ヤマネコ目線

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若いというだけで支持をするな

 自民党総裁選は11人もの候補者がいるが、これからどんどん絞られて来るだろう。しかし小泉進次郎氏の勢いは凄い。40人以上の推薦人を集め、菅元総理の支持も得ている。次の総理大臣は小泉で決まりと言わんばかりで支持するお年寄りも多いだろうが、私はこれに異論がある。

世襲世襲」であることを見ろ

 世間的には、特に高齢者からすれば小泉氏を「若くて子育てもしていて自民党を変えてくれそうな新しい世代」と見る向きもあるだろう。しかし小泉氏を若年層、あるいは現役世代の代表として見て良いかと言われれば大いに異論がある。

 まずもって小泉氏は世襲である。それも小泉純一郎の祖父、小泉又次郎の代から続く政治家の家系であり、父は誰もが知る小泉純一郎元総理大臣、母は実業家の宮本佳代子(エスエス製薬会長の孫)*1。最終学歴はコロンビア大学大学院。初当選した2009年時点では28歳くらい。こんな人間が現代日本の若年層の声を代弁できるとは到底思えない。本当の意味でお金に苦労したことなど無いだろう。格差拡大の実感もあろう筈がない。

 生年月日は1981年4月14日。就職氷河期世代は大体1970~1984年生まれの範囲とされているので世代ではあるが就職氷河期など関係あるはずが無く、職歴としてはコロンビア大学大学院を卒業した後はアメリカのシンクタンク戦略国際問題研究所で働いたのを最後に、帰国後は小泉純一郎元総理の私設秘書になっている。

 つまり日本国内の民間企業で働いたことが一度も無い。大企業ででも働いたことがあるなら多少は日本の労働環境、賃金に関する不満への理解も期待できるかも知れないが、進次郎氏にはそれすらない。言ってしまえば現役世代とは、特に就職氷河期世代とは一番かけ離れた感覚の持ち主である。

結婚・子育てしているからこそふさわしくない

 日本は今さら言うまでもなく少子化である。そもそもの問題として婚姻数自体が減っている。その中で当たり前のように結婚、子育て出来ている人間は比較的恵まれた部類であり、むしろ今、それが出来ている人間は少子化の原因から縁遠い立ち位置に居ると言える。進次郎氏は少子化問題においてケアするべき当事者の1人でも無ければ理解者でも無い。

 中でも滝川クリステルと結婚して順調に子育てをしているような人間は上澄みの中の上澄みであり、少子化の原因からは一番縁遠い人間といっても過言ではない。。子育てにかかる苦労は多少分かるにしても、結婚できない人間の苦しみ、そうした層が感じているハードルの高さなどは到底理解できないだろう。

 別に総理大臣が少子化の原因の当事者である必要は無いのだが、感覚のズレた老人の中で新しい風を、という体で出てくる以上は新しい感覚を持ち合わせていなければならない。世代交代を売りにする割にはそうした感覚を持ち合わせている要素は欠片も見られない。立ち位置としてはその他の老人政治家と何ら違いがなく、せいぜいこれまでの少子化対策の延長しか出来ないだろう。それは事態をより悪くする一方であることを意味する。

党内パワーバランスの問題

 氏も誰かの言いなりになるつもりは無いだろうが、菅元総理をはじめとした有力な政治家たち、官僚たちの言うことに逆らえるとは思えない。年齢的にもまだまだ若手の部類。党内のパワーバランスを考えれば進次郎氏の意思をもって政策を推し進められると考える方が不自然である。二階俊博麻生太郎を前にすればひよっこひよっこ

 その点を踏まえて一歩引いて見れば党の顔として選挙に勝つための存在、神輿として推されているだけであって、自民党を変えうる存在でも無ければ政治全体を正しい方向へ導ける存在でもない。世の中はそんなに甘く無い。本人がどう思っているかに関わらず、彼は下手をすれば使い捨てにされるだろう。まんまと騙された日本国民はまた痛い目を見る。進次郎氏では自民党を新しくすることは出来ない。そんなパワーは無い。

