ヤマネコ目線

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鬼滅の刃:刀鍛冶の里編 第1話感想

 あんまりアニメは観ないのだが、話題に合わせるために、何よりufotable制作なので鬼滅の刃は観ている。いよいよ刀鍛冶の里編が始まったところ。初回の視聴率は8%で一部、まとめサイトなんかは「爆死」だとか書いているが、月曜日の23:15~0:15という時間帯なら仕方ないだろう。深夜アニメの平均視聴率は1%行かないことが大半と言われる中、むしろ8%という数字は驚異的。今はストリーミング配信でいつでも見られる時代なのだから、視聴率を気にすること自体が時代遅れとも言える。

無限城のクオリティが意味分からん

 冒頭は猗窩座*1が無限城に呼び出された場面から、ひたすらその広大かつ縦横無尽の構造物の描写、劇場版レベルのカメラワークに圧倒される。劇場放映もしただけあってとにかく芸術的かつ圧倒的。CGを駆使した3D作画による流れるようなカメラワークが圧巻。もはや無限城内を映すシーンだけであまりの出来に感動してしまった。誰だよ制作期間1年が長いとか言った奴!?

 鬼滅の刃は無限城にかぎらず、本当に背景がキレイ。その編に置いてある壺、草木の揺れ、建物の立体感、そうした細部まで描き抜かれた背景は作品の世界観を表現するだけでなく、その舞台で動くキャラクターに確かな存在感を与えている。と思う。個人的に背景に関心したポイントは後述する。

 無限城は主人公の敵勢力である鬼の本拠地であり、鳴女*2が特殊な術で展開している異空間。違法建築とも言われるように、その内部は縦横無尽に和風の建築物が展開されている。なので「無限」城なのだが。

 鬼が苦手とする*3太陽光が入り込まない空間で、重力も場所によって方向が異なる。それが従来の建築物とは異なり、あらゆる方向にあらゆる構造物が張り巡らされているというある種、映えを生んでいる。今までで一番凝っていると思われるが、これは最終決戦を意識しての作り込みなのだろう。

 ちなみに無限城は英語ではMugen Castleである。そこはInfiniteとかじゃないんだ・・・。無限列車もMugen Train。

緊張感あるパワハラ会議シーン

 少しくどいこれでもかと言うほど無限城の中を見せた後、場面は鬼舞辻無惨*4による幹部クラスの鬼を集めた会議に入る。あまりに理不尽な内容から通称「パワハラ会議」として知られる会議とは名ばかりの叱責のシーン。

 背景が美しいのはもちろん、無限城内では重力が不安定なことを活かして幹部の鬼たちを下に、鬼舞辻無惨が上に来る構図で上下関係を表現しながら、なおかつ横長の画面に一同を映す。そのあたりの演出がさすが。

 カット割りが少し細切れにも思うが、キャラクターの存在感からそのやり取りの中にある緊張感までが伝わって来る。童磨*5が若干空気読めない子なので観ている側はそこまでではないが、まごう事なきパワハラ会議。

 一番関心したのは水やガラス類の描写。試験管などの実験器具の美しさ、おそらく3DCGだろうが、下手な3DCGらしさは全く感じられない芸術の域に達した美しさがある。その中に入っている水、薬品のゆらめき、落ちた血の広がる様、試験管越しに映る鬼舞辻無惨の目の歪み方、割れる実験器具の描写、あんな描写がアニメらしく、なおかつリアリティをもって出来ることに感動した。

 ここまでで変な所にしか感動していないが、自分で絵を描いたことがある者ならきっと分かる。あんなもん、1年あっても描けん。鬼じゃ。作画の鬼じゃ・・・。

その他の内容

 第1話なので全体で見れば内容は薄め。炭治郎が刀鍛冶の里に着いて、時透無一郎*6が縁壱人形*7の起動キーを要求している所まで。

 背景は刀鍛冶の里にいよいよ到着したシーンも美しい。刀を打っているシーンや刀を映すシーンでの刀のディテールもかなりこだわりを感じる。刀身の金属光沢や波紋、柄のデザインも良い。

 正直、アニメにおける女性キャラの声が少々苦手なので炭治郎が目覚めたあたりや、甘露寺蜜璃*8との絡みは少し・・・だったが。声が合ってるとは思う。鳴女の声も少しだけではあるがイメージにぴったり。

 第1話のエンディング(次回からのオープニング?)は先のシーンも入っているので凄まじかった。盛り上がるのはこれからなので楽しみ。

余談:背景で注目すべきポイント

 あんまり気にしていない人が多いかも知れないが、鬼滅の刃の背景美術は異常。まずカメラワークが実際のカメラのように縦横無尽に動くことが並大抵のアニメではない。

 背景だけでも感動しがちなのだが、特に襖に描いてある絵1つ取っても素晴らしいと思う。単なる背景の一部なのだが煉獄杏寿郎の実家、遊郭編での宇髄天元のアジトの部屋、刀鍛冶の里の長の家などでちらっと映っているだけの襖にさえ、ものすごくキレイな絵が描いてある。遊郭内部の調度品に至ってはそれだけで芸術品の域。

 また、草木の立体感や風にゆられる様のリアルさも注目に値する。特に遊郭編、宇髄天元とその奥さんが夕暮れのススキの草原で話をしているカット、背景で何げなく風にゆられるススキがすごく美しい。

 そして全体的に、本当にカメラで撮影しているかのような効果が意識されている。被写界深度*9や光芒程度ならば様々なアニメで取り入れられているが、その使用頻度が違うし時にフォーカスブリージング*10まで再現されている。

 カメラのような表現として一番凄いと思ったのは無限列車編、冒頭。産屋敷輝*11が亡くなった鬼殺隊の墓参りをするシーン。墓石を映すカットでは墓石に落ちる影や木漏れ日が美しく揺れ動き、人物の顔を横から映すようなシーンでは背景ボケの中で光芒が現れては消えを繰り返す。

 キャラクターばかりに目が行きがちだが、そうしたキャラクターが実際に画の中に存在するかのように思わせるような背景、ライティング等の美術にただただ関心する。無限列車編で煉獄杏寿郎の最期のシーンなんかも、状況+昇ってくる朝日の組み合わせが感動せざるを得ないほど美しいのがズルい。

*1:主人公の敵勢力=鬼の中でも強いやつ

*2:琵琶を持った女の鬼

*3:というか当たると死ぬ

*4:鬼の始祖であり総大将

*5:幹部クラスの鬼の1人

*6:鬼殺隊の幹部、「柱」の1人

*7:伝説の鬼狩りを再現して作られた修行用の人形

*8:鬼殺隊幹部、柱の1人

*9:ピントがあっている部分の前後や背景がぼやける

*10:ピントを合わせる箇所をカメラが迷い、呼吸するようにピントがズレること

*11:鬼殺隊の総大将