ヤマネコ目線

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議員定数削減は果たして正義なのか

 日本維新の会自民党との連立にあたり、国会議員の定数削減を絶対的な条件として強調している。

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(記事題:自民・維新の連立秒読み?議員定数削減に政治ジャーナリストが警鐘「残った議員に権力が集中してしまう」「時間をかけて議論する必要がある」)

そもそも人口比率で言えば日本の国会議員は多く無い

 人口比率で算出するのが適切とも言い切れないが、日本の国会議員の数自体は極端に多い訳ではない。

 「日本より治安が悪い国の方が国会議員が多いじゃないか」という意見もあるがそれはアメリカを見てから言うべき。

 まず国会議員の数を減らしても削減できる歳費は知れているし、これまでも徐々に国会議員の数は減ってきた。しかし国会議員が減ったからと言って政治が良くなって来たかといえばNOである。国会議員1人あたりの歳費は以下のサイトによれば約7,500万円。これに50を掛ければ37億5,000万円。これを多いと見るか少ないと見るか。一般人の感覚からすれば大きいが、こども家庭庁( 予算 7.4兆円 )を解体した方がよほど浮くだろう。

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 こども家庭庁に関してはその予算の内訳に以前から制度としてあったこども手当等も含まれている訳だが、それはこども家庭庁創設以前に別の省庁で実現できていた訳でこども家庭庁は必要ない。訳の分からないNPOに垂れ流す予算を削った方がよほど歳出削減が出来るのでは。

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 フローレンスへの助成金すべてが公明党のしわざかどうかが怪しいものだが、なかなかの補助金の額である。

 そして問題は議席数を減らすにしてもどこをどう減らすかで、人口比率で考えれば都市部に多くの人が集中しているのだから、都市部の議席数は残して地方の議席を減らそうとなる可能性が高い。そうなれば一票の格差は拡大し、議席数の削減は地方の民意を切り捨てることに直結する。比例を減らすにしてももともと比例代表性は小選挙区優位になることを是正するために作られた制度なため、減らすことが必ずしも良いとは言い切れない。

 地方において「自分たちの意見は政治に反映されない」という傾向が強まれば、より一層政治への無関心と不信感は強まるだろう。地方の産業や福祉も今より軽視される可能性が高い。地方の産業を軽視すれば日本は足元から滅びにむかっていく。特に東京のような日本全国から人口や活力を吸い上げるだけ吸い上げてすり潰しているだけの都市は、今は良いかも知れないが地方が滅びてしまうと生き残れない。

 人口面で考えれば東京都は出生率が全国最下位であり、「今現在の」人口比だけで考えて議席数を割り当てても将来性がない。有権者の数に持続可能が無い。

 自民党も維新の会もこのあたりをどう考えているのか知らないが、何にせよ自分たちに有利なように制度を変えることは間違いない。小選挙区を減らして比例ばかり残し、民意ではなく党の意向で人を選ぶ傾向が強まるのではないか。

 そして議席数を一度に50も減らしてしまえば、小選挙区にせよ比例代表にせよ小さい政党や無所属が議席を獲得しづらくなる。国会から多様性が失われることとなり、自民党と維新の会がこれから先も政治を牛耳る下地が出来上がる。 「どうせ多数決で少数派の意見は切り捨てられるのだから最初から切り捨てれば良い」という意見もあるがそれはあまりに乱暴。

 今の国会における野党の無様さを見れば国民が「多様な意見があることの重要性」を感じられなくとも無理はないが、しかし(まともに議論をしていれば)少数派の意見が多数派の意見を一部であっても修正させることはあり得る訳で、最終的には多数決になるにせよ、少数派の意見があるのと無いのとでは結果は違って来る。

 裏を返せば自民党も維新の会も少数派の意見を排除し、今よりもさらに国会で自分たちが好きなように法案を通せるようにしたいと考えているのだろう。その辺りの打算的ないやらしさは通じるものがある。

日本維新の会のいらやしさ

 議席数を減らすことを求める以上、彼らは彼らで国会内で一定の議席数を確保できる自信があるのだろう。特に自民党と連立を組むと決めた以上、保守層(と私は思わないが)からある程度の票を得られると思っているのではないか。大阪は実質的に維新の独裁政治のような状態になっており、カジノ誘致も好きなように決めている。

 しかし日本維新の会は本当に削るべき所を削らず必要な部分を自分たちに有利なように削る。たとえば今回、維新は政党交付金の削減については言及していない。一番多い自民党政党交付金は約136億円である。維新の会は約32億円。歳出削減を言うなら政党交付金を削ってはどうか。

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 加えて企業・団体献金の禁止を言い出したのも、その裏で企業から大口のパーティー券購入のめどが付いているから。それが出来ていれば企業・団体献金の禁止で他の政党(自民党も含む)を弱体化させ、維新が資金面で有利に立つことが出来る。

