ヤマネコ目線

大体独り言、たまに写真その他、レビュー等

続)震災対応、素人アドバイザーに反論する

 前回記事の続き。震災対応に対する素人アドバイザーへの反論を書いておく。改めて書くが政府批判をするなと言いたい訳ではない。それはそれでやれば良い。特に震災を緊急事態条項の実現に利用されたり、裏金問題をうやむやにされることは避けるべき。

 一方で震災対応は各所がやるべき事をやれるだけやっている。素人が外野からああだこうだ言って下手な批判をしても反感を買う、ツッコミを入れられるだけ。

↓前回記事

manuller416.hatenablog.com

空挺降下で物資を届けられないのか

 最近、自衛隊の空挺降下訓練があったのでそれを見て言い出したのだろうが、被災地ではすでに大型の輸送ヘリなどが飛び回っている。その中で自衛隊員をパラシュート降下させることは危険。空挺降下は持てる物資も少なく怪我のリスクもある。目についた「良さそうなもの」に飛びつく思考をどうにかした方が良い。

 「物資だけパラシュートで落とせば」と言う者もいるがもっと危険で、人間なら自分である程度パラシュートを操作して降りる場所を選べる一方、物資は一切コントロールが効かない自由落下になる。どんな場所へ落ちるか分からない。手の届かない場所に引っかかるくらいならまだマシで、復旧した電線に引っかかる、道路に落ちる、農地に落ちる、生き埋めの人がいるかも知れない倒壊した建物の上、人家、車、復旧・救助作業にあたっている人の上に落ちるかも知れない。安全を考えた場合に極めて非合理的である。それを判断できないのは想像力が足りない。「プロなら狙った場所に落とせないのか」などと言い出しかねないがここはゲームの世界では無い。CoDのケアパケじゃ無ぇんだよ

 じゃあ「パラシュート操作できる物資投下方法を作ればいい」?どのみち風に流されるのでそこまで投下地点を選べない。落下地点まで物資を取りに行って、さらにそこから必要な場所へ輸送する必要もある。だったら最初からヘリで必要な場所へ直行させれば良くね。

 そもそも空挺降下は奇襲や敵地深部への攻撃など、展開速度が重視される状況や安全に兵士を降下させることが難しい場合に行われる戦力投入の方法で、どんな場所、状況でも出来る/実施する訳ではない。目的に応じた手段の選択をするべき。

 平坦な場所でなければ降りられないし風向きも重要で、パラシュートを操作するにも推進力は無いので降りる場所を選ぶには限界がある。能登半島のような山岳地帯で無理に降下を行えば、木にパラシュートが引っかかるなどして要救助者を増やす、落下してけが人を増やすなどして余計な被害が出るだろう。

 詳細は以下のツイートが詳しい。

https://x.com/m_takewaka/status/1744299177117614452?s=20

https://x.com/m_takewaka/status/1744299570828550146?s=20

https://x.com/m_takewaka/status/1744301479903830214?s=20

https://x.com/m_takewaka/status/1744352876254691427?s=20

https://x.com/m_takewaka/status/1744355022433882431?s=20

https://x.com/m_takewaka/status/1744358394939511112?s=20

 結局、通常のヘリ輸送が使える以上はそれを使った方が物資の輸送効率が高いし安全。「私だったら訓練代わりに能登半島へ降下させる」、などと言っている人間は何も分かっていないし、もしそんな人間が指揮権を握っていたら本当に余計な被害が出る、下手をすれば死者を増やす。

 もし、政府が下手に空挺降下を命令して思うような成果が上げられず死傷者まで出せば今、得意げに空挺降下がどうのと言っている連中は大喜びで批判するだろう。「やってる感演出のための空挺降下は大失敗だ。指揮官は最悪の愚か者だ」と。まったく、都合のいい連中である。

避難船に集めて物資を配れば効率的ではないのか

 物資を配送するのではなく避難する人を大型の船に集め、そこで物資を配れば効率的では、というアイデアだがこれには複数の穴がある。

 まず地震による地形隆起で被災地周辺の海域、水深や地形がどのようになっているかが分からない、なので大型の船を下手に近づけられない。そうでなくともわざわざ大型船へ移動したいという人はどこまでいるか。火事場泥棒を警戒して自宅を離れたくないという人もいるし、住み慣れた地域で見知った顔と協力して復興を目指す方が心理的にもプラスになるのではないか。

 避難船へ人を輸送するにしても水や食料、暖房器具が不足している中では優先順位があるし、輸送のために人を集めるのも手間がかかる。大型船といえど収容できる人数は1,000人、2,000人の話であり、能登町だけでも人口1.7万人であることを考えると一体、何隻船が必要になるか。下記資料によれば能登町の孤立集落の人口だけでも3,345人と非現実的。元からあるインフラを復旧する方が良い。

https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/documents/higaihou_24_0108_1400.pdf