 進次郎氏を推している政治家達もそうした打算の下に動いている訳で、悪い言い方をすれば「進次郎さえ担いでおけば自民党が若返ったと国民が勝手に勘違いし、自民党が変わることを期待して次の選挙でも勝たせてもらえる」と踏んでいる訳で、そうした点において推薦している政治家たちも気に食わない。国民を欺く賊でしかない。

 ちなみに小沢一郎氏が言ったとされる言葉に「担ぐ神輿は軽くてパーが良い」というものがあるが、調べると小沢氏の「海部はほんとうにバカだな。宇野宗佑のほうがよっぽどマシだ」という発言と、自民党平野貞夫氏が言った「ボロ神輿だからこそ担ぐんだ」という発言が混同された結果生まれたとされる。この時代の情報の伝わり方怖すぎ。今でもあまり変わってない気もするが。

憲法改正を掲げて立候補すること

 進次郎氏が総裁選に立候補する上で掲げるのは憲法改正のようだが、これだけ政治不信が広がる中で平気で憲法改正を掲げて来るところに輪をかけて感覚の乖離が感じられる。はっきり言ってこれが一番気に食わない。結局はこいつも「やりたい事だけ」熱心なのだ。今、掲げるべきはそれなのか。それで良いと思っているのか。

 このまま自民党政権が続くとすれば、まずやるべきは信頼回復。統一教会問題、裏金問題だけでも自民党の対応は目に余る。甘すぎる。ありえない。そうした問題に対する引き締めをまず打ち出すべきではないのか。この点はまだ政策活動費の領収書公開期限を見直すとした元財務官僚の小林氏の方がまだまともに見える。でも元財務官僚だしな・・・いきなり出てきた感が何らかの意図を感じられてこれはこれで嫌。2、3年で公開と言うがそもそも政治資金収支報告書の保存期間がたった3年なのもおかしい。

www.yomiuri.co.jp 

 それはそれとして、先に断っておくが私は憲法改正に「絶対に反対」という立場ではない。時期が来れば改正しても良いと思ってはいる。しかし今はその時期ではない。

 最高法規を変えようとするからには政治にそれなりの信用が必要ではないだろうか。少なくとも私はそう思う。それを政治不信が一層強まっているこのタイミングで堂々と打ち出して見せる、やりたい事だけやろうとする自民党議員全体の神経が理解できない。

 国民の関心が無いままに自民党議員の間だけで議論したものをもってして「改憲への議論が成熟した」などとのたまい、本質的な国民における議論の成熟なくして、無関心を良いことに最高法規を変えようとするのは許せない。

 それよりも解決するべき問題は山積しているではないか。政治に無関心といよりは関心が持てるような政治が行われていない。「失政は政治の本質」とも言うがあまりに酷い。国民の暮らしを無視して無関心を良いことに最高法規を変えようと躍起になっている姿は強い言い方をすれば国賊である。

政策に関して芯が無い

 Wikipediaをソースにするのも何だが政策・主張において

  • 憲法を改正し緊急事態条項を設けることについて、2017年、2021年の毎日新聞社のアンケートで回答しなかった
  • 敵基地攻撃能力を持つことについて、2021年の毎日新聞社のアンケートで回答しなかった
  • 徴用工訴訟などの歴史問題をめぐる日韓の関係悪化についてどう考えるかとの問いに対し、2021年の毎日新聞社のアンケートで回答しなかった
  • 首相の靖国神社参拝について、2014年、2017年の朝日新聞社のアンケートで回答しなかった
  • アベノミクスについて、2017年の朝日新聞社、同年の毎日新聞社のアンケートで回答しなかった
  • カジノ解禁について、2017年の毎日新聞社のアンケートで回答しなかった

など、ここぞという面で自分の意見を出していない。判断に困ることはあえて回答しないというのもリスクマネジメントではあるが、何につけても氏が何をどう考えているか釈然としない。

