ヤマネコ目線

大体独り言、たまに写真その他、レビュー等

修学旅行は不要なのか

 先日、修学旅行不要論が話題だった。「費用に見合うだけの効果があるのか」、「思い出作りの押し付けでは」という意見があるらしい。

news.yahoo.co.jp

ただただ嘆かわしい

 正直、ここまで来てしまっているのかと愕然とした。今まで当たり前に出来ていたことが、「費用対効果が悪い」などと言って切り捨てられようとしている現実。それに対する「押し付けでは」などといった無用な善意による肯定。

 積立金がつらいという家庭は確かにあるらしい。昔もそうした家庭はあっただろうが、今はそうした家庭が多いからそのような意見により肯定的になるのではないか。経済的に苦しい家庭が増えていることの裏返しと考えると決して良い流れではない。そうした家庭が主流になって行けば廃止せざるを得ないのかも知れないが、逆に言えば「修学旅行くらいしか旅行に行く機会が無い」という子どももいるだろう。そうした子どもから完全に新たな体験をする機会を奪ってしまうのは良いのだろうか。無い袖は振れないのでお金が無いならどうしようも無いのだが、なんともまあ・・・惨めな話だ。

 「思い出作りの押し付け」という意見は、そうした厳しい現状を少しでも別の観点から正当化しようという心理の現れに過ぎない。子どもがどう感じるかなんてその子にしか分からないし、本当に嫌ならその子だけ行かなければ済む話。それを勝手に大人が決めつけてしまうのは無用な善意、いや、子どもからすれば善意ですらない。

 「押し付けではないか」などと言い出せば、他のあらゆる学校行事だって押し付けではないか。入学式、始業式、朝礼、終業式、卒業式、運動会、文化祭、音楽会、遠足、野外活動、集団宿泊活動、職場体験、ボランティアetc.。あらゆる行事は子どもの意思に関係なく行われる。面倒くさいけどやって良かったと思えること、辛いこと、楽しいこと、様々な思いがあると思うが、その中から楽しいことの1つを「ご配慮」で奪ってしまうのはそれこそ善意の押し付けである。

豊かな学校生活とは

 以前、豊かさとは何かについて書いた。豊かさとは何も生活水準の高さだけでは無い。ムダやムダを許容するだけの余裕があってこそ真の豊かさがあると。「費用に見合うだけの学習効果があるかどうか」だけで学校生活における物事の是非を決めようとするのは、果たして「豊か」だろうか。

 極端な話、費用対効果と進学のことだけ考えれば学校では授業を受けて宿題を持ち帰るだけで良い。入学式も卒業式も必要ない。卒業アルバムも体育祭も必要ない。全部ムダ。必須ではない。しかしその中には人間らしさ、我々が豊かであると感じられるムダがある。

 そうしたものを積極的に切り捨てようとする流れを私は歓迎しない。危険であると感じる。そんな考え方を肯定せざるを得ないのであれば、そうさせる社会が間違っている。変えていくべき。

子どもが成長する環境

 果たして今の社会は、子育てに適した環境なのだろうか。政府ははした金を出した程度で少子化対策をした気になっているが、いざ自分たちが親になろうという視点で世の中を見れば、たとえ結婚までのハードルを乗り越えてもその先にはまだまだハードルが多い。若年層が結婚や子育てをしたがらないのは、高いハードルの先にイバラの道が続いているからである。

 もし頑張って結婚して子育てを始めても、経済的な余裕の無さから思っていたような子育てが出来ない。スマホにゲーム機と今の親が求められるものは多く、才能を伸ばすにしても塾に通わせるにしても何かとお金がかかる、しかし親は経済的には追い詰められる一方。

 それどころか修学旅行の件のように、自分たちが子どもの頃は当たり前だったことが当たり前に出来なくなっていく社会。世の中が多少良くなろうと、それ以上に子育てしない・できない理由が増えている。現状、上の世代が思っているほど日本は子育てしやすい環境に無い。今日も教員不足で緊急集会とかバカなこと抜かしてるし。こども家庭庁とかいう穀潰し組織作る金があるならなぜ現場に回さないのか。

 そうした環境は子ども自身にとっても決して良い影響は与えない。経済的な圧迫は夫婦仲を悪くする。今や3組に1組が離婚すると言われる中で、それを一番近くで見ることになるのは他ならぬ子どもであり、小さい頃からギスギスした、冷めきった結婚生活を目の当たりにした子どもは結婚・子育てに対する価値を見失う。増税社会保険料の引き上げなどで国民への負担を増やし続ければ、そのような子どもは間接的に増えていくだろう。

 何なら結婚・子育てに対する興味を失うくらいならまだマシという面もあり、両親からの愛情の不足が子どもの鬱を招くという研究もある。コロナの影響や診断の手軽さなどで安易な比較は難しいが、ひょっとすれば家庭環境が子どもの自殺率、不登校発達障害の増加とも関係しているかも知れない。