 第一、「政府が大型の避難船を持っておけば」というが平時にどう管理しておくと言うのか。港に留め置いてホコリを被らせておけば良いか。それでは地震でその船自体が被災する可能性があるし、メンテナンス不足でいざという時に使えない可能性がある。大きな乗り物は持つだけでそれなりに維持費がかかる。レッドサラマンダーでさえ「宝の持ち腐れ」と揶揄されてきた中でどうして船など持てるのか。

 適当に運行しておくにしても金がかかるし、そうなれば税金の無駄と批判するのだろう。事業者のもつ船を利用するにしても、営利目的で所有している船をつかわせてもらう以上はそれなりのお金がかかる。避難船として使うためには改装する必要もあるだろうし、何よりそれは町の復興を前提とした動きとは言えない。

初動が遅い

 Xでは「初動が遅いのは否めない。ネトウヨ工作員がそれに対する批判を隠そうとしている」との意見があるようだが、前回の記事で言及したように地理的な面で展開が難しい以上、過去の震災と比較して初動が遅いと言うのはナンセンスだろう。よりによって元日だったので各所に多少の気の緩みはあったかも知れないが、それでも遅い遅いと批判を招くほどとは思えない。

 そういう人間は「自分ならばもっとうまくやって見せる」と思っているが、いざ自分で指揮を取る状況になれば批判している相手よりもうまく事を運べない。そう相場が決まっている。批判するだけならサルだって出来るのだ。何より現に救助活動にあたっている人々は一刻も早く被災地に駆けつけたいと思って行動している筈で、初動が遅いだのと言うのは失礼な話、彼らを責めているようにも聞こえる。

 「被災地への人員投入がもっと早ければ助かったはずの命がたくさんあった筈」などというのもおかしな話。震災犠牲者を山車にして政府を批判するための口実でしかない。現段階で、一体誰が「救えた筈の命がどれだけあったか」を検証できるのか。把握できるのか。それも震災と無関係の場所から。仮想の「救えた筈なのに救われなかった可哀想な犠牲者」をアタマの中で作り出し、その代弁者となって政府を糾弾した気になっている。他者の不幸を政治的主張の道具にするような人間は大衆の共感を得られない。お仲間で盛り上がる分には良いのだろうが、傍から見ればヤバい奴ら。

予備費の投入が遅い・金額が少ない

 下記記事、コメント欄で門倉氏が指摘しているように熊本地震での予備費投入は地震発生(4月14日)から9日後の4月23日、23億4,000万円でタイミングはそれより早く金額も多い。同氏が指摘するように予備費の使途が不明な場合もあるのは問題で、何にどれだけ必要か曖昧なまま巨額の予算を編成することが良いとは思えない。やはり批判したいだけの難癖に思う。

news.yahoo.co.jp

 諸外国へのバラマキ、特に直近で耳にしたウクライナへ6,000億円に比べて47億円という数字が見劣りすることは確かに否めないが、ウクライナとは災害の種類や規模が大きく異なる。あらゆる要素を排除して金額ベースだけで比較することは愚かしい。

余談1:「被災地で渋滞はデマ」との記事について

 noteでそう断言する記事があったようだが、遅いタイミングで確認のためとわざわざ被災地方面へ行き、自分が確認できる範囲で他府県ナンバーの車が見当たらなかった=被災地での渋滞はデマだった、と判断しているあたり何の意味も無い。それも冒頭からネトウヨがどうこうと偏見丸出しで書いているあたりお察し。

余談2:山本太郎小泉進次郎

 山本太郎氏は被災地へ向かうことを自粛するよう呼びかけがある中で現地入りし、松葉杖をついて被災地を視察する様子を投稿している。一方で小泉進次郎氏や菅前首相は募金活動を行っている様子を投稿しているが、正直どちらもパフォーマンスとしか思えない。

 前者はいかなる理由があろうともこのタイミングで被災地へ行くことが悪手。支持者は松葉杖をついてまで現地へ行ったことを美徳に感じているようだが、無力な人間が現地へ行って(それも下手し、渋滞の一因となって)も何にもならない。情報収集とも言うが現地に協力してくれるNPO法人があると言うのなら、現地にいる人々からの聞き取りで事足りる。それでもわざわざ現地へ行く理由はパフォーマンスか、あるいは現地の協力者が信用できないか。情報収集というのも政府批判のための材料集めでしかない。

 後者については募金活動は政治家の仕事ではない。普段から重税でふんだくっている分を使えば済む話。善人ヅラして募金活動をすれば、裏金問題による自民党への風当たりが少しは和らぐのでは、という打算が透けて見える。そんな場当たり的な対応は無意味であり、今は政府がどれだけ備えて来たのかを試される時。初動が遅いという批判に対してもどこまで真摯に受け止められるか。どこまで今後の改善策を打ち出せるのか。復興のための対応がどうなるかが問題。復興のためと増税を言い出すようならば募金箱など蹴り飛ばしてやる。ふざけるな。裏金問題もキッチリ精算してもらう。憲法改正など100年早い。まずやるべき事をやれ、という話。

 ちなみにCoD(Call of Duty)というゲームの世界でも、ケアパケ(空中投下の支援物資)の下につっ立っていると死ぬ。