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「子どもの少ない人は反省を」発言

 自民党、元衆院議員の笹川氏が自民党群馬県連大会にてあぜんとするような発言をした。

news.yahoo.co.jp

(記事題:「子どもの少ない人は反省して」 笹川尭元議員、前橋の自民会合で)

発言全文(朝日新聞の記事より)

 お金を出したら人口が増えると思ったら大間違いだ。そんなことはありえない。やっぱり男がしっかりしないといかん。あなたの子どもならぜひ産みたい。作りたい。(女性が)そういう気持ちになるような旦那が増えなきゃだめだ。みんな胸に手を当てて反省してください。子どもの少ない人は。

 もちろん人間のことですから、子どもができない人もいる。しかし、その人はその人として働いて、世の中のために尽くしているからそれはそれでいいんだ。

 やっぱり男がしっかりすれば、必ず女性は子どもをこしらえてくれる。頼まなくても、わが愛する主人のために子どもを産もうとなる。お金の問題ではない。

まず反省するべきはお前ら

 何というか、歳も歳(88)なので仕方ない面もあると思うが、ここまでズレた価値観の人間が未だに政治家として公に発言する場を与えられていることに絶望を感じる。まず反省するべきはここまで失政を続けて来た自民党の政治家である。主権者たる国民に対して「胸に手を当てて反省しろ」などと言う前に、自分が世間からして致命的に感覚のズレた老人であることを自覚し、政界から引退するべきだ。

 不愉快きわまりない。一体どの立場で、何様のつもりでモノを言っているのか。これが群馬県連の大会とはいえお立ち台で発言するのだから、自民党の政治家どもが少子化の責任についてどう考えているのかよく分かる。結局こいつらは失政によって失われた10年を20年に、20年を30年にして来たことを棚上げして、少子化の原因がひとえに日本国民の生き方にあると思っているのだ。

 百歩譲って今の日本男子に甲斐性がない事は認めるとしても、そういう社会にしたのはお前らだろと言いたい。「男がしっかりする」などという極めて抽象的なことしか言えない脳みそでこれ以上、政治に関わって欲しくない。「子どもの少ない人は反省してください」などと、このご時世に子どもを作る・育てることの大変さを理解できない人間が口にするべき事ではない。

 専業主婦を前提とした旧来の家庭を持つ前提のような物言いも気になる。今の世の中では共働き当たり前。夫の稼ぎが多少良かろうが女性の負担は重いものであり、「男がしっかりする」程度では何も解決しない。「子どもができない人」への配慮らしきくだりもあるが、それを加味してもこうした言葉は辛いものだろう。

思い上がりも甚だしい

 こういう世代は何を言われようと反省する事もなく、むしろ「今の日本を作り上げて来たのは我々だ。悪いことは全部下の世代のせい」と思っていることだろう。しかしそれはとんだ思い上がりである。

 戦後、何も無い状態は言い換えれば伸びしろしかない。経済成長した点は素晴らしい。しかし戦後復興の流れというものもあるし、なぜ経済成長したのかを問うことなく惰性で社会を動かして来た結果、「いつまでも経済成長できる」という根拠の無い安心感をバブル崩壊で打ち砕かれ、何が必要なのかも分からないままに失政を続けて失われた30年が経過した。

 その中で日本は歪な政治体制、形骸化する民主主義、劣悪な労働環境を放置したまま屋台骨が歪んだ国家として成長してしまった。これらを修正するためには膨大な労力が必要である。それを払わされるのは我々やその下の世代。良い面もあるが悪い面もそれなりにある訳で、そうした事を考えずに「我々は凄かったんだ。お前らは意気地なしの甲斐性なしだ」と言われても反応に困る。

 大衆は愚かなので、子孫から見て100点満点の国家を作ることなど不可能だろう。それは求めるべきではない。同時に上の世代が下に対して100点満点の評価を求めることも間違い。大体、「戦後日本は我々が作ったんだ」などと言うような人間に限って大した社会貢献もしていないのでは。生きているだけで評価されるほど世の中は甘くない。

「お金の問題ではない」?

