ヤマネコ目線

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奈良県の防災拠点予定地がメガソーラーに

 奈良県知事、山下氏 (日本維新の会) は大規模広域防災拠点の予定地であった五條市の元ゴルフ場について、約1ヘクタール(=10,000m^2)を防災用に活用しながら残りはメガソーラーにすると言い出した。

www.nara-np.co.jp

(リンク切れ対策|記事題:奈良県が五條の広域防災拠点用地にメガソーラー計画)

メガソーラーだぁ?

 大規模広域防災拠点は滑走路2,000m級の滑走路を備えた計画であった。これは奈良県だけの話ではなく、もとはと言えば近畿地方地震などの大規模災害発生時、物資や人を集約できる防災拠点が存在しないとのことから整備が進められて来たもの。特に南海トラフ巨大地震に対する備えとして重要視され、下記資料のように近畿ブロック知事会からの文書も出ている。

紀伊半島防災のための奈良県大規模広域防災拠点整備への支援に関する提言

www.traicy.com

 それを維新お得意の”ムダ”を削る観点から中止し、今度はそのための土地をメガソーラーに利用すると言い出したのだ。知事曰く「大規模な滑走路でなくともヘリポートで良いのでは」と。これが果たして削るべきムダだったのだろうか。

 ここで災害時に使うヘリポートの大きさを考えてみよう。ヘリポートの大きさは「ヘリの全長全幅以上」と定められている*1能登半島の震災で多く見かけた自衛隊の大型輸送ヘリ CH-47 の大きさは全長が約30m、全幅が約18m*2。理論値として必要最低限の広さは540m^2。

木更津駐屯地に駐機中のCH-47J

 実際のヘリポートは円形*3なので、少なくとも機体の全長に合わせた直径30mの円形の範囲が必要。面積に直すと約706m^2。防災用に使用される面積は1ha(=10,000m^2)とのことなので、面積だけで計算すれば約14機分のスペースとなる。実際は防災倉庫も併設されるし、ヘリポート自体が円形であることや機体同士の距離も考えるとさらにヘリポートの数自体は少なくなる。大規模災害の際、それで十分な数と言えるのか。

参考:木更津駐屯地ヘリポート間距離

 それに加え災害時の処理が問題視されているソーラーパネルを元ゴルフ場とはいえ、あのような山奥に多数並べるとは一体どういうつもりなのか。ソーラーパネルの業者から献金でも受けているのだろうか。

 なお、ただでさえ田舎臭い奈良県だがその中でも五條市は南西部に位置し、南部の秘境とまで行かないまでもかなりの田舎である。その更に山手にある元ゴルフ場にメガソーラーとは。電力ケーブルを盗んでくださいと言っているようなものでは。

maps.app.goo.gl

solarjournal.jp

下北山村の道がまだ復旧していない

 県民として心配なのはそれだけではない。2023年12月23日に下北山村内の国道169号線で発生した土砂崩れについて、2024年1月25日になってなお復旧が完了していない。全面通行止めが続いている。道路の管理は県。

www3.nhk.or.jp

 崩落した道路は片側が崖、もう片側がダム湖 ( 池原貯水池 ) となっており、安全を確保しながら工事を進めるのが難しいようだが、能登半島の震災対応を見ていると前述した防災拠点の中止もあいまって不安を覚えずにはいられない。来月( 2024年2月 )の委員会で応急対応の方針を決めるとしているが、平時でこれで本当に大丈夫か。能登半島の道路復旧の方が早いレベルでは。それとも、災害対応では南部を切り捨てるのか。あるいは本当にこれだけ時間がかかるほど工事が難しい場所なのか( 平時なので逆に時間をかけられるとも取れなくは無い )。

 なお、下北山村付近から北部へつながる道路は国道169号線以外に無い。迂回できなくも無いが奈良県南部は本当に秘境であり、ともすれば能登半島よりも震災対応に苦慮する可能性がある。

下北山村付近 GoogleMapより

 山下知事は元生駒市長だが生駒は奈良県北端で大阪にかなり近く、奈良県内ではベッドタウンとはいえかなり発展している部類。その感覚が抜けないのか知らないが、知事となったからには奈良県全体を考えて欲しいものである。山下知事になってから関西広域連合にも参加した訳だが、他県は防災拠点の見直しをどう考えているのだろうか。

 これに限らず、知事となってから行われた様々な見直しの内容を見ると地域の生活をより良くするために話が進んで来たものを、地域の意向を無視して次々と中止させようとしている。一部には確かに見直しの余地があるのだろうが、各自治体の長に対して事前に知らせることなく整備計画の中止を表明するなど必要以上の反発を生んでいる感が否めない。

維新の会に対する私見

 維新の会は劣化版自民党に過ぎない。「身を切る改革」というパフォーマンスとメディア露出だけは上手いものの、その実、必要な/だったものを削って利権に金を回しているだけ。大阪万博などその最たるものだ。文書交通費に関しても彼らは身を切らなかった。「身を切る改革」とは言うが”自分の”身を切るとは言っていない。そんなところ。

 維新の会自体、元はと言えば橋下氏が「自由民主党・維新の会」を引き連れて独立したのが始まり。程度的に自民党と大差無いどころかもともと自民党であり、そこに勝ち馬に乗るために野党からも議員などが集まって今の維新が構成されている。元大阪府知事、元大阪市長松井一郎氏も初当選時は自民党の公認候補であった。

 一応補足しておくが山下真 奈良県知事は元弁護士、最初に所属したのは維新の会で生駒市長を経て知事となっている。

 維新の会が一大勢力になり得たのは当時の橋下徹氏の勢いによる所が大きいと思うが、裏を返せば今の維新にはカリスマ的指導者も政治的な軸も無い。軸が無いので国政において「他の野党と違う」感を出すために与党の太鼓持ちに回れる。もともと自民党だったので自民党の別動隊と見るべきかも知れないが。何ならもう自民党と再び合流してはどうか。やってる事はそんなに変わらないだろう。それともパフォーマンスのためには敵が必要か。とんだ茶番だ。

 政党の創設者である橋下徹氏も今やテレビでロシア擁護したりとあまり良い印象は無い。奈良県民は維新を知事にしてしまった*4が、他県は騙されないで欲しい。もっとも、奈良県民としては前任の荒井知事が長すぎて変えたい、他に良さそうな候補がいなかったという点も理解はしているが。どこもそんなものなのだろう。大阪もとにかく「脱自民党」したかったのだ。今の国政にしたってそうだろう。可能ならば、投票できる先があるならば自民党以外に入れたい、そう思う人もいるのでは。

 そこで維新に入れるのはあまり良い選択肢と思えない。

 なお、下北山村あたりの奈良県南部はガチでマジのド田舎(失敬)なので、そういう雰囲気が好きな人は一度訪れてみても良いかも知れない。道はかなり狭いし蛇行しているので事前にGoogleストリートビューで通る道は確認すべき。

下北山村 GoogleMapストリートビューより

 

*1:建物の上に設ける場合はそれぞれの1.2倍以上

*2:当然ながら回転翼も含めての数字

*3:でないと着陸する向きが限定される

*4:私は彼には入れていない