 経済学部経営学科卒だけあって経済関連については規制緩和に積極的であったり、大企業や所得が多い人への課税強化について「どちらかと言えば賛成」と回答するなど積極的な面があるが、それ以外に不安が残る。

 教育無償化に関連して党内で出た教育国債案には「次世代への負担のツケ回し」と批判しており、社会保険料に上乗せして財源を徴収する「こども保険」案を提唱している。この点、最近反発を招いた子育て分担金の元凶は進次郎氏ではないのか。直接的な元凶で無いにしても、これは氏の発想がズレている証左である。

 尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件に関しては、「そもそも、(政府がビデオを)もっと早く公開していれば、流出事件も起きなかったんですよ」と強気の発言をしているが、これは民主党政権時代であり自民党は批判をする側であったことを忘れてはならない。言っていることに異論は無いが、実際に自民党が政権を握っていて氏の言う通りに出来たかは疑問である。

 慰安婦問題に関しては要約すれば「政治家だけでなく歴史の専門家に任せるべき」としており、自身の中ではどのように思っているかを表明していない。

 よくやり玉に挙げられているレジ袋有料化については前任の原田義昭氏が推し進めたものであり、施行時点での環境大臣が進次郎氏であったので進次郎氏を批判するのは的外れという意見もある。ただしレジ袋有料化そのものについては否定的ではない。

 加えて進次郎氏の迷言としては

  • 2019年9月22日に開かれた地球温暖化などを議論する国連の気候行動サミットにて環境大臣として参加した際、別の出席者の言葉を引用し、「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきです」と発言し、大手海外メディアも報じるほどに国内外で物議をかもした
  • 日本国内で新型コロナウイルスの感染が発生している中、2020年の2月16日に開かれたコロナウイルス感染症対策本部を欠席。小泉氏は後援会の予定を変更せず、神奈川県横須賀市の後援会に出席した。衆議院予算委員会で野党からの追及を受け、(中略)反省」という言葉を何度も口にして釈明を繰り返し、最後まで謝罪を拒んだ
  • 2021年3月18日にJ-WAVEで放送された番組「JAM THE WORLD」に出演した際、「プラスチックの原料って石油なんですよね」「意外にこれ知られてないケースがある」と発言し、インターネット上を中心に物議を醸した
  • 2021年4月23日のニュース番組『NEWS23』(TBS)に出演した際に温室効果ガス削減目標26%から46%に引き上げたことについて「くっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら、浮かんできたんです。“46”という数字が」「シルエットが浮かんできたんです」と発言して炎上した

など、発言内容と言うよりは一般常識、思考回路に不安がある。「三十年後の自分は何歳かな」発言は文脈的に言葉選びを誤っただけのように思うので割愛。一応

  • 子供の声は騒音ではない

というまっとうな発言もある。福島の処理水海洋放出問題においては福島沖でサーフィンして見せるなど悪いところばかりでは無いのだが、言ってしまえばそれは当たり前というか、逆に「良いところがほんの一欠片も無い」という人間の方が珍しいので特に秀でた面ではない。

余談:遺伝した小泉構文

 同じような内容が文章の前後で繰り返されることが「小泉構文」の特徴だが、改めて見れば小泉純一郎元総理の以下の発言も似たようなものである。

 前者は説明不要だろう。後者は「非戦闘地域自衛隊を派遣するがどこに派遣するのか」と言う質問に対して「自衛隊が派遣される地域が非戦闘地域」と堂々巡りになっている。

 それでも進次郎氏ほど弄られないのは純一郎氏よりもこうした構文、言い回しを多用するからと推察されている。

 私は進次郎氏を支持しない。自民党は是が非でも今一度下野させるべき。でなければ彼らはおめでたい思考回路で「国民は旧統一教会問題も裏金問題も許してくれた」と勘違いする。野党が良いとも言わないが自民党に任せるのも限界。

 

*1:生まれて間もなく離婚しており育ての親は伯母