ヤマネコ目線

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米不足の原因に対する考察

 あくまで考察であって「何かそういったデータあるんですか?」、と言われると「無い部分もあります」。

米不足の原因として考えられている要素

 主だったメディアで原因として挙げられているものには以下のようなものがある。

 まず「昨年は不作だった」という話だが、異常気象があるとはいえ米が不作だったと言う話は私が知る限り無い。近所の米農家も特に変わった様子は無いし作況指数も下記、農林水産省の資料を見ると北陸が少々低い程度で、全国的には不作な訳でもない。

下記資料より抜粋

https://www.maff.go.jp/j/study/suito_sakugara/r5_2/attach/pdf/index-6.pdf

 2022年の作況指数を見てもそこまで悪い訳ではない。

下記資料より抜粋

https://www.maff.go.jp/j/study/suito_sakugara/r4_2/attach/pdf/index-2.pdf

 とはいえこの作況指数は「その年の10aあたりに予想される収量」なので、単純な前年比でもなければ単純な米の総量平均でもないことに注意したい。あくまで単位面積あたりに取れる米の量が多そうか、少なそうかという指数。

 作況指数が好調であっても農家の数が減れば米の生産量は減る。事実、米農家の数も米の生産量も減り続けている。

下記資料より抜粋

https://www.zennoh.or.jp/press/release/2022/10/12/%E7%B1%B3%E6%83%85%E5%8B%A2.pdf

 政府が減反政策を推し進めて来たことが主な原因だが、米の消費量も大きく減っており需要と供給のバランスがそこまで大きく崩れている訳ではない。上記資料冒頭には米の年間消費量が50年間で半減とあり、生産量ベースで見れば4割減っているにとどまっている。

上記資料より抜粋

 ただし、食料自給率で見れば2000年から100%を割っており、24年経った今では在庫として余る米の量は減っていると考えるべきだろう。いつまでも「お米は作ってあまりあるもの」「備蓄しておくだけの余裕があるもの」と考えるのは大間違いである。

 「インバウンド需要による供給不足」は正直、現実味を感じない。確かに外国人観光客は増えているが、日本にはお米以外にも美味しいものが沢山ある。外国人観光客が多少増えたからといって、彼らが日本中のお米を食い尽くして不足を引き起こすとは考えづらい。

 下記の日経の記事では訪日客によって米の需要が3万トンの上方修正とある。年間700万トン作っていて3万トンの影響はそこまで大きくないのでは。

www.nikkei.com

 複合的に考えるならば、2020年から米の自給率が100%を割り続けて徐々に余る米の量が少なくなり、そこでインバウンドによる需要増加によって少ない在庫がいっきにはけて、新米の供給が始まる手前で一時的な米不足に陥った、と見れなくもない。

 南海トラフ巨大地震注意の影響についてはそこまで大きく無いのではと思う。お米は確かに備蓄可能で日本人の主食ではあるが、調理に水と火が必要なので個人で備蓄するにはあまり好まれないのでは。

 特にスーパーで売られているような精米後の米はおいしく食べられる期間が1ヶ月程度しかない。非常食として米を備蓄するならアルファ米の方が調理が手軽で日持ちもする。

それら以外で考えられる要素

 個人的には以下の要素も一因であると考えている。

 報道機関は事実を伝えるのが仕事なので、米が不足していることを「お米が不足しつつあります」と伝えたところでそれを批判するのは的外れに思う。

 一方で面白おかしく、危機感を煽るような報道をするマスコミがあるのも事実だと思うし、それによって負の効果が生まれる感は否めない。それに踊らされる一部の国民も悪いのだが。

 そして、マスコミが危機感を煽ったことによる需要の増加に敏感に反応するのが転売ヤーという名の人間のクズである。スーパーに売られている米の数は転売ヤー個人で買い占めようと思えば出来なくはない。実際、メルカリで米が転売されている実例が多々あった。1人では無理でも2、3人いれば小売店の棚を干上がらせるには十分。

 前述したように持って1ヶ月程度の食品を、そろそろ米の収穫時期で米不足はすぐに解消されると予想できるのに仕入れるとはバカな奴ら。売れないからと食わずに捨てるのはもったいないから、不良在庫はどこかに寄附するなり無償で配るなりこども食堂に送りつけるなりして欲しい。それがせめてもの食z・・・贖罪。

 転売ヤーの是非については以下の記事で完全に否定しているのでここでは論じない。

manuller416.hatenablog.com

総括と今後の予想

 2000年付近から自給率が100%を割り続けて市場の在庫が少なくなって来たこと、インバウンドで需要が10年ぶりに増加したこと、マスコミによる報道とそれに煽られた消費者による不必要な買いだめ、転売ヤーによる買い占めが重なって、新米が供給されはじめる前に一時的な米不足に陥ったのではないかと思われる。

 米農家そのものが減少し続け、政府が減反政策を転換しない以上はこれからも何かの拍子で米不足に陥る可能性はあるだろう。ただし米の消費量も日本人も減り続けているため、そこまで頻繁に米不足で大騒ぎすることも無いのではないか。

https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r2/r2_h/trend/part1/chap2/c2_1_00.html

 一方で「お米すら自国で賄えなくなってしまった」と見れば危機感を抱かずにはいられない。総合食料自給率も上図の通り下がり続けている。

 直接的な防衛力強化も結構だが、まずこういう足元の危うさからどうにかするべきでは。農政に限らず内政全般がゴミカス。戦争するまでもなく内側から滅びそう。

 「米が足りなくなったらタイ米を輸入すればいい」などと楽観的な意見も多く聞かれたが、脅威を増し続ける中国の傍ら、いざ戦争など起これば海路が絶たれてすぐに食料不足に陥ることは予想に難くない。

