ヤマネコ目線

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性的少数者、同性婚に関して

 性的少数者に関する発言で、首相秘書官が更迭された。それと同じような時期にTwitterでは、「個人の好き嫌いを述べただけなのに差別主義者と袋叩きにされ、更迭されるのはおかしい」といった意見や、同性婚に関して「生殖可能性の無い人間を国家が保護するメリットがない」と言い出す憲法学者などが見られた。それに関して。

「個人の好き嫌い」

 私は性的少数者ではないし、そうした人々への個人的な好き嫌いはどうしてもあるという事も理解はできる。「個人の内面までそれを許さない」というのはやり過ぎであり、そうしたものを取り締まることなど実質的に不可能だ。

 一方でそうした嫌悪感を表に出して憚らず、不当に取り扱う行為は「差別」である。首相秘書官ともなれば公人としての立場もあり、その発言には相応の重み、影響が伴う。それを「個人の好き嫌い」の範疇として擁護するのはあまりに無理がある。「個人の」といえる範疇に収まっていない。岸田総理は先の答弁で同性婚に関して否定的な答弁をしているが、あの答弁内容は荒井秘書官が用意したものではないのだろうか。その「個人の感想」とやらで性的少数者に関する議論そのものを止めてしまうのは、不当な取り扱いといえるだろう。

 首相秘書官を擁護していたのは界隈では有名な右翼系アカウントだったが、私は心底呆れてしまった。彼らは「あくまで個人の好き嫌い」と言うのだが、一方でその「個人の好き嫌い」とやらを政治に反映させる気は満々である。それは果たして個人の好き嫌いといえる範疇か。そういった意識がどこまでも「個人の好き嫌いですから」で許され政治に反映されるなら、社会はどこまでも差別を許容しなければならない。

 逆説的に考えて、そんな事は正当化のしようがない。そんな単純なロジックすら理解できない人間が詭弁を弄して保守を名乗り、この国を「美しい国」だのとのたまって礼讃し、それに多くの人間が賛同している様は情けないにもほどがある。彼らの大好きな安倍政権では道徳教育の強化がされていたと思うが、その中にはいったい何と書いてあるのか。「美しい国」という幻想にひたって現実から目を逸らし、現状とは乖離した路線で政治を進めようとする点では彼らのようなエセ保守とでもいうべき存在は、方向性の違いだけでいわゆるサヨクと何ら変わりがない。

「生殖可能性の有無」

 同性婚に関して述べた憲法学者、石埼氏のツイートは以下の通り。

 婚姻制度では法的保護が与えられ、税制などで独身者との差異が生まれる。その差異を設ける根拠は単純に言えば子供=未来の国民を養い、育てるための余裕を与えるためだ。また、婚姻制度はそれによって親を確定させて子供を養う責任を負わせる意味もある。そうした考えに基づけば確かに氏の言う通り、「生殖可能性のない」カップルに法的な保護を与える理由はほとんど無い。

 一方で石埼氏やそれに賛同している人々は、合理性を盾にして積極的な議論を避け、幸福追求権といった基本的な理念を忘れて社会の、人々の要望に応えることを放棄している。そうして議論を最初から拒否する人々は、不思議なことに「子供のいない夫婦」は「制度のあそびであって問題ない」と言う。彼らの言うような厳密な合理性に基づくのであれば、そうした”あそび”も許されないのではないか。

 冷淡という言葉が適切かどうかは分からないが、彼らの本質は結局のところ「私が嫌いだから認めさせたくない、制度化させたくない。議論自体したくない」であって、その正当化のために合理性を持ち出しているにすぎない。ともすればそれはある種の差別であり、その点において私は彼ら反対派の意見に100%賛同することが出来ない。性的少数者同性婚の問題に限らず、そうした論法で社会の改善を止めることはその他いかなる物事においても良い事は無いだろう。

 日本は「G7で唯一同性婚を認めない国」と言われている。裏を返せば他国では程度の差こそあるだろうが認められている訳で、そこにはまだ議論の余地がある筈。たとえば生殖可能性は無くとも養子を迎えることはできる。代理出産も海外であれば可能だ。その他、婚姻制度として同性婚の場合にどこまでの保護を認めるのか、一考の余地はあるだろう。

余談?

 イコライザー2という映画でうろ覚えだが印象的なセリフがある。「誰でも出来ることなのに、誰もやろうとしない。『出来る』と『出来るけどしない』は違う」だったか。そう、「出来ない」と「出来るけどしない」は違う。まるで政府の歳出削減の話だ。同性婚の話にもあてはまる。少数派の意見に振り回され過ぎるのは良くないとも思うが、まったく相手にしないのも間違っているのではないか。本当は出来るのに、あえてしない事は世の中たくさんある。その中に「本当はやるべき事」もたくさんある。

 逆に「やるべきじゃないのに」という事もたくさんある。最近ではフィリピンへの年間2,000億円の支援が話題だった。確かに外交、外国に恩を売ることも重要ではあるし、国内の予算とは関係ない所から出るのだろうが、そうしたカネはポンと出せるのになぜ国内では「出来ることはやったがどうしても国民の皆さんにご負担をお願いしたい」と言えるのか。どうしても疑問に思わざるを得ない。他国に回せるカネがあるならなぜ国内に回せない。国内がこのザマでいつまで先進国ヅラしてお金配りをする気なのか。まるで「家庭には一切カネを入れない癖に毎日飲み歩いているダメ親父」だ。それを選び続けている我々国民にも非はあるのだが、何ともまあ、大した「美しい国」なことだ。そうか、日本人にとって「美しい」のは散り際か。

news.yahoo.co.jp

 イコライザーイコライザー2ともにAmazonPrimeVideoで見られるのでおすすめ。デンゼル・ワシントン主演、勧善懲悪モノ、名言も多し。派手さはあんまりだが娯楽映画としてよく出来ている。