 少子化に関して「お金の問題ではない」というのも異議がある。と言うよりも根本的な認識がズレている。

 確かに、今の若者は生半可な金銭的支援では子どもを作ろうとしないだろう。結婚するかも怪しい。私だってたとえ子ども1人につき1,000万円支給と言われても作る気も作れる気もしない。子育てにかかるコストを全て公的支援で賄おうとするのは無理があるし、その点では政府が金さえ出せば良いという話でもない。「無償化」は言い換えれば「税金化」である。公的支援をするとしても何処かからその財源が降って湧いてくる訳ではない。

 子どももへったくれも、婚姻数が減る中で「結婚して子育てする」前提の少子化は周回遅れ甚だしく、それを理解せずに無償化や給付金といった周回遅れの政策を拡大させ続け、その財源として他ならぬ現役世代の負担を増やし続ける政策は愚の骨頂である。

 しかし少子化におけるお金の問題はそういう話ではない。社会全体の格差が拡大し過ぎていることが問題なのだ。中間層が薄い。自民党の政治は国民を大勢の貧乏人と一握りの富裕層に分けて来た。格差を拡大させ続けて来た。格差を是正する政府の使命を放棄している。格差が拡大すれば、大勢の貧しい人間は社会的に求められる「結婚して子育てする」に足る基準を満たせない。

 特に生まれた時から日本が悪くなる一方であった世代は、自分が子どもの頃=日本が一番良い状態だった頃。失われた30年の中でそうした世代がいざ大人になる頃には、自分の子どもの頃と比較しても満足いく恋愛、結婚、子育てが難しいという状態に陥ってしまう。世の中の基準と照らして自分が貧しいと自覚しているなら、結婚や子育てを諦めるのが賢い選択となる。

 若者は贅沢を言っている訳ではない。自分たちが育った頃の基準が今や贅沢になってしまったのだ。よく例に挙げられる野原ひろしのスペックはその典型だろう。

 一方、富裕層は富裕層で「大勢の貧乏人が子どもを作らない」という現状を補って余りあるほどの子どもはつくらない。何人作ろうが一部の富裕層で人口を下支えすることなど不可能。3人以上子どもを作ることが出来る世帯は減っていき、全体的に少子化は加速していく。前にも書いたが子どもは3人以上でなければ人口は増えない。不慮の事故や病死などを加味すると2人では徐々に減っていく。

 政治家と同じように「お金の問題ではない」と思っている人間は多そうだが、全体的に考えればやはりお金の問題である。直接的な経済支援どうこうではなく全体的な富裕層、中間層、貧困層のバランスの問題。格差を是正し、中間層を厚くしなければ子どもなんか増えない。それを放棄した側の分際で何が「反省しろ」か。そう思うのも言うのも自由だが、政界から引退して誰の耳にも届かない所で言ってろと思う。

余談:東京都知事選挙の結果

www.tokyo-np.co.jp

 魑魅魍魎が跋扈する中では結局、現職が強いだろうなと予想していたので結果は予想通り。意外なのは石丸伸二氏が2位だったこと。特に10代、20代で一番支持率が高かったらしい。

 正直、石丸氏は好きになれないというかすぐキレる*1パワハラ気質で怖い、橋下徹山本太郎を足して割ったような人という印象しかない*2、それはそれとして10代、20代は政治を変えようと行動している感があり希望が持てる。人口比率的にどうしても上の世代の絶対数が多いので若年層の意思は反映されづらいのだが。一票の格差を言うのであれば年齢別人口も加味するべきである。

 蓮舫氏は2位にすらなれなかった訳だが、どういう人間が応援しているかを考えれば残念ながら当然の結果。共産党支持層に応援されている時点で相当心象が悪い。名前こそ書いていないものの戸別にチラシが配られていたりと無法地帯。年少扶養控除の廃止についてツッコミを受けたのも良くなかっただろう。それを考えれば石丸氏が2位に浮上したのは不思議ではない。立憲民主党共産党も自分たちがどれだけ嫌われているか、この機会に自覚した方がいい。

 田母神氏は4位だがまあ、年齢的にも立ち位置的にも仕方ない。得票数で見れば3位の蓮舫氏に約4.8倍の差を付けられている訳だが、この現実をどう見るか。ひまそら氏に至っては7位と奮わず。ネットで見かけるほどこの2者の支持者は多くない。エコーチェンバー現象。

 田母神氏とひまそら氏の間に入っている2名は正直よく分からん。特に内海聡氏はちょっと調べるとなかなか・・・この辺りの候補者に10万票以上入る東京怖い。AIメイヤーは2,761票、ジョーカー議員こと河合悠祐は2,035票、アキノリ将軍未満は792票。悪ふざけする人間がこんなに・・・。

 

*1:パフォーマンス感あるがそれでもヤバい

*2:あくまで個人の印象です