算でコストカットの努力をして来たのだから、今さら「お前らまだ余裕あるだろ!」と言われてもそんなものは無い。

 実情を知らず考えず思考停止で「益税を貪って来た奴らが悪い」と批判する立場になって気持ちよくなってる連中は、まずどうしてこれまで「免税事業者」という区分があったのかを考えるべきである。どうせ考えも調べもしないので書いておくと弱小事業者に対する手心、事務の手間の軽減の意味合いがあった。人間で言えばまだ子どもなのでちょっとのお小遣いくらいは目を瞑りましょう、将来納税してくれる企業が多く育つように芽を摘まないようにしましょう、という話。その方が日本社会にとってもプラスになるし、将来的な税収増加も見込まれる。子ども的な立場に甘んじる事業者も中にはいる訳だが、漫画アシスタントや声優など一概に当人に悪意があって/不当に利益を得ようとしてその立場にいると断じることが出来ない業種もある。

 それがインボイス制度はこれまであった配慮の真逆。今の税収を増やすことしか頭に無い。人間で言えば子どもに「去年は月3,000円のお小遣いもらってたよね?じゃあその分の確定申告して所得税おさめてね」、と言うようなもの。酷だとは思わないのか。それで弱小事業者が潰れれば満足か。楽しいか。今はまだその影響を大きく実感することは無いが、その影響で将来的に何かしらの不利益を被るのは日本国民である。

 第一、長引く景気低迷にコロナ禍、からのスタグフレーション真っ只中に実質的な消費増税をすること自体が頭おかしい。終わってる。それを支持する国民も愚か。元SPEEDの今井絵理子がどうのと言うのも話題だったが、ああいう元アイドルだか元タレントだかを推し活感覚で国会議員に選んでしまう国民にもかなり問題がある。そういうのに限らずまず我々が賢明にならなければならない。もっと政治に感心をもって監視しなければならない。参加しなければならない。「理想の国家は理想の国民でできている」という言葉があるらしいが、日本はその真逆。