ヤマネコ目線

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FIREのリスク

 少し前、NHKがFIREした人の特集をクローズアップ現代か何かで組んでいた。岸田総理の言う資産所得倍増計画のためのプロパガンダかよと思う訳だが、それはさておきFIRE自体の注意点について考えてみたい。

 一応書いておくが、FIREという生き方自体を否定したい訳ではない。それで実際に幸せだと思う人たちもいるだろうし、それが出来る・したいのであればすれば良い。ただ、後述するようなリスクから生半可な資金力や覚悟では良い結果は生まないだろうと思うまで。

まずFIREとは

 FIRE(Financial Independence, Retire Early)とは、貯蓄や投資を通じて早期に経済的な独立を達成し、定年退職をすることを目指す運動やライフスタイルである。

 出来るものならしてみたいと思わなくもないが、もうこの時点で現代日本ではなかなか実現が難しい感じがする。投資で成功して十分にお金を稼いだら後は遊んで暮らそう、そんな夢みたいな話に騙されて国民がこぞって投資を始めると思っているなら大間違いだ。

FIREが破綻する理由

 話が逸れたがFIREには破綻の危険が伴う。自由な生き方を目指すことは悪い事では無いと思うが、そこにあるリスクを正しく評価しなければそれが成功に終わることは難しい。FIREが破綻する理由としては主に次のようなものがある。

  • 不十分な資金計画
  • 市場リスク
  • 健康問題などの不確定要素

 資金計画は全体的に共通する問題と言えるが、単純な支出の計算も誤差が生じやすい。働きながら生活していれば、年間休日120日と仮定して労働日数が245日と結構な拘束時間がある。それがFIREして自由に時間をつかえるとなれば支出が増えない筈がない。使える時間が多い分、あれもこれもとやりたい事は増える。いつが休日でいつが平日かといった縛りが無くなるので旅行に行きたいと思えばいつでも行けるし、それに伴って食費なども増えるだろう。それらを加味せず、日々の生活にかかる費用を過小評価してしまっていれば途中で資金不足に陥る。そこに無計画な支出や浪費癖が加われば、破綻の可能性はより高まる。

 次に市場リスク。投資をしながらFIREを目指す場合、当然ながら投資が失敗すれば資金難に陥る。また、景気後退やインフレなどで資金計画に大きな誤差が生じた場合も同様である。社会情勢と連動して公的負担(税・保険料)が増すというリスクもあり、それらを完璧に予測することは困難。

 また、健康問題も予測が難しい要素の1つと言える。大きな病気で治療費がかさんだ、自分自身の介護費用に思ったよりも費用がかかるetc.。その他、窃盗被害にあう、自然災害に遭うなど予測困難なリスクがあり、それらを加味して資金計画を立てることの難しさは生半可なものではない。

破綻の先にあるリスク

 FIREが破綻した後にもリスクはある。主に以下のようなもの。

 「FIREが破綻したらしたで再就職すれば良いや」と言えるだけのスキルがあれば良いが、そのレベルのスキルを持つ人は少ないだろう。逆にそこまで希少性の高いスキル保持者はFIREなど許されないと思う。人材としての市場価値を保ったままFIREを継続することが難しい以上、スキルや年齢面で再就職は困難となる。こと日本においてはFIREの経験自体や労働上の空白期間が好ましく思われない可能性が高い。一度破綻してしまえば、その悪影響が長期に渡る危険性がある。

 また、破綻による資金不足自体が精神的に不安な要素をもたらすことは言うまでもない。家族に資金的な援助をアテにされている場合、あるいは資金不足ゆえに家族や友人に経済的に頼らなければならない場合、関係に緊張や亀裂が走る可能性もある。そうなれば社会的評価も自己肯定感も落ちることとなる。生活水準もおいそれとすぐに落とすことは出来ないのでストレスが溜まるだろうし、それによって生活そのものが破滅へと向かう可能性もある。生活水準を保つために借金などし始めれば最悪。芸能人などによくある悪い意味での王道パターン。

その他の注意点

 FIREという生き方自体が一般的な労働者のライフスタイルとは異なるため、仕事などを通じて形成される人間関係が薄れる可能性がある。休日などのタイミングの合う合わない、成功者への妬み嫉みetc.、多過ぎる自由時間が場合によっては社会的な孤立を生み、精神的な悪影響をもたらすかも知れない。その点で向き不向きがある。

 また、結婚あるいは子育てまではよほどの成功者でない限り勘定に入って来ないだろう。真に自由な時間と孤独を愛せる人間で無ければ並のFIREという生き方は厳しいかも知れない。

余談:投資資金の流れ

 近年、素人の投資資金が米国市場へ流出していることが問題視されているらしい。岸田総理の資産所得倍増計画も、一部では「アメリカに言われて日本の資金を米国市場へ流させる計画だ」などと言われている。

 素人投資家の端くれとして言わせてもらえばそんな流れは当然なのだが。少なくともろくな経済政策や物価高騰対策もなく、増税社会保険料の引き上げを繰り返し、少子化はむしろ加速。発展どころか衰退しゆく国に投資する理由が無い。ユニコーン企業に投資するなら米国市場の方が手堅いし、大企業は大企業で素人が手を出すには株価が高く面白みに欠ける。

 大体、実質賃金は下がりっぱなし、経済的余裕が無いから少子化が進んでいるのにどこに投資に回せるだけの資金的余裕があると思うのか。真性のアホでしかない。積立NISAでシコシコやって何とかなるか?そんなもん屁のツッパリにもならん。

 今、FIREよりもこの国の状態が熱い!燃えている!焼け野原になる前に何とかしましょう。できれば・・・無理じゃね