ヤマネコ目線

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一夫多妻制を望む日本人女性

 書き散らし。前にTwitterで「日本も一夫多妻制にしろよ。そうすれば強者男性と結婚できる女が増えて少子化対策になる」、などと抜かす女を見かけて少し一夫多妻制について調べてみた。

戯言は置いておいて

 現代における一夫多妻制はイスラム教においてのそれが代表的だろうか。しかしこれには理由があって、イスラム教で一夫多妻制が認められるのはイスラム教が一神教だからである。一神教と言えば有名なのはキリスト教だが、イスラム教、キリスト教と来ればその間には何が来るだろうか。そう、戦争だ。

 いずれの信者も彼らにとっての”神”こそが絶対であり、そういった宗教同士がぶつかれば衝突は避けられない。そうでなくともシーア派スンニ派キリスト教であればプロテスタントカトリックかで、同じ宗教の中ですら争っている。

 そんな中で何が起こるかと言うと「戦争による寡婦(未亡人)の大量発生」。イスラムの法における一夫多妻制はこれに対処するものであり、未亡人に対する経済的補助や子孫を残す機会を与えるために認められて来た。厳しい戒律、特に女性の肌の露出や性に厳しいイスラム教で一夫多妻制が認められているのには、そういった歴史的経緯がある。

 なお、イスラム教における一夫多妻制は1人の夫に対して妻4人までが一般的であり、それ以上と結婚する場合はきちんと正当な理由がある証明が必要となる。王族なんかは普通に妻が5人以上居るようだが、一夫多妻制と聞いて一部の人間が想像する「閉じた空間で何十人という相手がいる乱れた関係」とは実情は違う。

 イスラム教以外の一夫多妻制でもそこには宗教的理由や権力者の都合があり、「女余りだから布告を出して女は全員強制的に結婚な。一夫多妻制認めるから」などとした例もある。現代でそれが認められるかはかなり怪しい。アフリカにおける一夫多妻制などは単純に子供の生存率が低いからであろう。どのみち一夫多妻制は高望み売れ残り女を救済するための方策ではない。断じて女が金持ちイケメン男性に群がりたいからなどではない。アホか。

 ハーレム(ハレム)は中東、イスラム教圏内の話だがもちろん時の権力者の特権のようなもので、そこには女性への厳しい人権制限がある。現代の創作でいう「ハーレムもの」のような生易しいものではなく、その本質は女奴隷をかき集めたものであり、運が良ければその中で権力者のお気に入りになって女の身分の中では出世できる程度のもの。「ハーレム」と言って想像されるイメージはヨーロッパから見た中東のハレムがある種の神秘性、男の妄想と相まって形成されたものであり、貴族などがそれを再現した事はあったかも知れないがいずれも女性の地位が低い事が前提。現代で公の制度として実現するのは不可能だろう。「お金持ちの良い男に愛されてお金も好きなだけ使わせてもらって」などとは鏡を見てから言って欲しいものである。

一夫多妻制は少子化を救うか

 冒頭で述べたような事を言っていた女の真意はともかくとして、現代日本で一夫多妻制を導入するメリット・デメリットは何か。

 古い日本における一夫多妻制は弥生時代に始まり江戸時代まではある。その後も代表的な人ではあの渋沢栄一も女性関係にだらしなかったとされる。メリットは男性にとっては跡継ぎを残す確率を上げる、女性にとっては権力者に娶られることで暮らしを保証してもらう、という点であろうが、いずれの時代も政治体制や女性の地位が現在とまったく異なるのであまり参考にならない。デメリットはやはり女同士の戦いが起きる事か。そもそも一夫多妻制を実現できる人間はとんでもない金持ちや権力者とかなり限定的な範囲にとどまるので、件のツイートで掲げる大義名分の少子化対策にはなり得ない。

余談:イスラム教、コーラン、ハラルの本質

 もともと中東、砂漠地帯の厳しい地域で成立したイスラム教の教えは厳しい気候の中で人々が生き、子孫を残して行くための手段を色濃く反映している。ハラルで豚が禁じられるのは砂漠での家畜に豚が不向きであるからだし、禁酒はアルコールが脱水*1や性の乱れ*2をもたらすから。そういったある種、生きるための知恵を「唯一神の教え」として信仰へ昇華することで、中東の人々は彼らの社会全体に生きるためのルールを強制し、厳しい環境の中で生き残って来た。そう考えると、技術や時代が進んでいるとは言え頭ごなしに彼らの文化を否定することは出来ない。

 むしろ今、世界中でイスラム教徒が増えている。増えている各地での理由はどうあれ、地球全体が人間にとって厳しい環境になりつつある事の表れなのかも知れない。もし世界全体で砂漠化が進めば、この予測もあながち間違いでは無くなるだろう。

www.nikkei.com

*1:水が貴重な地域において脱水をもたらすものは良くない

*2:酔った勢いで性交し、下手に口の数を増やせばより生活は苦しくなる