 そして日本維新の会の裏には誰がいるか。そう、竹中平蔵である。もうこれだけで自維連立を支持したくない。維新は「無駄を削る」として公務員を削減したが、その後で業務効率化と言いながらパソナから人材を入れている。維新が国民ではなくどういう連中の代表者であるかは推して知るべしだ。

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 万博も成功したという事ですでに忘れられているかも知れないが、元はといえば夢洲で万博をやろうとしたのは国家的事業を使って(=国費を投入させて)カジノ誘致のための下準備をするためだったはず。無事に終われば何でも手放しに褒めるおめでたい国民性は為政者にとって都合が良い。そんな風潮は小中学校の運動会までにして欲しい。

今、するべき事は何か見失っていないか

 突然湧いて出たかのような自維連立の話と定数削減で世間(特にオールドメディア)は持ち切りだが、経済政策はどうなったのか。減税は?国民の手取りUPは?為替対策は?もうすぐ高市政権が発足しそうだが今になってまだ経済政策が見えてこない。

 どうにも本当に国民にとって、生活にとって重要な問題がもはやそっちのけになってしまっている感じがしてならない。この辺はマスコミがマスゴミと言うべき無能さでうんざりする。野党にも自民党にもこれから何をどうするかのビジョンが無いので、維新が自民党に突きつけた12カ条の要求がどうしても目立ってしまう。

 一部の国民は国会議員の定数削減や企業団体献金の禁止を「維新が無駄を削ってくれた」と歓迎するだろうが、維新が行う改革は維新にとって有利だから、有利なように進められるということを理解し警戒しなければならない。彼らは維新と名乗ってはいてもその根底に「この国を良くしたい」だのといった崇高な目標を持ち合わせていない。政党としての生き残りと利益を追い求めている。

 国民、主権者は維新のパフォーマンスに惑わされず、その裏にある意図を看破してやるべきことをやるように圧力をかけるべき。議員定数を削るなら削るで構わないが一度に50議席は多すぎる。何にせよ私は維新が信用できないので支持しない。

余談:参政党、神谷代表の主張

 参政党の神谷氏がまたもや見当違いな批判を始めた。国立大を出た人が外資に行くのは非国民とでも言いたそうだ。

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(記事題:「国立大生が外資大きく」 参政代表、税金投入に疑問)

 しかし日本においては職業選択の自由憲法で保障されており、国立大学を出た優秀な人材が外資や海外へ流出するのは優秀な人材を留めておけるだけの魅力的な環境や賃金、労働環境を提供できない日本政府や日本企業が悪いのであって労働者が悪い訳ではない。それが日本政府や愚かな経営者、竹中平蔵のような悪辣な経済学者が礼賛してきた新自由主義だろう。政府や経営者も自由競争に晒されて当然であり、魅力のないものが淘汰されるのもまた当然である。

 神谷氏が新自由主義を否定するならそれはそれで構わないが、矛先を向ける相手を間違っている。あるいはわざと間違えているのか。

 そもそも国が国立大学に税金を投入するのは社会全体の知識基盤・研究力を維持するための投資であって、卒業生を優秀な人材として囲い込むためではない。国立大の卒業生が外資や外国で活躍すればその人脈や成果が日本へ還元される場合もある筈で、外資系に就職することが国に対する裏切りとでも言わんばかりの主張は時代錯誤的で視野が狭い。

 それを言い出すのであれば参政党のような政党に政党交付金を出すことの方がよほど有害に思える。支持者にとって場当たり的にウケそうな主張を繰り返し、マルチ商法や誤った歴史解釈の講演会、書籍の出版などをビジネスとし、党員を搾取し、無知蒙昧な自称愛国者の力を借りて国政に口出しするような連中よりは国立大学の方がいかなる形であれよほど社会に貢献している。

 それにしても、なるほど国立大学にいけなかった、行ったけど何者にもなれなかった、それ以前の問題で人生が面白くなく、愛国心しか自尊心の拠り所を見いだせない参政党の支持者にとって、国立大学を出ていて能力があるにも関わらず外資で働いている人間を責めるのは正当性があると思えるのだろう。コンプレックスを裏側から煽って支持を取り付けるには良い着眼点だ。ひょっとすればこれは神谷氏自信のコンプレックスの現れか。

 妬ましさだけで相手の責められそうな所をどうにかして見つけてあげつらうのは弱者のやることである。現在はむしろ国が国立大学にお金出さな過ぎ。特に研究費。iPS細胞の研究室でさえ寄付を募っている。将来的にノーベル賞が出なくなるのでは。国内にいても研究が出来ないから研究者は海外へ流出している訳で、自称愛国者連中のお気持ちだけで無理やり研究者を国内に留めても予算を与えないなら何も生まれない。

 外資云々言うならまだ「Amazonに税金払わせる」くらいの方が支持できる。