ヤマネコ目線

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なぜ若者は電話が苦手なのか

 電話苦手勢の一員として考察も交えながら書いてみようと思う。私の場合は苦手と言っても普通に応対は出来るが、私より若い世代は電話で話すこと自体が苦痛という人もいるだろう。何なら親であっても電話はよっぽど緊急の時だけにして欲しい、という人もいる。それは何故なのか。

テキストベースのコミュニケーションに慣れている

 今の10代~20代前半は、物心ついた時からメールやチャットなどテキストベースのコミュニケーションに慣れている。iPhoneやLINEの普及以前にもガラケーでメールのやりとりが多かったし、パソコンやゲーム機からチャット文化を経由して大きくなった人もいる。

 裏を返せばそれだけ音声通話でのコミュニケーションに慣れていない。特に親や友人などの気安い相手と違い、仕事で気を使わなければならない相手や見ず知らずの相手に予約などで電話する際、後述する音声通話などのデメリットもあって忌避感を覚えるのである。ゆえに「職場で一番若いやつが電話を取らない」という問題が起きる。

 慣れしか解決策は無いと思うが、就職するまでに仕事と同じレベルで気をつかう会話はどれだけあるだろうか。

音声通話のデメリット

 上の世代からすれば、テキストでのやり取りよりも音声通話の方が手っ取り早いし楽じゃないかと思うのだろう。が、若い世代からすれば音声通話はデメリットやストレスが大きい。無駄が多い。

 まずその場その場で相手に失礼が無いように気をつかいながら言葉を紡がなければならないのが、テキストベースでのやり取りに慣れている若者にとっては負担の大きい作業となる。特に失言に対するリスク管理一度口に出してしまった言葉は後から引っ込める事ができない。あらゆるリスクを嫌う若者にとって、仕事などの重要な場面での取り返しのつかない失敗はその可能性があるだけでもうストレスである。最初からテキストベースで文面を練った方がリスクが低いしストレスにならない。

 また、電話での会話内容は後から確認しづらい。メモを取れば良いだけだが、電話応対業務だけをやっている訳でもない限りいつでもメモを取ることが出来る状態には無い。電話が掛かって来てその都度急いでメモ用紙を引っ張り出し、手書きで内容を取ること自体が無駄な労力に思える。最初からテキストのやり取りであれば、いつでも全ての内容を見返すことが出来る。

 手紙やメールくらいしか無かった頃はテキストでのやり取りに即時性が無いというデメリットもあったが、今はLINEなどでほぼリアルタイムでのやり取りが出来る。デメリットらしいデメリットが感じられない。上の世代からすればスマホでポチポチとテキストを打つ方が面倒くさいかも知れないが。

 後は通話の方が空気感に流されやすい、テキストの方が要件確認が手っ取り早いし後からでも確認しやすい、くらいだろうか。

 通話でのやり取りは相手との関係性、喋り方などから電話越しといえど、その場の空気に流されやすい=本意ではない結果を招くリスクがある。気兼ねなくブツ切り出来る相手ならともかく、そうでもない微妙な関係性の相手からの頼み事などは音声通話では無下に断りづらい。テキストで容赦ないやり取りをする方が心理的な負担がマシで、リスクも低い。

 電話であれば要件を確認する前に一定のやり取りが必要になるが、テキストであればそれもほぼ省略できる。余計なやり取りが無くストレスフリー。文章で残っているので、その場で気づかなかったり不在の場合であっても後から確認しやすいし、わざわざ自分から何の要件かも分からないのを折り返し電話する必要が無い。

 一方で、テキストはテキストでリスクが完全に無い訳ではないとも思う。失言をすればそれがスクリーンショットとしていつまでも残る可能性がある。失言とは少し違うが「ケツ穴確定な」*1などはまさにその部類。油断すると危ない。ただ若い世代からすればそれはそれ、文章を練ることが出来るツールでそんなレベルの失言をするヤツが悪い。自己責任。逆にパワハラ、セクハラの証拠などが残しやすいから便利。むしろメリットともなり得る。

もはや呼び出し音がうざい

 デメリットが多くストレスフルな"通話"をするため、人を呼び出すためだけに何の面白みもなくピリリリリと鳴る着信音自体もストレスになる。これは上の世代だって多少は感じるのではなかろうか。洗い物をしている最中、食事の最中に鳴る着信音、手が濡れている、すぐ手が離せない、けども掛けてきている人はリアルタイムを待たせているので早く出ないといけない。仕事も中断して出ないといけない。ストレス。特に職場の電話なんか着信音を変える訳にもいかない。固定電話だとクソみたいな営業電話やNTTを騙る詐欺も鬼のように掛かってくる。ストレス。

 なお、知っている人は多いと思うがNTTを名乗る電話は99%詐欺。「電話の主装置が~」とか「工事(点検)でおたくの地域をまわっておりまして~」とか言い出したら100%詐欺。Googleストリートビューの撮影委託の話も詐欺。電気工事のために検針票記載の番号を教えろも詐欺。トルマリンを使った装置を付ければ節電になるも詐欺。詐欺サギサギサギサギサギ。今どき電話営業で仕事が取れると思って掛けて来るヤツも甚だ気に食わない。無理。

 なお、NTTは専用のダイヤルにかけて代理店から営業電話を掛けさせないよう依頼することが出来る。それをしてからかなりNTTを名乗る電話が減ったので、まだしていない場合はオススメ。代理店のくせに代理店であることを明らかにせず、営業であることも明らかにせず掛けて来る不届き者が多過ぎる。それも主装置がどうの工事がどうの点検がどうのと言って、回線変更の契約書であることを偽ってサインさせようとしたりする所がある。まごうこと無き詐欺。

どうやったら若者に電話を取らせられるか

 これはもう訓練しか無い。入社してから研修でしっかりするしか無い。結局は慣れなので、研修の中で社内の先輩や同僚相手にある程度の電話応対訓練をさせなければならない。「電話くらい取れて当たり前」という意識はもはや古い。いつまでも黒電話を使っていた時代の感覚では困る。どんなスキルにせよ「即戦力が欲しい」は企業の甘え。

余談:句読点を使うと「怒っている」?

 若い世代の間では、句読点を使うと「怒っている」と見なされるとyahoo!記事になっていた。それは何故か。

 読点「、」を入れると文章が読みやすい訳だが、短い表現を好む若者にとっては基本的に「、」が入る文章自体が長い上にお固いものである。教科書や読み物の文章のようなちゃんとした、ともすればしっかり言い聞かせる感じのニュアンスになる。

 句点「。」は通常は文章の終わりに打つ。英語でいえばピリオドに過ぎない訳だが、若者にとっては、特に日常での何気ないやり取りにあっては文章の終わりに「。」があるか無いかなどどうでも良いわけで、そこであえて「。」を付けてくるということに”断言”、”言い切り”のニュアンスを見出しているのだろう。「この話はここで終わり。」、どうだろう、もう「後が無い」感じは伝わるだろうか。「。」が無ければワンチャンあるで

 テキストベースでのコミュニケーションに慣れてきた分、テキストだけから感情の機微を読み取る文化としてこうした要素が出てきたのだろう。それが文章に直接現れる訳ではなく句読点を駆使した婉曲的なものであるあたり、日本人の奥ゆかしさは良くも悪くも変わっていない。

 

*1:巨人、坂本勇人選手がセフレに送ったラインの内容。原文は「今日けつなあな確定な」