ヤマネコ目線

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レビュー)イコライザーTHE FINAL

 また映画を観てきたのでレビューを。一部ネタバレあり。事前警告あり。

最初に書いておくが割とグロいシーンがあるので、誰かと一緒に観に行くのであれば耐性がある人と行くべき。

www.equalizer.jp

雑な紹介

 イコライザーは続編に出ないことで有名なデンゼル・ワシントンが主演のアクション?映画。内容的には世直し系。一見ただのオジサンだが実は強い主人公、ロバート・マッコールが、善良な市民のために世の中の見過ごせない悪を叩く。血が出るシーンはもちろんあるので、そういうのが苦手な人にはオススメ出来ない。

 「イコライザー(equalizer)」と言えば音楽、スピーカーやイヤフォンで目にする言葉だが英語で直訳すると「等しくするもの」*1。悪がはびこる世の中で善と悪のバランスを正す、という意味が込められているのだろう。作中でロバートが取る行動は世界スケールの話では決して無い。しかし、自分で出来る範囲で世のバランスを正そうとする。そういう人物が描かれている。

 なお、デンゼル・ワシントン何かの続編に出るのが「イコライザー2」で初である。氏はその理由について下の記事で「あまりそういうオファーが無かったか、来ても脚本が変だった。イコライザーの脚本はとても良く書けていたから出た」、と回答している。

eiga.com

ネタバレ無しの感想

 1、2と来て最終章となるTHE FINALはこれまでの路線を踏襲しつつ、少し味付けが変わったように感じた。特にアクションシーンが少なく、単純な勧善懲悪系として動きの多さを期待して行くと物足りない感じはある。特に1や2で見せた「この場面をどのような方法で切り抜けるのだろう」、というシーンが少ない。

 と言うよりも、もはやロバートおじさんが強すぎ&殺し方が怖すぎ&一方的過ぎるので、途中から「あれ、これってアクションじゃなくてサイコホラーだった?」と思えて来る。後述する画作りもあって下手なホラー映画よりも怖いかも知れない。日常で見せる「善良な市民」としての顔と、悪人に見せる「死神」としての顔、その温度差はよく強調されていると思う。もうお前が次のジョン・ウィックで良いよ。ババヤガ!

 画作りは全体的に寒色系となっている印象を受けた。内容としてはそこまで暗く無いのに、炎の色や日常風景がダークファンタジー寄りでそこは残念。ハリー・ポッターシリーズでの前半分と後半分の違い、みたいな。日常のシーンを理由あって長くするのは良いとして、そこに温かみが感じられる画作りが欲しかった。

 イタリアの港町の描写は良かった。日本人からすればファンタジーに片足突っ込んだようなヨーロッパの港町。観光で行ってみたい。普段は素敵な景色が広がっているに違い無い。お祭りの描写も独特な雰囲気があって興味深い。だからこそ画作りの暗さがもったいないと思うのだが。

 ラストはまあまあ納得(ネタバレになるので後述)。全体的な感想としては悪く無い。

 

!CAUTION!

以下、ネタバレありの批評

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I gave you a chance

 

 

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悪かった所など

 前述したが正直、もう少しアクションシーンは欲しかった。”悪い奴らがやられる”シーンが大きく3箇所しかない。そのうちの1つは冒頭で既に多くが殺された後のシーンから始まるし、あとの2つもあっけなく終わる。一人称視点で回想の戦闘シーンがあるが、そんな描写をするくらいなら普通に戦闘シーンとして冒頭のワインセラー襲撃を描いて欲しかった。

 何にせよあまりに早い始末の手際にもはや主人公が人間ではなく、死神か何かのように見えてしまう。スカッとすると言うよりも「何この人、怖い」。

 特にマフィアのボスを始末するシーン、ボスに至るまでに護衛を殺して行く訳だが本当に一方的。ボスを殺すのもマフィアが流していた薬物を摂取させて朦朧とさせた状態で解放し、聖書の一節か何かを口ずさみながら死神のように付かず離れずついて回って最後を見届けるあたり、マジでどうしちゃったのこの人。キャラ変わった?というか本拠地に乗り込んで来るの早すぎだろ。怖っ!