 なお、ソースが頼りないが2010年時点のウクライナの食料自給率は193%である。

List of countries by food self-sufficiency rate - Wikipedia

各種意見に対する至極個人的な感想

「なぜ備蓄米を放出しないのか」

 もうすぐ米の収穫時期、早いところでは既に収穫時期なので米不足はすぐに解消する見込みが高いので必要無い。備蓄米制度自体は10年に1度の大凶作にも対応できるように作られたものだが、今年の米不足がそのレベルかと言えばまったくそんなレベルではない。政府批判したさだけで備蓄米を放出しないことを批判することは愚か。

備蓄米制度(びちくまいせいど)について教えてください。:農林水産省

「米は高い、このタイミングで値上げするのは卑怯」

https://www.zennoh.or.jp/press/release/2022/10/12/%E7%B1%B3%E6%83%85%E5%8B%A2.pdf

 何もかも値上がりする中で一消費者としてその気持ちは理解できるが、2024年産米のコシヒカリ一等米で 16,800円とこの図を見ても特段、不当に高いという訳ではない。流通過程においてこれ以上に上がる可能性はあるがそれは農家の問題ではない。

 米農家も消費者として農業にかかる燃料、肥料などの高騰に苦しんでいる。本音を言えばもっと値上げしたいと思っているのではないか。そもそもの売値が安いのでお米で儲けようというのはよほど規模が大きくなければ難しい。何なら先祖代々の土地を守るためだけに、ほぼボランティアみたいな収支でやっている農家もある。

 それでも高いと思うのなら買わなくて結構。パスタでもすするか自分で作れ。田んぼなら貸すぞ*1

補助金でも儲けてるのに値上げなんておかしい」

 減反政策なのにどうして「お米作って補助金でもがっぽり儲けてる」などと思うのか。補助金はあくまで補助金であって、かかる費用を補って余りあるなんてことはまず無い。こんな事を言う人間はよほど脳みそが無いと見える。頭の中が大凶作。そんなに儲かると思うならどうして米農家がここまで減っているのか説明しろ。

 以下は農林水産省が出している稲作農家が活用できる支援についての資料。補助率はかかった費用の1/2あるいは定額とするものが多い。事業再構築助成金も上限は大きいが2/3でこれは何も米農家に限って使える制度でも何でもない。事務局の電話番号がナビダイヤルなのがいやらしい。

https://www.maff.go.jp/j/saigai/n_coronavirus/pdf/support_kome.pdf

 ほかにも以下のリンク先で紹介されているように様々な補助金があるが、いずれも何か新しいことに取り組んで面倒くさい申請書類をきちんと用意して初めてもらえるものであり、「農家は毎年いつも通りにお米を作るだけで政府から補助金をがっぽりもらっている」などと考えるのは相当なアホである。脳ミソ導入補助金でも申請するか?助成金補助金の意味が理解出来ていない。事業を通常どおり運営するだけでもらえる補助金なんかどこにあるのか。

【2024年最新版】農業ビジネスで役立つ補助金・助成金まとめ!活用してコストの負担を抑えよう | 起業・創業・資金調達の創業手帳

 米を作るだけでがっぽりもらえるような補助金があるなら逆に教えてくれ。「補助金もらってるくせに」と批判している人間は批判するからには知っているのだろう?食料自給率はむしろ批判されるくらい補助金出してやっと改善に向かうレベルだと思うのだが。

「農家は植えて待つだけだから楽で良いよな」

 い つ も の。頼むから一回、自分でやってみてから言って欲しい。他人の仕事が楽に見えるのは分からなくもないが、この手のことを言う人間はネットであっても恥ずかしいレベル。いかに自分がものを知らないかを自ら晒している。引き合いに出すのもなんだが、大谷選手を見たら「棒で飛んでくる玉打つだけでいいから楽だよな」って言うのか?もはやお笑い。さぞかし大変で大変なりに儲かるお仕事をされているんでしょう。

番外編:農業の効率化が生物の多様性を損なっている

 コンクリート製の水路や単調な農地区画整備、除草剤や殺虫剤を散布を指してこう指摘されている。確かにこれらが生物的多様性に与える負の影響はあるだろうが、そうは言っても農家はそうした効率化をしなければやっていられない訳で、実務者のことを考えずに環境が、生物多様性がと言ったところで何も変わらない。

 極端なことを言えば耕作放棄という形で土地を自然に還すのが一番環境に良いというような話になる。農地として維持する場合、効率化をしない分は消費者に価格として、生産者に手間として返って来るので、農産物の値段は5~6倍くらい跳ね上がって農業従事者も減るだろう。指摘されたところでどうにもならん。

 大量生産大量消費を前提とした人間のライフスタイルのまま自然と共存することはかなり難しい。私は不可能だと思う。牧歌的な世の中に戻らない限り真に「環境に優しい暮らし」など虚構に過ぎない。農業に限らず、世の中EVだ再生可能エネルギーだと言っているが結局は人間全体、今のライフスタイルを根本的に見直すつもりがない。それが出来ないならば環境負荷もそう大して変わらない。

 環境のことを言うならば世界各国から、温室効果ガスを出しながら長い道のりを通じて食料輸入していることがまず第一の問題ではないか。生物多様性を損ねると言う意味では町作りも著しく害。農地にはまだ失われることが危惧されるだけ自然が残っている。

*1:クソ田舎だけど