 ラストに至るまでの日常の描写を重視した結果としてアクションが少なくなることは理解できる。が、CIAの捜査官なんかを絡めて来るような尺があるならアクションをもう少し長く取れた筈だ。デンゼル・ワシントンがもう歳なので、と言われると仕方ないのだが。

 CIAの女性工作員やら男性捜査官やら地元の汚職警察署長やらが登場するが、彼らの動向を映像化する意義がよく分からない。CIA女性工作員はロバートから助言や情報提供を受けて動くことはあっても、その逆が無い。せいぜいロバートが何者かを探ったくらい。イタリアン・マフィアだか何だかのボスはロバートがサックリ殺して終わるし、最後の方で爆弾で負傷して病院送り→ロバートからお使いを頼まれる程度。途中で「もしやCIAの戦闘員と協力してマフィアを壊滅させるのか」と淡い期待を抱いたのだが、見事にスカを食らった。

 CIAの男性捜査官も同じく。女性捜査官に指示を飛ばす、農園を捜査するシーンがあるくらい。感情移入できるキャラでも無ければ居て良かったと思える存在にもなれていない。警察もCIAもロバートの後追いでガヤガヤやるだけ。お前ら何しに来たん???

 ぶっちゃけその程度の活躍なら、表に出て来ずにマッコールと電話を通してのやりとり or もっと短い尺で良かった。限られた時間内で尺を取るからには、その人物がスクリーン上に出ることに意味が無ければならない。日常風景で映る人々はロバートが「この町の一員になりたい」、と感じることのバックグラウンドとして意味があるが、その2名には何の意味も無い。

 汚職警察署長は署長で哀れにもイタリアン・マフィアのボスに右手を切り落とされるのだが、別にそのシーンが無くともマフィアが悪事を働いているのは十分わかる&より怒りを覚えるようなシーンがある*2し、ただ痛々しいだけな上にその後どうなったかも描かれない。教えてくれ、彼の右手は繋がったのか??彼は改心したのか???

 ロバートのラストはたまたま行き着いた港町の住民となって、共に地元のサッカー?チームの優勝を祝うシーンで終わる。恐ろしい裏の顔とやって来た事を隠しつつ善良な市民として日常を過ごし、地域社会の一員となることに葛藤はあっただろうが、それでも地域の一員として終の住処を見つけたENDは良かった。冷静に考えるとマフィアのボスの弟とその取り巻き2人を(おそらく)何者か知った上で殺し、それを皆の前で訳あって自白したヤベー奴なのだが。

 というか町の人も町の人でマフィアが町を戦場にするかのような宣言をして去って行ったにも関わらず普通に地元のお祭り?を開催している描写があるし(ロバートがマフィアのボスを始末する描写と平行して描かれるのでまだ始末の前)、実はあの町の人たちもヤベー奴らなのだろうか。そんなもん?

 映画自体のラストは、ロバートがお遣いを頼んだ女性CIA職員が老夫婦に詐欺で騙し取られたお金を返すシーンで終わる(だったと思う)。が、それも蛇足に思えてならない。人助けするシーンを少しでも入れたかったのかも知れないが、観客からすれば「この二人、誰?」としか思わない。Lyft、タクシー運転手をやってた時に乗せただけの人であり、そんな人でも親身になって助ける人の良さを入れたかったのだろうがあまりピンと来ない。

 総合的に観て面白いと言えば面白いが、1、2を観てから期待したものでは無かった。ただロバートの物語の終わり方としては全然悪く無かった。

 ちなみにスタッフロールを終わりまで観ても追加映像は無い。

 

*1:イコール(equal)を思い浮かべれば感覚がより分かりやすい

*2:個人的には車椅子のご老人がアパート立ち退きを拒否したために吊るされるシーン、魚屋が放火されるシーン